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悪の首領の狙いは何?

作:かわねぎ



『リジェ、応えよ。リジェよ』

 どこからともなく私の頭の中に力強い声が響く。声の主は私達エヴォリアンの母なる神、デズモゾーリャ様。もちろん私ごときがその呼びかけを拒むことなんかできない。

「はっ、デズモゾーリャ様」

 そう声に出す私。声に出さなくとも頭の中で考えるだけで伝わるのだけど、声に出してきちんと応えることが、下々の者が主に示す忠誠の態度の一つだと思っている。

『此度のアナザーアースへの侵攻の議は聞き及んでいよう』
「はっ」

 アナザーアース。私達が住むダイノアースの片割れ、もう一つの地球だ。そこも本来は私達エヴォリアンの物のはず。私達の手に戻すために立ち上がったのが、デズモゾーリャ様なのだ。そして、出陣の手はずが今、着々と整いつつあるのだった。でも、そんな多忙の時期に、なぜ私なんかにお声が……

『訳あって私がアナザーアースへと姿を晒すわけにはいかない』
「存じております。それが私とどのような……」
『そなたが「黎明の使徒」となり、アナザーアース侵攻部隊に、我の意志を伝えるのだ』

 なるほど。私にデズモゾーリャ様の意志を伝える『巫女』の役目を負えと。確かに私は『巫女』の家系。その修業を今までしてきた訳だけど、まだ12歳。一度も啓示を受けたことはないし、もう一つの能力、『次元の扉』を開けた事もない。そんな私に大役が務まるのだろうか……

「私のような、若輩者に務まりますでしょうか」
『案ずるでない』
「とはいえ私は修行中の身故……」
『例えそなたの姿であっても、我の揺るがぬ力を示すことが出来る。このようにな』

 デズモゾーリャ様はそう言うと、腕を軽く横に薙いだ。いや、薙いだのは私の腕。デズモゾーリャ様が私の身体を動かしたのだ。そして、私の指先から稲妻が迸り、壁を打ち砕く。もちろん私にそんな力なんてない。まさにデズモゾーリャ様の力の具現だ。

『我が意志を伝えるときは、このようにそなたの身体を借りことになる。よいな』
「ありがたき幸せ。この身をデズモゾーリャ様のお体と思い、存分にお使いくださいませ」
『うむ。そなたは我が意志を受け入れられるよう、引き続き精進するのだ』
「ははっ」

 こうしてデズモゾーリャ様から直々に大役を仰せつかった私は、『黎明の使徒』としてアナザーアース侵攻軍に参加することになった。ご期待に添えるように、頑張らなくては。


  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★


「あ、あ、あの……」

 巨大要塞生命体『アノマロガリス』に居並ぶアナザーアース侵攻軍の幹部達。ジャンヌ、ミケラ、ヴォッファ、ガイルトン。みんな名を知れた強者ばかりだ。私は緊張して伝えるべきデズモゾーリャ様のお言葉、すなわちアナザーアース侵攻の第一声を発せずにいた。みんなからの突き刺さる視線が痛い。バーミア兵の人達も私に注目している。

「リジェ、言うべき事は、はっきりと言え」
「そんなんじゃデズモゾーリャ様の御言葉を伝える使徒としては力不足なんだなぁ」

 幹部達からちょっと棘のある言葉が投げつけられる。私も同格の幹部なんだからしっかりしろということなんだろうけど……ダメだ。我々エヴォリアンの新たなる第一歩を踏み出すための重要な一言だけに、荷が重い。

「リジェ、早くデズモゾーリャ様の御言葉を」
「どうした、リジェ」

 先を催促するジャンヌにガイルトン。私が言うべき言葉は分かっている。昨日デズモゾーリャ様から賜ったお言葉を私の口から言えばいいだけなのに。それが出来ないなんて……私……

(リジェよ……案ずるでない……)

 頭の中にデズモゾーリャ様のお声がかかる。この場に姿をお見せになっていないが、この様子は全て把握しておられるはず。だから私の醜態も全てお見通しのはず……大役なのですが、どうしても声が出ないのです。

(ふむ……ならば……)

 私の唇がそっと開かれる。もちろん私の意志ではなくて、デズモゾーリャ様のお力。ダメだ……デズモゾーリャ様のお手を煩わせてしまった……『黎明の使徒』として完全に失格だ……

「ねぇ、みんな。みんなでアナザーアースをこの手に納めるよう、がんばろうね♪」

 私の口から出たのは、重々しいお言葉ではなくて、いかにも女の子な口調の言葉。まさか、私を気遣ってくださって、私の真似を? でも、私はそんなにかわいこぶりっこな口調じゃないんですけど。それに、ここ、アノマロガリスの空気が固まっているんですけど……

「「「「……」」」」
「あ…………皆の者。アナザーアースをこの手に納める時が来た」

 さすがにその場の空気を気まずく思ったのか、デズモゾーリャ様は威厳のある口調で言い直した。それは私の声だけれど重々しい威厳が備わっている。さすがはデズモゾーリャ様。その場にいた全員が、頭を垂れて、デズモゾーリャ様への忠誠を表す。

「このダイノアースもアナザーアースも我々エヴォリアンの物。邪魔なアナザーアース人共を一掃せよ!」
「「「「はっ」」」」
「手始めに手なずけた爆竜共でアナザーアースを蹂躙するのだ」
「はっ。ティラノザウルス、トリケラトプス、プテラノドンを差し向けよ!」
「俺もアナザーアースへ向かう。裏切り者も合わせて始末してやる」

 デズモゾーリャ様のご指示にジャンヌがバーミラ兵達に命令を下し、それと共に伝説の鎧を着たガイルトンが一歩前に踏み出す。最前線で戦う二人だけあって、陣頭指揮をてきぱきとこなしていく。もはや私の出る幕ではないだろう。デズモゾーリャ様にとっても以後は細事だろう……と思ったら、まだ私の目を通してご覧になっていた。何もデズモゾーリャ様のお手を煩わすことはないはずなのに……


  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★


 こうして、私達エヴォリアンのアナザーアース侵攻作戦は始まった。実際に戦うのはガイルトンやジャンヌ。そしてミケラやヴォッファが作り出す『邪命体』なので、普段の私は留守居役だ。ミケラやヴォッファもだけど。

「私、何の役にも立っていないんじゃないかな……」
「リジェはデズモゾーリャ様の寄代として、ちゃんと働いているんだなぁ」
「うむ。俺はギガノイドを創り出し、アナザーアース人を殲滅するのが仕事。それぞれの領分というのがある」
「いや、私のトリノイドがその役を果たすんだなぁ」
「何を言うか」

 私のため息混じりの一言に、優しく応えてくれるミケラとヴォッファ。嬉しいんだけど、やっぱり自分は役に立っているのかな、と疑問に思ってしまう。私と違ってミケラやヴォッファはトリノイドやギガノイドを創り出すのが仕事。だからきちんと見えるところで成果が……って、全然仕事してないように見えるけど……

 あ。デズモゾーリャ様の気配だ。

「ねぇ、今度の作戦はどうなってるの?」
「ひみつ、ひみつ、秘密なんだな〜」

 デズモゾーリャ様も気になっているみたいだ。いや、もしかして、私が使徒として役に立っていると言うことを私に示すため? まさか、私ごときの為にお出ましになることはないだろう。ですが、女の子な口調だと効果がないと思いますが……

「ミケラ。ヴォッファ。作戦はどうなっている?」
「あ、上手いこと閃いたんだな〜。トリノイド第4号をちょいちょいちょい……」
「うむ、旋律が浮かんだぞ。ギガノイドスコア第1番だ……」

 デズモゾーリャ様が口調を厳しい物に変えると、慌てて仕事を始める二人。やっぱりお言葉には威厳がないとダメだと思う。それが「リジェ」に接するのとは違った緊張感、使命感を与える事だと思うから。

「トリノイド第4号、バクダンデライオンなんだな〜」

 先にトリノイドを創り上げたミケラが得意げに報告する。デズモゾーリャ様は重々しく頷くと、身体の支配権を私に戻し……戻し……あれ?

「あはっ、この子なんだ。がんばってね。 ちゅっ♪」

 トリノイド・バクダンデライオンの手を取ってキスする私。というかデズモゾーリャ様。これはパワーを分け与えているという意味があるけれど、やり方に問題があるかと……意気揚々と出撃していくバクダンデライオンを、手を振って送り出す私。もちろん身体を動かすのはデズモゾーリャ様。

(あーあ、せっかく女の子に憑依したのにずっと「女の子」できないなんて、思い通りにいかないなぁ)

 あ、あのー、デズモゾーリャ様??

(ミケラやヴォッファ達に指示を出すときだけ、怖い口調にすればいいよね♪)

 鏡に向かってにっこり微笑んで独り言を言う私、というかデズモゾーリャ様。ああ、私のイメージが……っていうよりデズモゾーリャ様のイメージがぁぁぁ……普段も私の身体に憑依したままなんですかぁ?





あとがき

 アバアバアバアバアバレンジャー♪ 爆竜戦隊アバレンジャーの二次創作です。敵幹部に12歳の少女がいるのもツボなのですが、敵のボス、デズモゾーリャはその少女幹部に憑依するんですよね。ついつい妄想全開でこんなネタを書いてしまいました。まだ設定で明らかになっていない部分を勝手に作ってみたり、違っている点もございますが、そこはそれ、ご愛敬。しかしアバレというよりか、リジェたんネタですな……


おまけ


「おのれ、アナザーアース人のくせにダイノスーツを使いこなすとは」
「トリノイドがやられちゃったんだなぁ」
「次は俺のギガノイドで粉砕してくれる」

 アナザーアース侵攻も上手くいくかと思った矢先、アバレンジャーを名乗る敵が現れて、私達の邪魔をしたの。だからジャンヌは怒っているし、自慢のトリノイドを倒されたミケラはがっかりしている。もちろんデズモゾーリャ様もお怒りに……

(戦いが長引くとリジェの身体にいる期間も長くなるなぁ…… それもいっか♪)

 え、えぇぇっ! アナザーアースを侵攻するんじゃなかったのですか? このまま長引くなんて……アバレンジャーを応援しちゃいますよ、デズモゾーリャ様!


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