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 ある薄暗い部屋。そこで一人の男が横たわり、頭に電極を貼り付けられ、コンピューターのような機械に繋げられていた。そしてその様子を見守るように脇に佇むのは仮面ライダーギャレン――変身しているのは確か橘朔也――だった。

「なぜだ……なぜ烏丸からは何も読み取れない!」

 モニターを見つめるギャレンはそう呟きながら、横たわっている男、烏丸を見下ろす。ライダーのベルトを作った人類基盤史研究所・ボードの所長である烏丸は、ライダーの何らかの秘密を知っているはずだった。橘本人に降りかかっている、秘密を。だから、研究所でも烏丸所長に直接問い詰めた。あんな事件が起こってしまったのは予想外だったが……

「あんたにどうしても聞きたいことがあるんだよ!」

 あんな事件――何者かによって封印を解かれたアンデッドによって研究所は壊滅。辛くも難を逃れた橘だったが、難を逃れた所員は他にもいた。研究員の広瀬栞と最近ボードにスカウトされた剣崎一真――仮面ライダーブレイドだった。



ぶれいど・ぶれいぶ
第3話? 彼女らの秘密…

作:かわねぎ



 その頃、広瀬と剣崎が身を寄せている白井家のリビングで、その家の娘、天音は新聞を広げていた。彼女は先日、天文台でアンデッドに襲われているところをライダーに助けられたのだ。そのライダーはギャレンでもブレイドでもなかったらしい。だが、目の前の新聞にはそんな記事は全く載っていなかった。

「お母さん、私が怪物に襲われた事件、何処にも載ってないのよ」
「私も気になって警察に問い合わせたのよ。そしたら調査中の一点張り……」
「変ね。なぜ隠すの?」

 テーブルを拭いていたもう一人の少女、初芽が手を止めずに何気なく呟く。

「……そういうもんですよ、人間ってヤツらは。理解できない奴は闇に葬りたいんです……」
「ふぅん、初芽ちゃん女の子じゃないみたい」
「……え?」
「何か言ってることが大人っぽいっていうか、雰囲気が大人っぽいっていうか」

 テーブルを拭き終わったところで、悪戯顔で天音に向き合う初芽。

「ふふっ……実は男の人だったりして」
「まさかぁ。可愛い顔してそんなこと言っても信じられないよ」

 少女二人の、なんとなくほのぼのとした雰囲気を壊すかのように、扉がバンと開け放たれる。慌てた表情で出てきたのは広瀬だった。

「剣崎君、ちょっと来て! パスワードが分かったわ! 烏丸所長とアクセス出来たの!」

 丁度二階から降りてきた剣崎が早足で広瀬の部屋へと向かう。何故か一緒に降りてきた白井もついてくるのだが、仮面ライダーの『取材』を約束した上に、広瀬の使っているパソコンは元々白井の物のため、文句を言える筋合いではない。だいたい下宿させてもらっている身だけに、大家には逆らえない――前番組といいそんな気配りは全く無いようなのだが――訳だ。

 広瀬の部屋に入ると、パソコンから立体映像が映し出されていた。その映像は烏丸が横たわっている物。広瀬のアクセスを待っていたかのように口を開いた。

『広瀬君、よくアクセスしてくれた……』
「烏丸所長! どうしたんです? どこにいるんです?」
『こちらのパワーが落ちている。用件だけ説明しよう』

 広瀬と剣崎の心配と白井の好奇心をよそに、烏丸は話し始める。

『1万年前の地球で種の生き残りをかけた戦いがあり、勝利した人類によってアンデッドは封印された。だが、何者かが3年前にその封印を解いてしまった。アンデッドは誤った進化をした人類を襲い始めた。それに対抗するために人類基盤史研究所を設立し、ライダーシステムを開発した』
「ボード!」
「ライダー……」
『ライダーシステムはアンデッドに対して有効だ。橘君と剣崎君にはアンデッド達を封印して欲しい。それが私の願いだ。封印するために……の姿に……当然の……』

 烏丸が語る話を聞いていた三人だが、その映像が壊れかけのテレビのようにかき消されて行く。もちろんその話もきちんと聞き取れない。

「広瀬さん、映像が消える!」
「わかってるわよ! 調整中よ!」

 剣崎に言われなくても、パソコンで懸命に調整をする広瀬。だが、その甲斐虚しく、映像は完全に途切れてしまった。

「所長……肝心なところで……」
「これ以上は無理ね」
「アンデッド……3年前……誰が封印を解いたんだ……そしてライダー……」

 深刻そうな剣崎と広瀬に、白井が思いついたとばかりに問いかける。

「ねぇ、広瀬さん。画像の場所って分からないのかなぁ」
「場所……難しいけど……探しましょう!」
「でも、どこを……」
「そうね……まずは今まで移転した研究所の跡地から調べてみましょう……」

 そう言って広瀬がパソコンを操作し始めると、画面に警告が流れた。ボードのシステムであるアンデッドの出現を察知するアンデッドサーチャー。アンデッドがほど遠くない場所に現れたようだ。とたんに表情が険しくなる剣崎。

「剣崎君、アンデッドが現れたわ」
「分かった。そこに行ってみる!」
「ちょっと待ってよ。僕も行く」

 転がっているヘルメットを拾い上げてバイク、ブルースペイダーに飛び乗る剣崎。白井も広瀬と共に車で追おうとする。だが剣崎はそれに構わず、ブルースペイダーの速度を上げていく。そして、ベルトのバックルに手を伸ばす。そのブレイバックルを回転させると、仮面ライダーブレイドへと変身したのであった。

「変身!」



 雪山に現れたアンデッド。それに立ち向かう仮面ライダーギャレン。ギャレンがギャレンラウザーという銃を駆使してアンデッドを追いつめようとするが、アンデッドもなかなか素早い。バイク、レッドランバスに飛び乗り、アンデッドを追いかける。

「俺の身体がなぜこうなったかは分からない。だが、戦うことでしか治らない気がする」
 闘いながらそう呟くギャレン=橘。そんな決意をあざ笑うかのように、アンデッドがギャレンに攻撃を加えていく。その悉くをその身に受けてしまうギャレン。雪の地面へと叩きつけられてしまう。

「橘さん!」

 そこへブレイドが駆けつけ、ギャレンを助け起こす。今まで先輩として慕ってきただけに、心配なのである。

「このアンデッドは俺が倒す。余計な手出しをするな」
「なに馬鹿なこと言ってるんです」

 ゆらりと立ち上がるギャレンと、ブレイラウザーを構えてアンデッドに対峙するブレイド。二人で協力してアンデッドに立ち向かうのであった。

 死闘の末、ブレイドのキックによってアンデッドを倒した二人。カードへと封印するブレイドの傍らで、苦しそうに胸を押さえるギャレン。

「……うぐっ……」
「大丈夫ですか、橘さん!」

 思わずギャレンに駆け寄るブレイドだが、はっと思いついたように立ち止まる。先輩を気遣うよりも先にやることがあった。聞きたいことが山ほどあるのだ。

「あんたなのか、ボードを襲ったのは! 烏丸所長をさらったのも!」
「何とでも思えばいい」

 弱々しくブレイドから離れようとするギャレン。まるで雪の中へさまよい出るようだったが、ブレイドはそれを止めてなおも問い質す。

「あんたなのか、封印を破ったのは!」
「俺が封印を破っただと? ははははは!」
「何がおかしい!」
「いいか。封印を破ったのは俺じゃない。烏丸達だ」
「嘘だ! そんなの信じられるか!」

 ギャレンの言葉が信じられないブレイド。それはそうだろう。今まで烏丸所長の下で正義の為にアンデッドと戦ってきたのだ。その組織のトップがアンデッドの封印を解いたなど、信じられるはずもない。

「だからやつらはライダーシステムを急いで完成させた。だが、未完成だったんだ」
「何を証拠にそんなことを!」
「この俺の身体が証拠だ。未完成なライダーシステムのせいで俺の身体は……本来ならあんな不様な戦い方はしない!」

 ブレイドの手を払いのけ、ベルトのバックルを回転させるギャレン。ライダーへの変身を解除して、元の橘の姿に戻る――はずだった。だが、そこに立っているのは10歳位の少女。

「橘……さん?」
「そうだ。ライダーに変身すると、いつかこうなる」
「そんな……まさか……」

 ブレイドのスーツで分からないが、おそらく剣崎は何が何だか分からないという表情をしているのだろう。目の前の少女が数日前まで先輩と慕っていた橘朔也だったなどと、信じられる訳がない。

「いつかお前もそうなる。覚悟しておくんだな」
「そんな……俺の身体が……女の子に……」

 呆然としているブレイドに言い放つ少女。まさか自分はそんなことになるはずは無いとばかりに、ブレイドはベルトのバックルを回転させる。カードのイメージがスクリーン状に浮かび上がり、そのスクリーンの中を通ることで、ライダーへの変身が解除される。

「俺は……」

 自分の姿を確かめる剣崎だったが、橘の話を証明するかのように、少女の姿へと変貌を遂げていたのであった。

「嘘だ……嘘だぁぁぁ」



「ふぅん、ライダーシステムにそんな秘密があったんだ」
「剣崎君、可愛くなったわね〜」
「……」

 白井家に戻った剣崎な少女はさっそく広瀬と白井の好奇の目に晒されることになった。。予想は付いていたので戻りたくはなかったのだが、他に行くアテもないので仕方なく戻って来たのだ。

「どうやれば元に戻れるんだよ。烏丸所長を捜し出せないのかよ」

 既に広瀬の手によって初音の服に着替えさせられている剣崎な少女が、広瀬にどうにかして欲しいとばかりに詰め寄る。ちなみにその隣に橘な少女もいるのだが、同じ目にあったようだ。

「それがね、またアクセスできたの。出すわよ」

 剣崎と橘の文句を待ってましたとばかりに、パソコンのキーボードを叩く広瀬。すぐに烏丸所長の映像が映し出される。

「烏丸所長、これはどういう事なんです!」
「俺たちの身体はどうすれば戻るんだ!」

 剣崎と橘が詰め寄るのも何処吹く風。映像の烏丸所長は、またもや一方的に話を進めるのであった。

『パワーが落ちているので用件だけ言おう。ライダーシステムはカードにアンデッドを封印することで……』
「そんな事は知っている。他に言いたいことはないのか」
「なんで俺たちが女の子にならなきゃいけないんですか」
『カードに封印する役は小学生の女の子と相場が決まっている。ライダーに変身すると、姿が最適化されるようになっている』
「「はぁ?」」
『もちろん最終回までそのままなのだが、その後で元に戻れるかは……』

 またもや肝心なところで映像が切れてしまった。呆然としていた二人の少女だったが、やがて橘な少女が小さな拳を手のひらに叩きつけて言い放つ。

「剣崎。改めて烏丸達をぶちのめしたくなったんだが……異論はないな」
「同感です、橘さん」

 こうしてライダーな少女は、誓いを新たに……ターゲットに自分たちの元上司を加えて戦うことを決意したのであった。






あとがき

 はい、仮面ライダーブレイドな二次創作です。第3話「俺の秘密」に準拠してます。ま、この界隈、中の人が女の子になるのはお約束な訳ですが、カード封印だけにこんなコンセプトでライダーシステムが開発されていても不思議はないということで(ぉ)。もう一つネタがあるんですけど、こちらも書いてみましょうかね……


おまけ


「ところでさ。1年間女の子になっているんだから、名前を変えなきゃまずいわよね」
「名前?」
「その姿で一真じゃね……『かずみ』ってどう?」
「へ?」
「橘さんの場合は……『さくや』ってそのまま女の子に名前にならない?」
「人のことだと思って……」
『またまたパワーが落ちているから用件だけ伝える。カードに封印する役目を負う人物は「さくら」と昔から決まっている……』
「さすが所長!」
「あんたは都合の良いときだけ出てくるな!」

 どうやら正義の味方達は前途多難らしい。ちなみに初芽――「元」相川始はもう開き直っているようだった。


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