戻る


次元管理人フォスターシリーズ

レイリング・ダイビング

作:かわねぎ


※「フォスター」シリーズの詳細については、以下の公式ページを参照して下さい。
http://www.geocities.co.jp/Playtown/7073/Novels-04-Foster-FormalSetup.htm
 これまでの作品はこちらです。
http://ts.novels.jp/novel/corrector/title.htm



私は次元管理人フォスターだ。
時空に暗躍する犯罪者を追って、今日も過去に未来に飛び回っている。
タイム・パラドックスを引き起こす犯罪者は許せない!
私はタイム・パトロールとして少々の「修正」を権限で認められている。
その時代、位置に相応しくない出来事にはその権限を行使する場合もあり得る。
私のモットーは「細かいことは気にするな」だ!
さて、今回の仕事は…









 今日の阪神は甲子園で勝利を飾り、ヤクルト−横浜の試合経過によって、優勝がこの日に決まるかどうかという場面であった。

 ここは大阪ミナミ、道頓堀。18年ぶりの優勝の瞬間を祝おうと、甲子園球場のチケットは取れなかったものの、熱狂的なファン達が集まっていたのであった。ここ戎橋も道頓堀橋も押すな押すなの大盛況。

『阪神タイガース、18年ぶりの優勝です! 星野監督が宙に舞います……1度、2度、3度……』

 ファンの誰かが持ち込んだポータブルTVの画面から、優勝の瞬間が映し出されると、周りの熱狂は最高潮になった。


「うおーーーっ、優勝だ〜」
「星野監督ありがとぉなぁぁぁ」
「18年間待ち望んでたんや〜〜」
「六甲おろしに〜♪颯爽〜と〜♪」


 人が密集するその場に、ますます人が集まってくる。戎橋交番を始め、大阪府警も警戒をしているのだが、一度火がついた民衆の勢いを納めるのはそう簡単ではない。

 そこへ、銀色のつなぎのような服を着た男が、たこ焼き片手に、その状況を深刻そうな表情で眺めていた。そう、言わずと知れたフォスターだ。

「うむ、このままでは新聞の通りに戎橋が崩壊してしまうな」

 現にフォスターが昨日買った明日の朝刊には『虎大暴走・戎橋崩落 構造上の加重限界をはるかに超える群衆』という見出しが付いていた。


「このような歴史は私のメモにはない。本来の歴史が歪んでいる」

 フォスターはそう言うと、一気にたこ焼きを頬張り、愛用の光線銃を片手に群衆の中に分け入っていった。こう言う時は、高いところにいる奴がリーダーだったり首謀者だったりする。だから、欄干の上で高らかに六甲おろしを歌うオヤジの側までなんとか駆け寄ったのであった。

「おう、私はフォスターだ」
「うん? 妙な格好やなぁ」
「こんなに人が集まっては、橋が崩壊する危険性がある」
「何いうてんねん。今日は優勝の目出度い日やで。さぁ、景気付けに男気を見せたってなぁ」

 そう言うと、オヤジは有無を言わさずにフォスターを欄干の上に引き上げて、そのまま下へと突き落とす。

『どっぽーーーーーーん』

「おっしゃ、負けてられへんな。行くでぇぇ!」

『どっぽーーーーーーん』

 そしてオヤジも続けて橋の下へとダイブする。水柱が二本上がると、橋の上の群衆はますます興奮の度合いを高めていく。また一人飛び込んでいくが、橋への負担を軽くするには、焼け石に水でしかない。

「う〜む……このままではラチがあかないな」

 近くの府警のボートに救い上げられたフォスターは、髪の毛を伝ってしたたり落ちる道頓堀の水を片手で拭いながら、橋の上の状況を冷静に分析する。

「まとめて処理するしかあるまい。では、修正させてもらおう」

 そう言うと、フォスターは愛用の光線銃を構えて、まず戎橋の群衆に光線を掃射した。群衆の悲鳴が上がるが、そんなことには構わず、今度は反対側の道頓堀橋に向けて光線を掃射する。

「うわあぁぁぁぁ、なんやぁぁぁ」
「これも優勝グッズか何かかいなぁぁぁ」

 身動きの取れない群衆が、次々に光線に飲まれていく。突然の事に、ボートの上の警官はあっけに取られて、フォスターを止めることを忘れてしまったようだ。そしてはっと気が付いて橋の上の状況を見た警官は、今度はそれ以上にあっけに取られてしまった。

「これくらい軽くすれば橋は落ちないだろう。なに、礼はいらない。修正も済んだので私はこれで失礼させてもらおう」

 そう言って、フォスターはずぶぬれになりながらも、格好良くその場を去っていったのだった。橋の上の群衆――数百人の少女を残して。








新聞記事によると、構造上の加重限界をはるかに超える人間が一気に集まったのが原因、とあった。
加重を軽くしてやれば橋も崩れないというわけだ。
まさに修正法としては理にかなったやり方だろう。
おかげで、その歪んだ歴史の新聞は、正式な歴史の記事に変わっていた。
それにしても全身ずぶぬれになるとは思わなかった。なんだあの汚い水は。
それはさておき、こうしてまた一つ、歴史の歪みを修整できた。
歴史を守るため、私は今日も戦い続けるのだ!
















<おまけ>

 その夜、戎橋の欄干の上で呆然とする少女が……

「こんな姿になってもうた……」
「でも、30年は長生きできるんや。それだけ優勝を何度も見れるんやで」
「それもそやな、ウチらにとっては願ったり叶ったりや」

<おしまい>









あとがき

 え〜、またもやフォスターです。阪神優勝のシーンを見ながらのTS9チャットで塵芥王様からアイデアをいただきましたので、即興でSSに仕立て上げてみたものが元になっています。チャットの皆様、文庫に投稿しろと口を揃えて仰るし(笑)。例によって無差別TS化させるのですが道頓堀に落ちたりして、ちょっとフォスターっぽく無いですね(汗)。それにしても、ファン心理っておまけの様な物なんでしょうか。


戻る