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新性紀エヴァンゲンドウ

 


 

 みーん、みーん、セミの音がやけに耳につく第三新東京市


 ここは常夏の国である。とは言っても、アロハ〜〜な熱帯の国になっちゃったわけではなく、セカンドインパクトと呼ばれる謎の大災害によって、地球の地軸がちょびっとずれただけである。まったく問題ない。そうまったくだ…多分…

 そして、朝…

 ゲンドウこと、六文儀ヒトミは葛城ミサト家にて、なにやら包丁を手に取り格闘していた。別に使徒どもと包丁一本で切り結んでいたわけではない。

「くそっ、何故私がこんなことをしなければならんのだ!!」
 今や美少女になってしまった彼女は薄い桜色をしたエプロンを身にまとい、朝ごはんを作っていたのである。

 ちなみにこの家では一時が万事、このように分業制の形態をとっている。昨日、ミサトとの悪魔的なジャンケンにより、ヒトミは全家事の30パーセントほどを押し付けられてしまったのである。ちなみに、シンジは65パーセントであった。ミサトはたったの5パーセントぽっちであり、食って寝るだけと言ったほうが正しく『牛女』という二つ名に恥じない生き方をしているのはお約束と言ったところか。ちなみに牛の種類はホルスタインである………                   ぼいーんだからである。

 ヒトミは包丁でウインナーに軽く切れ目を入れると、次にフライパンを手にとった。その重さにふらつきよろめく。
「なんなんだ、この身体は…」

 前の逞しい肉体は今やすべらかな柔肌に成り果て、その腕は細く華奢すぎた。
 ヒトミはうんざりしたような表情を浮かべると、今度は沸かしておいた湯にミソをこしだし、味噌汁を作る。
 味見をしてみると、なかなかにおいしかった。
「……問題ない…」

 しばらくのち…
 シンジが起きて来た。
「あっ、ヒトミちゃん。手伝おうか」
「いや、問題ない…わ」
 湯気で曇った縁なしの眼鏡をくいっと押し上げ、レトルトのハンバーグをボイルする。

 シンジは目の前でいそいそと料理を作っている(ように見える)ヒトミに、好感を感じ始めていた。思えば、シンジの母親は彼が幼いときから会っておらず、料理を作る少女の姿に母親のイメージを重ね愛おしさを感じたのだ。

「やっぱり手伝うよ」
「いいと言っている…のよ」
「でも…」
「……」
 ヒトミは実の息子に対し、よくわからない感情を抱いてしまっている自分に戸惑っていた。

(これは…ユイの操作なのか……それとも…)


 ヒトミは戸惑いながらも答えを返す。
「手伝うなら手伝え、でなければ帰れ!!」
 ……焦ったのか台詞が電波だった。シンジくんぼーぜん。ヒトミちゃん真っ赤。

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第二話『やまない電波』

 

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 ここはネルフ本部、人類最後の砦である。

「シンジくん、ちゃんと狙って撃つのよ」
「はい、わかりました。目標を(以下略)」

 シンジはエヴァSSではもはやお決まりな台詞を、おしげもなく吐き出しつつ模擬戦闘訓練を行っていた。ヒトミは使える機体がないので、発令所で待機中である。

「ヒトミちゃんって、お肌が白くてつるつるね、うらやましい」
 オペレーターの一人、伊吹マヤがうらやましそうにヒトミに話しかける。


「いや、ほんとカワイイッすね」
 ロンゲの男…もとい、青葉シゲルはロリコンだった。(根拠はシンジがアイを叫んだときに、彼はレイの姿を見ながらパシャッたからだ)


「………」
 パターン青な男、日向マコトは目をふせた。
(ちがうんです、ちがうんですよ。葛城さん、俺は葛城さん一筋です)
 残念ながらミサトに熱い想いは伝わっていない。

 ヒトミは前回と同じくおもちゃ状態であり、顔から火がでそうなほど真っ赤にし、それをごまかすために、一心不乱に訓練に打ち込むシンジを見つめた。それがミサトに誤解される。
「あら、やっぱり、ヒトミちゃんって…シンジ君が好きなんだ」
「何を言ってる…んですか!!(牛女がぁぁぁ!! あとで減俸にしてやる)」
 前のポーカーフェイスはどこへやら、ヒトミはもうこれ以上ないというほど顔を赤くする。ミサトはここぞとばかりに大きくにやりと笑い、言葉を続けた。
「シンジくん、かっこいいもんね、惚れてもしょうがないわぁ」


「違う違う。違うぅぅぅぅぅぅ!!!」
「ほんとに違うのかしらん?」
「違うったら、違う!!」
「あら……シンジくんかっこいいわよ。ほらっ」
 後ろから抱きつかれ、ヒトミはモニターのほうへ引きづられていく。訓練にうちこむシンジの姿は確かにかっこよかった。

「無理やりモニター見せようとするなぁ〜!!」
「あ〜あ、顔が赤いわよ、ヒト…」

「あなた達!! 今訓練中よ!!」
 振り向くとそこには、こめかみがぴくぴくと素敵に動いている鬼女がいた。その場の空気が凍りつく…


「さっ、さ〜て、訓練訓練…」と、額に汗を流すミサト
「シンクロ率、問題ありません」と何事もなかったようにマヤ
「パターンゴールドです、でも眉毛は黒です…」もはやわけがわからない日向
「かすかに肩を震わせるヒトミちゃん。可愛いかったっす…」壊れちゃった青葉

 発令所はホットな状態からコールドな状態へ、すみやかに移行していった。

 

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「それで…どういうことだ…」
 司令室に座っているのは、言わずと知れたヒトミである。でかくごっつい椅子に肘をついて手を前に組み、お決まりのポーズを決めても可愛さが増すばかりであった。

「はい。シンジくんのシンクロ率が急激に上がり始めています」
「何故だ?」
「…心拍数、行動パターン、心理分析、あらゆる角度から検証しましたところ、ある特定の感情パターンがシンクロ率に影響していることがわかりました」
 リツコはそういうと、先ほどの訓練の様子をモニターで表示する。
 そこには、きりりと男の顔をしたシンジがいた。思わずどき〜んとしてしまうヒトミ

「ふむ、それで、その特定の感情とは一体なんなのかね?」
 冬月が興味深そうに尋ねる。それを受けて、リツコははっきりと言いはなった。

 

「恋です!!」

「何ぃぃぃ!!」
 突然、椅子から立ち上がり、大声をあげるヒトミ

 冬月は冷静にも続きを促す。
「それでリツコくん、結論として、今後どうすればいいのかね?」
「シンジ君と碇司令が恋人関係になればいいのです」

「何ぃぃぃぃいいいい!!! リツコ君、君には失望した帰れぇぇ!!」
 ヒトミは前よりもさらに大きな声で叫んだ。リツコは取り乱すこともなく、冷静に言葉をつむぐ。

「シンクロ率が上がれば、使徒戦に有利になり、有利になれば、当然勝利を得やすくなります。私たちに手段を選んでいる余裕はないはずです」
「そうだぞ、碇。人類の未来はお前にかかっているんだからな」

 そういうと、二人はにやりと笑った。その顔はどこまでも、どこまでも悪魔リリンだった。

(女になって帰ってくるなんて、私を捨てた罪は重いわよ司令、ふふふ、もっと苛めてあげるわ)

(碇はなかなかに美少女だな………おっと、いかんいかん年甲斐もなく萌えてしまったよ。ははは)

 もう一度確認しとくが、ここはネルフ本部。人類最後の砦である……

 

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「シンジ君、ヒトミちゃん、これリツコから渡してくれって頼まれたものよ」
「携帯…ですか…?」
 少し暗い顔をするシンジ、彼はもといた場所に友だちはいなかった。そしてここにも…
「ああ…そうそう、この携帯、どんなに回線が混んでても使えるプライベートコール機能があるらしいわ。よかったわね二人とも」
 言って、意味深な笑いを浮かべるミサト

「私は…友達がいないから、携帯はいりません…」
 と言ったのはヒトミ。これ以上悪魔どもの策略にはまっていくわけにはいかないのだ。
 だが、これがシンジに親近感を抱かせた。自分と同じで人づきあいが苦手な少女であると、壮絶なる勘違いをしちゃったのである。
「僕も友だちいないんだ」
「そうなんですか…?」

 ヒトミの胸がなぜか痛む。シンジを親戚のうちに預け、拒絶したのは自分であった。すべてはユイに会うための計画だったのだが、それが果たされた今、シンジをこれ以上拒絶する意味はない。だが、ヒトミはどこかでシンジを避けていた。自分が拒絶されるのが怖いのだ。拒絶されるぐらいなら、最初からすべて拒絶してしまえばいい。ヒトミは弱い人間だった。そういう意味で、シンジとヒトミは似ているのかもしれない。

 

 場面は唐突に学校へ
 教室では皆がきゃいきゃいと騒いでいる。もちろん話の内容は数日前の謎の兵器についてである。

「あ〜、あれは一体どこの国の兵器だったんだろう? ああ、ミリタリーマニアの血が騒ぐ」
 眼鏡をかけた少年、相田ケンスケがカメラを構えつつぼやく。

 と、そこでドアが開いて、ジャージの少年が教室に入ってきた。
 不機嫌そうに荷物を置くと、椅子に座った。

「トウジ、妹さん大丈夫か?」
 ケンスケはトウジと呼ばれた少年に近づいていった。
 鈴原トウジ、14歳、えせ大阪弁をあやつる熱血少年である。だが…彼はいつもとは様子が違い、その表情は暗い。
 先の戦闘で、トウジの妹は負傷したのである。

「鈴原くん、妹さんの容態は大丈夫なの?」
 心配そうな顔でおさげの女の子が近づいてくる。彼女は洞木ヒカリ、クラスの委員長である。そしてトウジに対し…ごほごほ…まあ話を進めよう。
「ああ、命に別状はないそうや、怪我もたいしたことあらへん」
「そうか、よかったなトウジ」
 トウジは友人の言葉に軽く手で答えながら、怒りの表情を作り言う。
「にしても、むかつくのはあのヘボパイロットや、ちゃんと足元見て戦えっちゅうねん!」
 

 包帯を巻いた少女…綾波レイはざわめきに興味がなく、ぼんやりと窓の外を見ていた。そして考えていた。

(司令はどこ?)

 と、そこで、教室のドアががらりと音を立てて開き、クラスの担任である根部先生とともに、容姿端麗な一組のカップルが入ってきた。
 言うまでもなく、シンジとヒトミである。クラスから歓声があがった。

「え〜、今日から、皆さんと一緒に、勉学に励むことになった碇シンジくんと、六分儀ヒトミくんです…え〜皆さん、仲良くするように」

「碇シンジです。よろしくお願いします」
 黄色い声がクラスから沸きあがる。
「六分儀ヒトミです…あの…よろしくお願いします。(くそ〜、なぜこんなところに来なければならんのだ)」
 だみ声がクラスから沸きあがる。

「え〜、20世紀最後の年、巨大な隕石が南極に衝突したのは、皆さんご存知だとは思いますが…」

 根部先生のとてつもなくつまらない授業が始まった。あまりのつまらなさに、パソコンで遊んでいるもの、私語をするもの、居眠りしているものと、真面目に授業に取り組んでいるものは少ない。

「これにより、氷の大陸は一瞬にして溶解し、海洋の水位は20mも上昇したわけであります、そして干ばつや洪水、火山の噴火など、異常気象が世界中を襲い、さらには経済恐慌、民族紛争や内戦などにより、わずか半年で世界の人口の半分が永久に失われたのであります」

(ねえねえ聞いた? さっき男子が話してたんだけどさ)

(え? なに?)

「これが世にいう、『セカンドインパクト』でありますな」

(転校生が今日二人来たじゃん)

(うん)

(あの二人のうち、どっちかが、例のロボットのパイロットなんだってよ)

(へえぇ)

 

 あっという間に休み時間…
「碇くんと六分儀さんって、知り合いなの?」
 シンジとヒトミはクラスから質問攻めにあっていた。
 ちなみにシンジとヒトミは、どう考えても悪魔達の策謀としか思えないがうまいぐあいに隣の席になっていた。

「いや…知り合いっていうか。ちょっと前に知り合ったばかりなんだ」
 なぜか嬉しそうなシンジ
「ねえねえ、碇くんと六分儀さんってどっちがパイロットなの?」
「えっ!? うーんと…」

(さすがに守秘義務は守っているみたいだな。偉いぞシンジ)
 と思ったのもつかの間
「うん、僕がパイロットだよ」
 とシンジはのたまった。

 がた〜んと盛大にすっころんだのはヒトミ、いくらなんでもシンジは躊躇がなさすぎた。

「シンジ…くん、守秘義務はどうしたの!!」
「あっ…」
 罰の悪そうな顔をするシンジ、さっき言いよどんだのは、ヒトミがパイロットであるかどうか迷ったからだ。一応チルドレンとして登録はされているが、現在はあくまでシンジの補欠といった意味合いが強い。

「あれ? じゃあ、もしかして六分儀さんもパイロットなの??」
 ヒトミは墓穴を掘っていた。
「えっ…いや…その…あの…そうだ…よ」
「すっげ〜!! 可憐な少女パイロットかあ!!」
 クラスはまた一層沸き立つ

 そんな中、綾波はぼんやりとヒトミを見ていた。

(あのコ…司令に似ている? 顔は似てないわ…でも似ている…どうして??)
 いよいよ、電波少女が躍進する日も近そうである。

 

 そして…昼休み…

「転校生、ちょっと屋上まで顔貸せや」
 トウジがシンジにすごむ。シンジは言われるまま従った。

(まさか、今はやりのイジメか…くっ…なぜかとても気になる…)
 呼ばれなかったヒトミもこっそり屋上についていった。


 ばきっ

 トウジに殴られ、ふっとぶシンジ

「ええかよう聞けよ、転校生。わしの妹は今怪我して入院してんねんぞ、誰のせいやと思う」
 あまりに突然のことに呆然とするシンジ
「まあ、殴られてやってくれ、こいつの妹さん、前の戦闘で怪我したんだ」とはケンスケの弁

「そうや、お前のヘボ操縦のせいでなあ。わしの妹が怪我したんじゃ、どう責任とってくれるつもりや?」
「ごめん…」
「おまえなぁ、ごめんですんだら警察はいらんわ」
 なおも、シンジに殴りかかろうとするトウジ、シンジは殴られるのを覚悟して目を閉じた。

 が、いつまで待っても衝撃が来ない。恐る恐る目を開けると、そこには信じられない情景があった。


 ヒトミがトウジの肝臓レバーに素敵な角度でフックをめり込ませ、トウジはかくかくと足を震わせていたのである。

「なぜかはわからんが、とてつもなくむかつく。死ねい。ジャージ」
 下がった顎に今度は極上のアッパー。細身の身体に力が満ちていく。

(これはユイの力なのか?)

 ふらふらと後退したトウジに追い討ちをかけるように、8の字を描くように頭を左右に激しく振りはじめたヒトミ、高速の体重移動で、強打を連打する。

 一発目が入ったらもう止まらない、やめられない♪

 ばきっ、「やめっ」
 ぼこっ「へぐっ」
 どん「ぐえ」
 がががががっ、「ほげほげほげほげ…」
 ばこ、びきっっっ 「ぐえぇぇぇ…」

 まるで吸い込まれていくように次々とパンチが決まっていく。ボクシングの必殺技、デンプシーなんたらであった。

「ふう……私のシンジに手を出すな」
「僕…?」
「あっ…いやなんでもない…」
 言って、顔を赤く染めるヒトミ、そして、これまた顔を赤くするシンジ、言い忘れたが拳も赤い…なにやらいい雰囲気である。
 ケンスケは顔がお岩さんになりはててしまった哀れな友人を引っ担ぎ、退場していった。

 入れ替わるようにして、綾波が屋上に上ってくる。
「非常召集…先に行くから…」
 レイはヒトミをちらりと見ると、踵を返し、階段を下りる。

「あっ…ありがとう。助けてくれたんだね」
 二人っきりの屋上でシンジは『天使の微笑み』をヒトミに返す。
 ヒトミの顔はまっかっか
 シンジの顔もまっかっか
「…私は…」
「うん…」
「私は…ただシンジくんが殴られるのが嫌だっただけです」
 言って、また顔を伏せるヒトミ。シンジは目の前にいる少女に熱いまなざしを送る。
「ヒトミちゃん、僕は君のことが…」

(シンジ、何を言ってるんだ!! どうしたんだ、私は!!)

 ヒトミの顔は赤そのもの!!

「僕は…」
 このときシンジはおそらく人生で一番根性だしている時であった。

 と、その時

 プルルルルルルル、携帯の電話が鳴る。
 間を外されたシンジはぽりぽりと頬をかいたあと、電話にでた。

「はい、シンジですけど…」

「なにやってんのよ、早く来なさい。シンジ君!!」

「はい、わかりました、すぐに行きます」 
 シンジの顔は守るべき人ができた男の顔になっていた。これ以上なく倒錯しているが、この際放っておいたほうが無難である。        

 

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「パターン青、まちがいありません、使徒です」
 日向がミサトに報告する。
 ミサトは唸った、現在は先の戦闘により、戦力の回復があまり芳しくない。兵装ビルで稼動しているのは48パーセント、零号機は大破、実質的な戦闘力は初号機のみである。
「それにしても…碇司令の留守中に、第四の使徒襲来か…思ったより早かったわね」
「前は15年のブランク、今回はたったの3週間ですからね」
「こっちの都合はおかまいなしってとこね……女性に嫌われるタイプだわ」
「ふむふむ…女の都合を考えない男は嫌われると…」
「何してるの? 日向くん」
 日向はいそいそとなにやらメモを取っていた。
「いや、なんでもないんです」

(よし、これでまた一歩、葛城さんに近づいたぞ)

 日向マコト、ネルフ本部、作戦部に所属。彼は努力の男であった。

 ゴウンゴウンゴウンゴウン
 司令部があほなことをしている間に使徒が都市部に侵入してきた。
 第四使徒シャムシエル…
 蛇のような形の胴体にうねうねとした二本の鞭がとっても痛そうな、なんとも言えない形の使徒である。しかも原理はよくわからないが浮いていたりする。
 戦略自衛隊が応戦するもまったくの効果なし。使徒はATフィールドと呼ばれる位相空間によって、物理的な攻撃をほぼ無効化することができるのだ。

「税金の無駄遣いだな…」
 冬月は嘲笑をこめてつぶやく。
「葛城一尉! 委員会から、エヴァンゲリオンの出動要請が来ています!!」
 青葉シゲルが速やかに情報を伝達し、ミサトは声を張り上げた。
「エヴァ初号機出撃!!」
 ミサトは胸にぶらさげてある十字架の感触を確かめつつ決意を新たにする。

(使徒は私が倒すわ!!………使徒……使徒と言えば、ベルセル○の続きが気になるわね…グリ○ィスが…って…そうじゃなくて…そう使徒よ使徒………ヒトミちゃんとシンジくんがラブラブになっちゃったらどうしよう…独り身はつらいわ……じゃな〜い!! 使徒だって言ってるでしょ、私!!)

 ほんとにこれが最後だから、確認させてくれ、ここは人類の知恵と英知の結晶、ネルフ本部である…

 

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(よくわからんが…とてつもなくシンジのことが心配だ…)
 女子更衣室でぽつんと一人待機中のヒトミ…
 先ほどシンジと別れ、彼女はすることもなくただシンジの帰還を待つのみである。

「しかたがない、発令所に行こうかな」
 ヒトミは発令所へ進む。



 発令所に到達、たった二行で到達したが、それなりに時間はかかっている。そこらへんは想像力で補完してほしい。

「あの…シンジ君は大丈夫…ですか?」
「ヒトミちゃん、今戦闘中だから、ここにいてはダメよ」
 マヤが優しく諭す、しかし手はせわしなく動かしたままだ、さすが魔女リツコの弟子なだけはある。
「リツコ……さん、お願いします、ここに置かせてください。シンジくんのことが心配なんです」

(おかしいぞ、どうしてこんなに女っぽい言葉が…)

「いいわよ」
「えっ?」
 リツコはにこりと笑い快諾した。ミサトは驚き抗議の声をあげる。

「リツコ、なに考えてるのよ、チルドレンは作戦中、待機所で待機命令がでているでしょう?!」
「あそこでは戦闘状況が見えにくいわ。今は使える機体もどうせ一機しかないんだし、別にいいじゃない」
「うっ…まあ、それはそうだけど…」
 リツコの言い分も確かに正しい、いざというときに備えて、ケージ内でエヴァに乗って待機するならまだしも、今はどっちにしろ、使える機体は初号機しかないのだ。それだったら、戦闘を経験したことのないヒトミに、戦いの様子を見てもらうのは有意義である。

 それで結局、ヒトミはシンジの戦闘を見ていることになった。

 

 リツコがモニターのシンジに話しかける。
「いい。シンジくん、敵ATフィールドを中和しながら、パレットを斉射、練習どおりにすれば、必ず勝てるわ」

「わかりました…」
 シンジは若干の緊張が混じった声で答えを返す。
「がんばって、シンジくん」
 ヒトミはヒーローの無事を祈るヒロイン的口調でシンジに言った。手のひらを軽く組みあわせ祈っている姿はさながら聖女のようであり、現実がむさいおっさんという事実はとうに霞がかってきている。

(いよいよ、おかしいぞ、どうしたのだ? 言葉が勝手に)

「あっ、ヒトミちゃん…僕、勝つよ。心配しないで」
「うん…」
 熱い眼差しを交し合う二人


 ……えっと、皆様が忘れているかもしれないので一応、ここらへんで確認しとくが…
 シンジとヒトミは親子である。はっきり言えば近親はヤバイかもしれない…何がとは聞かないでください…作者のお願いです。(^^;



 戦闘は唐突に始まった。シンジの乗った初号機がパレットを斉射する。
「くそっ。火力が足りないのか。パレットが効かない」
「シンジくん、いったん距離をとるのよ」
 ミサトが焦った声をだす。まさかこんなにまで、パレットガンが使徒に対し無力だとは思わなかった。あるいは敵のATフィールドが強力なのか。
「くそっっ!! 目標をセンターに入れて…」

 シンジが練習どおりにパレットガンを撃つが、使徒は光の鞭を使い、周りの兵装ビルごと初号機を切り裂こうとする。シンジは攻撃をする暇もないほど、追い詰められていく。

「シンジくん、避けて!!」
 ミサトが指示をだすが、遅かった。まだシンジは戦いに関しては素人同然なのだ。

「うわああああああっっっ!!」

 初号機の足がシャムシエルの鞭に捕まえられる。そして、そのまま…
 放り投げられた。
 ヒトミは思わず目をそらす。

どが〜〜ん

「あいててて…」

「シンジ君!! 大丈夫!!」
                         「アンビリカルケーブル断線、内臓電源に切り替わりました、残り活動時間5分です」
「はい、大丈夫って…鈴原と相田が!!」
                         「無視っすか…葛城一尉…青葉シゲルという男はここではいてもいなくても変わらないっすか?」


 モニターに写っていたのは、もはやお約束的にシェルターを抜け出し、これまたお約束的に初号機の指の間で震えている二人の少年であった。

「ミサトさん、どうすればいいんですか?! ミサトさん!!」

 こうしている間にも使徒は接近してくる。

「ミサトさん!!」
 ミサトは迷っていた。民間人を機密の塊であるエヴァに乗せるわけにはいかない。しかし使徒との戦いに巻き込まれれば、おそらくシンジのクラスメートである二人は確実に死ぬだろう。

 使徒が目の前に迫る

「シンジくん、二人をエヴァに乗せて!!」
 突然ヒトミが発令所の誰よりも力強い声で叫んだ。

 その言葉に突き動かされるように、シンジはエントリープラグをイジェクトし、二人をすぐにエヴァの中に誘う。
「うわっぷ、水…溺れる」
「なんや、これ、水かいな」
「二人とも、黙って」

 いよいよ目の前に迫った使徒を蹴り上げて、後方に吹っ飛ばす。
「シンジ君、一度後退するのよ」
 ミサトの声がするも、シンジはそのままシャムシエルに近づいていく。

「ヒトミちゃんが、ヒトミちゃんが見ているんだ!!」
「馬鹿! シンジくんつっこんでどうするの!!」
 ミサトが言ったときにはもう遅い。初号機は使徒に直進する。

「うおおおおおおお!!」

 ひゅんひゅん、うねうねな鞭が初号機の腹に突き刺さり、シンジは軽くうめいたが、そのままプログレッシブナイフを使徒の弱点たるコアに突き刺す。
「残り時間、30秒」
 青葉が焦りに満ちた声でカウントを始める。ここで使徒をしとめることができなければ…
 人類滅亡…発令所のだれもが固唾を呑んで見守った。

「10」

「9」

「8」

「7」

「6」

「5」

「4」

「3」

「2」

「1」

「0」

「エヴァ初号機活動停止、目標は…完全に沈黙しました」
 夕日に照らされ、二つのオブジェが重苦しく、ただ存在していた。

 

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「おかしいわ…どうして、私…こんなに女言葉しか話せなくなっているんでしょう?」
 ヒトミは自然にでる女の子している言葉が恥ずかしいのか、もじもじしながらネルフ内を歩いていた。向かう先は司令室。リツコに自分の身体がどうなっているかを聞くためである。

「あら、ヒトミちゃん…どうしたの? こんなところで」
 ミサトがるんるんと話しかけてきた。

(面倒だな…)

「あっ、シンジ君が…」
 言って目を伏せるヒトミ、シンジは今、命令違反ということで営倉入りしているのだ。
「大丈夫よ、たかだか3日間だし、規則なんだから一応ね」
「でも…それだったら私も…」
 ヒトミの目から涙がこぼれる。

(どうしたんだ?? 絶対、絶対おかしいぞ!! 勝手に口が動く!!)

 ミサトはそんな内面など知りようもなく、ヒトミの純真さに心をうたれ強く抱きしめた。
「大丈夫だから、心配しないの……シンジくんも男の子なんだからね」
 しかも、頭をよしよしと撫でられたりしている。

(牛女に撫でられとる…もう人生終わりだあぁぁぁぁ!!)

 そう思うと、今度はヒトミの目から自然と涙がこぼれ、一層勘違いを強くしたミサトにさらに強く抱きしめられてしまった。

(あああ…やるせない…ともかく、リツコ君に聞かねば…)

 やっとこさ、司令室に到着、この間もおしゃべりなミサトが、『ヒトミのことをシンジを思って涙を流す健気な少女』と触れ回ったせいか、行く先々で慰められるという始末、ヒトミの精神はそろそろヤバかった。

「リ…」
 リツコくんと叫ぼうとして、中でなにやら話し声がするのに気づいたヒトミ、てか防音ぐらいしといたほうがいいと思うぞ、ネルフ
 なにはともあれ、ヒトミは耳をぴったりとドアにくっつけ、中の様子を窺った。冬月とリツコの声がする。

「……それで…碇を婦女の性格に改造するという計画のほうはどうかね」
「滞りなく進められております。計画の遅延は5パーセントも見受けられません」
「ふむ、順調のようだね。しかし急激な性格改変に伴う、自我崩壊の危険性は?」
「それも問題ありません。どうやらユイさんが司令の身体を変化させたときに、同時に精神にも働きかけているようですから」
「つまり、美少女としての性格になっていくということかね?」
「そうです。ただ外面的にそうなるか、内面まで変わってしまうのかは予測がつきませんが…」
「それにしても…携帯のパルスだけであそこまで変わるとはな…碇が美少女していたのは…あやうく萌え死にしかけたよ…あれは続くのかね?」
「ええ、特殊なパターンのパルスを流し続けることで、今後も少女としての性格を顕在化させていくことは可能です」
「そうか…ふふふ…あははははは」
「ふふふふ…ほほほほほほほほほ」

 悪魔が二人高らかと笑う…

「うおおりゃあああああ!!!」
 そのあとすぐさまトイレに行き、携帯を膝で叩き折ったヒトミ。
「あ・・・ああ…問題ない…」
 しばらく男言葉を試したところ、元の状態に戻った。
 ヒトミは一息つくと、大きな溜息をついた。
「このままいけば、確実に少女にされてしまう…精神まで少女になってしまったら、終わりだ…」
 毎日のように玩ばれる日々を思い、心の芯から恐怖するヒトミ
 ヒトミが渡された携帯はついに一度も鳴ることはなかった…

続く




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