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新性紀エヴァンゲンドウ

 


『さて、これで新しいシナリオも完成した。
 今度は36分岐。最悪のシナリオである【私とシンジのゴールイン】も含めて、如何なる事態にも対応が利く筈・・・・・・。』

『だが、ユイ君のシナリオに反する恐れがあるぞ』

『仕方あるまい。ユイからはまだ何の指示すら出ていないのだ。
 いいかげんゼーレのシナリオを崩すための行動をとる必要もある。』

『そうだな。とはいえ、今のままでは手駒が少なすぎる。
 新生ネルフはお前と俺と俺の婚約者、そして今回加わったレイの4人だけなのだから。』

『ドイツの彼女は、SEELEの事と母親についての情報を漏らせば、自らの意志でこちらに付くであろうし、あの男を引き入れる手筈もすでに考えてある。
それに今度の起動実験時のミッションで、あの女を従え、MAGIを手中に収める事が出来る。
 我々のシナリオは、十分実現可能だ。』

『ああ、そうだなヒトミ。
では俺は俺の婚約者と共に、各国のMAGIタイプにハッキングを掛けて、コレまでどおり情報収集をつづけよう・・・・・』

「ヒトミちゃん。晩ご飯の準備出来たよ」

 その時、部屋の外から少年の声が聞こえてくる。
『もうそんな時間か』と呟くヒトミ。

『レイには作戦内容とシナリオは私から伝えるとしよう。
 共に全生命の未来を築こう・・・・・ペンペン』

 それまでカチャカチャと鳴り響いていたキーを叩く音が鳴りやむ。
 ヒトミはパソコンにそう打ち込むと、隣で専用のPCを介して会話をしていた温泉ペンギン(オス)に微笑んだ。


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第五話『ツルハシと少女』


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 ネルフ本部総司令室。

 いつもの面子がいつもの様に向き合っている。
 言うまでもなく碇ゲンドウ改め六分儀ヒトミと冬月コウゾウ、そして29歳十ンヶ月(つまりは30歳)の才媛、通称『ネコ又マッド』の赤木リツコである。

「書面にあるとうりだ。実験は明後日に決行する。
ゼーレの許可もすでに下りているので、速やかに準備を始めてくれ。」

 ゲンドウポーズ(萌えバージョン)のヒトミが一方的に言い渡す。
 あきらかに動揺を隠せないでいる2人。

「だが、なぜ初号機でなく零号機・・・・・それも現在のコアのままなのだ。」
「そうです、100%は無理でも初号機のコアの複製は可能です。そちらの方が安全ではありませんか!!
 ついでに言えば、初号機用にタンデム仕様のエントリープラグも間もなく完成します。
実験はそちらの完成を待ってからでも十分ではありませんか!!」

「あえて零号機を使うのは、私用の機体は零号機の予備パーツを元に制作予定だから、そして現在のコアをそのまま使うのは、所詮コピーはオリジナル程では無いため、可能性のある以上は、試しておく価値があるからだ。
 問題無い・・・・・・・」

 ヒトミにそう言い渡されもはや反論のしようも無い2人。
 今回の反論の内容は2人の本音とはかけ離れているが故、内心は今の反論では納得しきれないところだが、その本音を言ったが最後、かなり危険だと言う事ぐらいの常識は持ち合わせている。

『ヒトミ君にもしもの事があれば、ユイ君とヒトミ君を愛人に老後を満喫する私の計画はどうなるのだ!!・・・・・・ああ、なんとか説得する術は無い物か・・・』
『母さんのコアの入ったエヴァにヒトミちゃんを乗せるなんて、そんなの嫌だわ。ヒトミちゃんは私だけのモノよ。いずれはこの爺さんも殺して・・・・・・』

 とにかく、内心はそんな事を考えていても、決してそれは表に出さない程度の良識は、大人である以上、2人はわきまえていた。
 考えてる時点でアレかもしれないが、気のせいだったら気のせいである。

「とにかく、実験は明後日に決行する。
 タンデムエントリープラグについては、コレまで通り制作を進めてくれ。どうせ、私のEVAが完成するまで、まだ時間がかかるだろうからな。」

 ヒトミは立ち上がり、ドアの方へと歩き始める。

「司令、どちらへ?」

 尋ねるリツコ。

「明日は服をレイ達と買いに行く約束をしていてな。済まないがこれで失礼させてもらうよ」

 そう言い残し司令室を立ち去るヒトミ。

 








 2人はお互いの顔を見合わせ言葉を交わす。

「副司令、ヒトミちゃんが我々の思惑から外れつつあるのは確かです。」
「大丈夫。今でもSEELEとのパイプが生きているのは忘れてはいたが、所詮は子供。
 実行組織たるネルフを動かすには自らが『碇ゲンドウ』である事を明かさねばならないが、彼女にはその決断はできまい。資金は調達できても大した事はできんよ。
 あとは我々の計画をいう網に絡めとればいいだけの事だ。」

 だんだんとガー○イル化が進行する冬月であった。

 

注:ガーゴイルとはEVAの監督である庵野秀明監督がEVAの前に作った「不思議の海のナディア」に登場した悪役。
 声優は冬月コウゾウと同じ清川元夢氏


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 蒼い空の下、黒い人だかりが続き、広くまっすぐな道の左右には、数々の店舗が軒を連ねている。
 ここは第三新東京市最大のショッピング街『第三東京ビバリーヒルズ』。何げに爺臭いネーミング故に、現地の若者達からは『三岡』とわざわざ日本語に翻訳された上に縮小されて呼ばれる、第三新東京市を代表する若者の街である。

「ヒトミもレイもおそいぞーぉ!」

 ロングヘアの黒髪の少女が、改札から出てきた2人に声を掛ける。
 彼女の名は遥樹(はるき)スイ。一見清楚な美少女と見せかけて俺っ娘かつ活発。クラスのムードメーカ的スポーツ大好き少女である。
 スイとヒトミは、転校初日に格闘技のシュミが講じて親密になり、彼女が学級委員である洞木ヒカリと幼なじみだった事、ヒカリが以前からクラスで孤立していたレイを以前から気に掛けていた事、そしてヒトミとレイの親密な関係といったモノが複雑に絡み合い、今では、大の仲良し4人組として、自他共に認める存在となっていた。
 ヒトミ自身もこの面子の中では、無理して女言葉を使ったりもしていない。それだけ信用の置ける仲間であった。
 レイがいつものように、幻惑的視線(実は寝呆けてるだけ)でポエムを詠み、スイがそれに突っ込みを入れる。
 レイが「痛い・・・・・・」と涙を流せば、もう一人の待ち合わせの相手である、ヒカリはいつも通りにレイの頭をなでてあやす。
 ショッピングの為に遠出して尚、そんな日常を繰り返す4人であった。

「んで、今日はまずどこ行こうか?」
「んー。とりあえず服だな。レイも私も殆ど私服を持ってないし。」

 あっけらかんとしたスイの問いにずり落ちた眼鏡を指先で押し上げつつヒトミが答える。

「でもこの辺の店って高いからそんなに買えないと思うけど?」

 と心配そうにヒカリ。
 確かに中学生の小遣いレベルの金額ではブティックで服を買いあさるなど不可能であるから、ヒカリの心配は当然と言える。

「問題無い。」

 ヒトミはそんなヒカリの前に一枚のカードをバッグから取り出して見せる。
 それはつい数日前に、ようやく出来た六分儀ヒトミ名義のキャッシュカード。碇ゲンドウ名義の口座から改めて移し替えたヒトミの口座の預金を引き出すという事もあり、それは一部の上客にのみ配布されるプラチナカードであり、仕様限度額も並はずれて高い。
 マジマジとそのカードを見つめるヒカリとスイ。

「こ、これ本物かよ?」
「信じられない。確か碇君はこんなの持って無かったわよ。だからエヴァパイロットだからって事では無さそうだし・・・。
 もしかして六分儀さんの家ってお金持ちなの?。」
「お金持ちどころか、私は孤児だ。
 このカードの口座に入っている預金の大半は、生物学者としての研究の報酬として得た物。誰に憚ることも無い、私個人の資産だよ。」
『え??』
 
 驚く2人。
 ヒトミは、碇ゲンドウとしての経歴を話してしまい、内心『しまった』とあわてる。

「ヒトミは一度海外で大学を卒業しているモノ・・・。
 今、中学校に通うのは友達を作るためって言ってた・・・・・・」

 レイがそんなヒトミを気遣い、機転を利かせる。
 2人もレイの説明に納得したようだ。

「とにかく、私が大学を出てるのは内緒にしてね。みんなの分の服も奢るから」
『わかってるって(たわ)』

 満面の笑みを浮かべ約束する2人。
 その時レイがヒトミの耳元でささやく。

「菊花堂のクリームパフェ・・・」
「?」
「菊花堂のクリームパフェ・・・」

 どうやら今度おごれと報酬を求めているのだろう。

「わかった、今度食べに行こう。代金私持ちで・・・・」

 二ヤリと笑みを浮かべるレイ。
 綾波レイ14歳・・・・・・まだまだ色気より食い気の優先されるお年頃である。

 


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 ティーン向けの服を扱うブティックに4人はいた。
 入るなり「レイも私も、服のことはよくわからないから、選ぶのを手伝ってくれないか?」とのヒトミの発言に、ヒカリもスイも、大いに乗り気でヒトミ達を試着室に押し込めると、店にある服を山程抱えて2人に差し出す。

「さあさあ、姫様、これをお召しください」

 悪戯っぽい笑みを浮かべ最初の一着をヒトミに差し出すスイ。
 ひかりは、そんなスイの演技がかった口調に思わず座り込み、クスクスと笑っている。 ヒトミは、やれやれと言った表情で服を受け取る。











数分後

 

 試着室から、ヒトミが姿を現す。
 着ているのは肩が露出したブルーのワンピース。
 なにげに清楚ないでたちが、周囲の視線を集める。

「うんうん俺の思った通り最高♪」
「本当に似合ってるわ、ヒトミ」
「ヒトミ素敵・・・」(ポッ)

 3人は口々に賞賛する。
 当のヒトミとしては恥ずかしい限りではあるが、自分ではどういう服を選んで良いのか解らず、彼女たちに一任した以上は仕方ないと、すでに諦めも入っている。

「じゃあ次行こうか♪」

 スイが元気良く宣言する。
 どうせ言っても無駄だろうとばかりに次の服を受け取るヒトミ。
 以後「キュロット」「ミニスカ」「ホットパンツ」「ミニドレス」・・・・・・様々な衣服の様々なデザイン・・・数多の服を数時間に渡って試着させられる。
 そして幾度目かの試着を終え出てきた時、一人の女性が、そのブティックのドアをくぐった。
 黒く長い髪に、レイによく似た顔立ちの美女・・・・・・・

「げっ・・・・碇・・・・ケイ!!」

 クルリとケイの顔が、ヒトミ達に向けられる。
 ヒトミは、『ケイ=サードインパクト後の世界から逆行したシンジ』という事は知らない。だが、本能が、彼女に強く訴えるのだ、

『そいつに触れる事は、死を意味する!!!
これが!これが!!
碇ケイだ!!!(ドッギャアアアァァァァァン)』

と。

「ど、どうしたんですか?ケイさん・・・・・・・・こんなところで会うなんて、珍しいですよね・・・・・ハハッ ははははははははは・・・・・」

 ヒトミは出来るだけ平静を装おうとしているが、正直腰はひけているは、声はうわずっているはと、もうズタボロである。
 一方のケイは、そんな事お構いなしに、ヒトミの格好を上から下まで、なめ回す様に見ている。

「あたしは、レイちゃんに服の一つも買って帰ろうとおもってたんだけどね・・・。
だけど・・・・ヒトミちゃん、その格好かわい♪」

 つかつかと近寄ると今にも逃げだそうとしているヒトミの腕を掴むケイ。
 内心『さーて、どうやって遊ぼうかなぁ・・・☆』などと考えているのは言うまでもなく、その表情から伺える。
 ヒトミの顔から、サッと血の気が引いていく。
 さて、そんな2人の様子を見守るスイとヒカリだが、ケイについてはレイの保護者である事や、シンジの叔母である事を知っている。だから、ヒトミの親類なのだから、多少の事は家族どうしでのおふざけと見なして止めようともしないのである。ケイはその辺を十分わきまえた上で、ヒトミをどうおちょくるかを思案していた。
 ヒトミは現在、深窓の令嬢然とした格好をしている。
 そしてケイは思いつく。

「それにしても、素顔でそれだけ可愛いなんて、この上お化粧をしたらどうなるのかしら?
 みんなは、この娘がこの服装でお化粧したところ見たくない?」

 悪戯っぽい口調のケイ。
 スイもヒカリも、そういえばヒトミは化粧ッ気が無さ過ぎると思い、「この際だから、コレを期に、ヒトミも化粧の良さを知るべきかも」と思い、反対するどころか、賛成の意志を示すのであった。

「じゃ、試着室の中でしましょうか♪」
「い、いやだぁ・・・け化粧だけは・・・・・・・」

 かくして、2人は試着室の中へと消える。

「ヒトミがどうなるのか、楽しみね♪」
「うんうん、全く♪」

 何も知らないスイとヒカリ。ただ一人、その状況を正確に認識しているレイは、呟く。

「涙・・・・・・・・
私、・・・・・自分の影の薄さに泣いているの?」

 彼女は、どこまでも人とずれている天然系少女だった。

 


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 試着室の中、その服が化粧中に汚れない様に、上半身裸にされて、ヒトミはケイの前に座らされていた。当然眼鏡は没収済み(笑)
 
「さっすが14歳。お肌もピチピチよねえ。」
「ひーん(涙)」

 そう言ってヒトミの頬の肉をピニョンと左右に引っ張るケイ
 すでになすがなされるままのヒトミに、ゲンドウであった頃の迫力など、影も形も無かった。

「じゃまずベースから参りますか」

 ぺちぺちと化粧水を塗り込み、程良いところで今度はファウンデーションを乗せ、コットンで塗りのばしていく。

「よしよし良い感じ良い感じ」

 続いてアイシャドウが入り、目元の凹凸をより鮮明にすると同時に、ヒトミの目をパッチリとしたモノに変える。
 さらに、眉毛のカットやリップ塗りを経て、全行程完了は作業開始から30分といったところであった。
 そそくさと上半身だけ脱いでいた服を着込むヒトミ。

「あの・・・・・ケイさん、眼鏡返してもらえません?」

 目をうるませてヒトミ。
 どうにも眼鏡が無いと落ち着かないと言ったところか。
 ケイはその表情を見るナリ、心臓の鼓動が早くなるのを感じる。

『食べちゃだめだ 食べちゃだめだ 食べちゃだめだ・・・・・
 所詮あの中身はあの髭眼鏡なんだぞ・・・・・・」

 必死で欲求を抑え付けるケイ。ケイもまた所詮はシンジであった。
 ただし、一応は神の力を持つというスーパーシンジ。その理性の力で完全に欲求をねじ伏せ、平静を取り戻す。その所要時間は僅かに一分。さすがである。

「じゃあみんなに見せよっか♪」

 いつもの調子を取り戻したケイは、いやがるヒトミの二の腕を掴んで、試着室から引きずり出す。
 次の瞬間、ヒトミが見たのは、顔を真っ赤に染め頬を抑える友人2人。

「か、かわいぃーーーーーーーーー♪」

 キャイキャイと飛び跳ねる2人、一方レイは、同じように頬を赤らめると、鼻血を吹いて卒倒した。ケイはその時、かつて見た『補完終了後のリリスが首から血を出して崩れ落ちる光景』を連想したという。・・・
 そんな周囲の有様に唖然とするヒトミ。そんな彼女をケイは試着室の鏡の前へと誘う。 そしてヒトミは、化粧中にはケイの躰が邪魔になって見ることの出来なかった、化粧を施された自分の顔を初めて目にする。

「こ、これが私なのか!?」

 普段なら眼鏡のフレームの影に隠れてわかり辛い二重も、眼鏡を撤去され、さらにアイシャドウやマスカラを施された事で、より一層くっきりと際だち、その愛らしさを強調している。
 さらに唇には淡い色のリップが程良く塗られたことで、いまやヒトミはまるで天使の様な美少女である。
 呆然とするヒトミ、よしよしとひとしきりうなずくケイ、飛び跳ねるスイとヒトミに、卒倒したままのレイ。
 第三東京市の日常はあまりに平和であった。
 

 

 

 

 










 

 

 

 その後ヒトミ達4人は、ケイと別れて本来のスケジュール通りに、ショッピングを楽しんだ。そしてその夕方、ヒトミとレイはスイやヒカリと別れ、電車の中にいた。

「楽しかったな、レイ。」

 ヒトミの言葉に、コクリとうなずくレイ。
 ヒトミは一枚のMOをレイに手渡す。

「新しい我々のシナリオだよ。これを使って、ゼーレのシナリオをつぶすのだ。
 彼女達を護る為に、一緒に戦ってくれるね?」

 レイは再びうなずくと口を開く。

「スイもヒカリも、わたしにとって大切な絆・・・・
 2人が居ない生活なんてもうわたしには耐えられない。
 何よりヒトミを護りたいもの・・・・・」
「ありがとう・・・・レイ」

 暮れていく第三東京市の夜、ヒトミはレイの髪を優しくなでつつ、心に誓う。

「明日の試験の際の計画・・・・必ず成功させて見せる。・・皆を護るために・・・・」

 


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「じゃあヒトミ、準備はいい?」

 MAGIを通してエントリープラグ内のスピーカーからリツコの声が響く。

「準備完了。始めてください。」

 ヒトミは、己の正体を隠すべく、口調を意識して丁寧にして答える。
 そして、試験は開始された。
 


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「エヴァ零号機無事起動しました。」

 発令所に歓喜の声が響く。
 スピーカーを通してその声を耳にするヒトミ。

『では我々のシナリオを開始するか・・・』

 心の中でそう呟くと、このエヴァのコアに秘められた魂たる『赤木ナオコ』・・・かつての自身の愛人に呼びかけ始める。
 やがて、その声・・・いや、魂の波動に揺ぶられ、その魂は目覚めた。
 実体化とまでは行かないまでもある種の蜃気楼状にその姿は視認可能なモノとなっていた。

「ひさしいな、ナオコ君」
「ええ、本当に・・・・でもゲンドウさんがこんなに愛らしくなるなんて・・(赤面)」

 その会話はすでに零号機を監視する司令塔にも筒抜けであった。

「そそんな、ヒトミちゃんがあの髭眼鏡だなんて・・・」
「お、俺を裏切ったな!!」
「ううううう・・・・・・・・・むごいわ。現実って残酷だわ(涙)」

 パニックに陥るオペレーター一同。それを立ち会っていた冬月が一喝する。

「落ち着きたまえ!!。ヒトミ君がゲンドウに戻る術は存在しない。
我々はあの娘をいつも通りヒトミ君と呼び愛すればいいのだ!!
そして身も心もヒトミ君にしてしまえば、もはや我々は髭眼鏡という障害を意識する必要が無くなるのだ!!!

 オペレーター一同は「そうだよ、髭眼鏡は死に、新しくあの天使のようなヒトミちゃんが生まれたと考えればなんの事は無いさ。」「私たちの手で、さっさとヒトミちゃんを完全な美少女にするのよ♪」とささやき会うと、平静さを取り戻した。
 そんな部下達を見て、冬月は「我が事成れり」とほくそ笑む。
 もはやヒトミをゲンドウに戻さないというのは、ネルフ司令部の共通の目的となっている。あとはヒトミを手なずけさえすれば、望みはかなうのだ。
 朱に交われば赤く染まる。・・・・
 ゲンドウと共に数十年行動を共にした冬月の心は、今回の事を通して、赤をすでに通り越し真っ黒に染め上げられていた。
 今や、完全にガーゴ○ルな冬月である。
 
 一方EVA零号機、エントリープラグ内。
 ヒトミとナオコの会話は続いていた。

「それにしても素敵だわ・・・・・・MAGIに検索を掛けて、普段のヒトミちゃんも見させてもらったけど、本当に愛らしい・・・・。」

「ふっ、そうか?」

「ええ、本当に、もう我慢できない♪だから一つになりましょ☆」

 そのナオコの言葉に司令部には衝撃がはしる。
 驚愕のあまり立ち上がる冬月。

「いかん!!
赤木博士!!早急にシンクロをカットしたまえ!!」

「ダメです!!MAGIはすでに零号機コアに占拠されています・・・・・というか、元々MAGIのOSは零号機と同一のモノです!!!
 ですが前もって埋め込んでいたシンクロの阻害機構によって感覚面のシンクロだけは回避されています。副司令!決断を!!」

 絶叫するリツコ。
 冬月は天を睨み付けると、決意を固め、待機していたサードチルドレンであるシンジを呼び出し、命じた。

「現時刻をもって零号機を使徒と任命する。シンジ君。君の手で使徒に捕らわれたヒトミ君を救出するのだ!!」
「はい!!」

 未だ『ヒトミ=ゲンドウ』という真実を知らないシンジは、元気一杯に返事をする。
 その指令はヒトミを思慕するシンジにとって、望むところであり、「シンジさん大好き♪」などとヒトミが自分に抱きついてくるなどという、微妙に勝手な妄想を加える事で、今や彼の志気は、極限を極めていた。
 その様子をスピーカーを通して聞いていたヒトミは、

『すべてはシナリオの通りに進んでいる。後はレイが上手くやれば、第一目標は完全に達成される』

と、内心ほくそ笑んでいた。

 そうこうしている内に、初号機は起動し、零号機を取り押さえる。

「ふふふ、いくら美少年のシンジ君のお願いでも、ヒトミちゃんはわたさないわ♪」

 赤毛マッドことナオコの幻影はそう叫ぶと、初号機を振り切り、再度意識を集中して、ヒトミを完全に取り込もうと試みる。
 しかし、その時、ナオコ意識に奇妙な割り込みが仕掛けられる。

「な、何!?まさかりっちゃん!?」

 MAGI本体内に入り込んだリツコはタンパク壁に直接電極を差し込み、ダイレクトハッキングを仕掛けていたのだ。

「母さん・・・ヒトミちゃんは私のモノよ。邪魔をすると言うなら、完全に死んでもらうわ!!

 母と娘の骨肉のマッドによる死闘!!
 MAGIから強制的に消去されていくナオコの人格。
 実はその時、新生ネルフの天才ハッカーペンギンである、ペンペンとその婚約者であるギンギンによる、ナオコ消去のバックアップが秘密裏に行われていたのは内緒であり、そのことには、それを前々から知っていた新生ネルフメンバー以外は気づいていなかった。
 苦悶の声を上げのたうち回る零号機。

 

 ユイの覚醒!
 初号機の瞳が闇に光る!!

「ナオコさん、本当に・・・・・・死ね!!
 初号機はのたうち回る零号機を零号機自身のケーブルを引き抜き、ここぞとばかりに零号機を「亀甲縛り」で取り押さえる。

「一体、どうなってるんだよ!?」

 もはや訳の分からないシンジ。
 ふと、彼が外を写すモニターを覗くと、一人の見慣れた少女を確認する。

「綾波!?」

 綾波レイは、肩に担いだツルハシを構えると、ATフィールドを展開しつつ、ひとっ飛びに零号機の胸部に飛び乗る。

「バアさん、殲滅するわ!」

 レイはATフィールドで強化したツルハシを、零号機の装甲の隙間に振りかざす。

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 死の恐怖に絶叫するナオコ。
 その時、ヒトミが髪の中に隠していた、中央に深紅の石のはまったネックレスを取り出し、心の中で念じる。

『さあ、ナオコ君、選択肢は二つだ。
このまま消去されるか、このネックレスの中心に設置されたコアに逃げ込むか・・・・
 さあ、どうする?』

「わかりましたわ・・・・・・」

 そう言うと、ナオコの幻影は消滅し、それと同時にネックレスの深紅の石が、鮮やかに輝き出す。零号機は完全にその活動を停止した。










 

 

 


 そして一時間後・・・・・・・・。
 
 司令塔に現れたヒトミは、本日病欠に付き、この場に居ないミサトを除く司令塔の一同の前に立ち、語り始める。当然の様に、その場にはシンジ達も居ない。

「君たちの知っての通り、私はネルフ総司令の碇ゲンドウだ、これまで黙っていてすまん。
だが、私の事は内密にする必要があったのだ。とりあえず、いつになったら元の姿に戻れるかもわからん以上、よろしく頼む」

 神妙かつ真剣な表情のヒトミ。
 そんなヒトミに帰ってきたのは以外な言葉だった。

「碇ゲンドウ?誰ですかそれ?」
「聞いたことも無いな」
「ネルフの総司令官と言ったら、元々六分儀ヒトミ中将ですよ」
「私も碇ゲンドウなどしらんな」
「わたしも知りませんわ」
「MAGIで戸籍情報を検索しましたけど、そんな人はいません」

「おい!!!」(汗

 ヒトミの怒号が司令塔に響き渡った。

 


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「預金こそ無事だったが、
 まさか、私の戸籍までいじるとは・・・・・」

 一人更衣室の中で、先程のネックレスを片手に呟くヒトミ。
 その時、小さな人影がネックレスの中から現れる。

「大丈夫ですわ。これからは私がサポートしますもの・・」

 その影は赤木ナオコであった。あまつさえ、10代までその姿が若返っているのはご愛敬である。

「これからはよろしく頼む」
「ええ」

 


続く


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