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行け行け山口探検隊
〜前人未踏のジャングルの奥地1200km! 知られざる新人類は実在した! 「ビショージョ」の姿を追え!〜

作:かわねぎ



「我々は前人未踏のジャングルへの奥地へと入ってきた。行く手を遮るように生い茂る熱帯植物をかき分け、ここ、ぽっかりと暗闇の口を開けた洞窟にやってきたのであった。そう、いよいよ我々が前人未……(ばきっ☆)……いてて!」

 流暢に喋っている僕だったけど、突然後頭部に鈍い痛みが走った。見ると、サファリルックの上に「○曜スペシャル」というジャンパーを羽織った探検隊長が、台本を丸めて握ったまま、頭を抱えてうずくまる僕を見下ろしていた。

「隊長〜、痛いですよ〜」
「深川君、これから洞窟に入ろうとする時に何ぶつぶつ言ってるかなぁ」
「だってナレーションは必要ですよね」

 ちょっと涙目の僕。探検隊長は、山口さんといって、今まで数々の冒険をこなしてきた人。もう、全国的な有名人さ。僕もずっと憧れていたんだけど、今回念願叶って、探検隊の隊員になる事が出来たんだ。そりゃぁ、もう嬉しくて嬉しくて。ナレーションに熱も入るってもんさ。

「隊長は隊員達にこれから立ち向かう洞窟の危険を告げていった。その一言一言を食い入るように聞いている隊員達。そう、原住民すら近づかない危険な洞窟へと、その足を踏み入れようとするのであった!」
「君ねぇ。隊員って言っても僕と深川君しかいないじゃない」
「まあ、雰囲気ですから。でも、なんで今回はメンバーが少ないんです?」
「スタッフが次回の収録の準備で忙しくてねぇ……まあ今回は30分枠だしね」

 隊長は分かるような、よく分からないような説明をしてくれる。でも人数が少ない方が好都合。それだけ僕も活躍できるってことだ。

「大体今回の目的分かってるの?」
「はい。『前人未踏のジャングルの奥地1200km! 知られざる新人類は実在した! 「ビショージョ」の姿を追え!』です」
「うん。よく分かってるねぇ。なら、行こうか」
「はいっ!」

 隊長の命令に僕は元気よく答える。いよいよ洞窟の中に入って行く。原住民も近寄らない、前人未踏の洞窟だ。……けど……あれ、僕たちより先に二人入っていくけど……あれは誰?

「カメラさんと照明さんだ」
「へ!?」
「まあ小さい事は気にしないでね」

 う〜ん、既に「前人未踏」では無くなっているんだけど……まあ、隊長の言うとおり、気にしない方がいいのかな。じゃあ、気を取り直して……

「我々は慎重に洞窟へと一歩一歩足を踏み入れていった。拡がるのは限りない闇。果たして我々は出口へとたどり着ける事が出来るのだろうか……うわぁぁぁ!!!」

 足元の感覚が何か変。そう思って足元を見てみると、何だか丸い物が無造作に並んでいて、ごつごつした感じだ。それをわざわざ「照明さん」が照らしてくれるものだから、何が並んでるか見ちゃったよ。

「深川君、どうしたの〜」
「ど、ドクロ……」
「ああ、白骨だねぇ。むやみに足を踏み入れるとこうなるのかねぇ」
「あわわわ……」
「女の子じゃないんだからさ、そんなに怖がることないよぉ」

 隊長は何事も無かったかのように、白骨を拾い上げ、可哀想に、といった感じで撫でていく。うん、隊長って勇気があるだけじゃなく優しい人なんだね。白骨も何かで磨いたようにぴかぴかだったけど、「照明さん」のライトのせいかな。

「よし、足元に気を付けて進んでいくんだぞ」
「はいっ! 我々は犠牲者の無念を乗り越え、洞窟の奥へと進んで行く。暗がりを照らすのは一本のたいまつだけ。暗闇の中で我々を待ち受けているものは……うわぁぁぁ!!!」
「深川君、どうしたの〜」
「な、何か上から! 上からぁ!!」

 僕の首筋にぼたっと落ちてきたのが合図だったのか、いくつも「何か」落ちてくる。「照明さん」が照らしてくれる物だから、僕がつまみ上げた「何か」がはっきりと分かる事が出来た。僕が掴んでいたのは……蛇のしっぽ。

「へ、蛇だぁ」
「むっ、これは毒蛇! 気を付けなければねぇ」
「あわわわ……たくさん、しっぽから落ちてくる……」
「女の子じゃないんだからさ、そんなに怖がることないよぉ」

 隊長はそう言うと、無造作にぽいっと毒蛇を明後日の方へ放り投げた。しっぽを下手に持ったら、噛まれないのかな。いや、隊長は探検歴が長いから、こういうアクシデントも数多く体験しているんだろう。やっぱり頼りになるなぁ。

「上にも気を付けて行こうね」
「は、はいっ! 我々は毒蛇の群れをからくも撃退し、さらに洞窟の奥へと進んでいったのである。そこで我々は予想だにしなかった……うわぁぁぁ!!!」

 暗闇にぼんやり照らされたのは、サソリだった。サソリといえば猛毒を持つことで有名だよね。それが微動だにせず、こちらの様子を窺っているんだ。こういう時にも照明さんやカメラさんは、わざわざそっちの方に注意を向けるんだもんなぁ。

「サ、サソリだぁ……」
「もちろん毒を持ってるからねぇ。気を付けなきゃ。おや、こっちには毒蜘蛛が」
「あわわわ……」
「女の子じゃないんだからさ、そんなに怖がることないよぉ」

 サソリと毒蜘蛛を素手で払いのける隊長。危険があるのに凄いと思う。やっぱり隊長だ。そのお陰で、しばらくはスムーズに行ったんだけど、冒険にはアクシデントが付きものだ。

「洞窟を抜け、ジャングルを進む隊員達の前に、森の中にぽっかりと開いた空間が。そこに広がる沼は……突如底なし沼だぁぁ うわぁぁぁ!!」
「深川君〜、大丈夫かい?」
「隊長、助けて〜〜」
「あらら、僕もはまっちゃったねぇ。一足遅かったみたいだ。今回は案内の原住民さんがいないからねぇ」
「隊長、笑ってる場合じゃないですよぉぉ」
「女の子じゃないんだからさ、そんなに怖がることないよぉ。ほら」

 隊長はさすが経験豊富だ。一発で底なし沼ではないことを見抜いていたんだ。沼は深めのプールくらい。探検家としては、まだまだ駆け出しなことを、改めて気が付かされた気分だ。でも、隊長に付いていけば、いずれは……

「深川君、まずは服を乾かそうか」
「そ、そうですね……」

 隊長は木の枝にロープを通して、物干し竿の代わりを作った。簡単そうにやっているけど、さすが経験豊富な隊長、手慣れたものだ。カメラさんと照明さんは沼を先回りしていたので、全然濡れていないんだけど、それはどうでもいいみたいだ。

「おや、あれは……」
「人の出入りがある跡だねぇ。目的地は近いよ」
「車の跡がなんでこんな所に……」
「新人類の足跡だよ、あ・し・あ・と」

 車の跡に見えた轍も、経験豊富な隊長が見ると違うらしい。僕には区別が付かないけれど、この辺はやっぱり経験だよね。でも足跡と言うことは、目指す新人類はここに足を踏み入れているってこと。服が乾くのを待って、いよいよ目的地って訳だ。だけど、そこで急に隊長が僕に向かって注意を飛ばす。

「深川君、ナレーション!」
「え!?」

 隊長の言葉にはっとした僕は周りを見回した。いつの間にか僕と隊長は囲まれていたんだ(もちろんカメラと照明さんも)。姿と数ははっきり分からないけど、シルエットだと武器か何かを構えているみたいだ。

「我々を囲む何者か! わずかな油断が我々探検隊を窮地に陥れる。我々が見た衝撃の事実とは!」
「10人くらいだねぇ……10対2。勝ち目はないねぇ」
「人数にカメラさんと照明さんは?」
「あっちで撮影があるからね」

 じりじりと輪を狭めてくる謎の人達。近づいてきたお陰でその姿がはっきり分かった。女の子だ。何かの毛皮を纏った姿はまるで女ターザン。ということは、これが僕たちの探していた新人類「ビショージョ」? 目的達成と言いたいけど、そんな状況じゃないみたいだ。なんせ、彼女らは手に槍みたいな武器を持っているんだ。

「$%)∀〜#д※▽!?」

 高校生くらいの娘が槍を僕たちに向けながら、聞き慣れない言葉で叫ぶ。何か僕たちを問いただしているみたいなんだけど、言葉がさっぱり分からない。彼女がリーダーらしいんだけど、どうすればコミュニケーションが取れるんだろう。おろおろする僕を制して、隊長が一歩進み出る。

「た、隊長、言葉分かるんですか?」
「ボディランゲージで何とかなるもんだよぉ」
「相手は武器を持ってるんですよぉぉぉ!」
「大丈夫だよぉ。女の子じゃないんだからさ、そんなに怖がることないよぉ」

 近づく隊長にリーダーの娘は槍を構え直して、注意を怠らないみたい。隊長は両手を広げて敵意のないことを示すけど、分かってくれるかな。女の子はこれ以上近づくなとばかりに槍を突き付けると、底なし(?)沼を指さして、何やら怒鳴りつけている。何だろう。まさか聖なる泉で僕たちがそこを汚してしまったとか……そうなると怒りを静めるのは大変だよ。

「隊長、なんて言ってるんですか?」
「どうやら、泉に入ったか聞いてきているみたいだね」

 リーダーの問いかけらしい言葉に隊長が軽くうなずくと、ざわめきが女の子達の間に広がった。なにを言っているか言葉は分からないけれど、驚きとか恐れているとか……おそらく好意的じゃないと思う。

「)%※Σδφχ!!」

 リーダーの娘が槍を高く掲げてそう叫ぶと、女の子達のざわめきがぴたりと収まった。そして、隊長に向かって歩みを進める。槍は構えてないから、いきなりグサリってのはないんだろうけど、危ないことに変わりはないよ。隊長もちょっと身構えているみたいだ。

「▲C:*#@〜」
「え?」

 リーダーの娘はにっこりと微笑んで、いきなり隊長をぎゅっと抱きしめた。僕の所からは隊長の表情は見えないけど、たぶん驚いているんだろう。そう思っていると、僕の周りにも女の子達が集まってきて、抱きついてくる。みんな可愛いから悪い気はしないんだけど、やっぱり面食らっちゃうよ。

「お前達、聖なる泉に入った。これから私達の仲間なる」

 リーダーな女の子がたどたどしい日本語で僕たちに話しかけてきた。あれ、言葉分かるじゃない。それにしても、仲間って?

「私達の村、女性だけ。男いない。でもお前達泉が認めた。認めたら村に歓迎」
「名誉村民って事かなぁ。でも男が入っていいのかなぁ?」
「男は村に入れない。例外ない。女は村に入るの問題ない」

 う〜ん、リーダーの娘の言うことがイマイチ良く分からない。たぶん女性だけの村の掟があるみたいだけど、問題ないってどういう事だろう。

「ね、問題ないって、僕たちは男……」
「お前達歓迎された。その証拠これ」

 言ってることが分からなくて、ぽかんとしている隊長と僕。手っ取り早く分からせようと、リーダーの娘は僕のムネをむにっと揉みしだいた。いきなりの感覚に僕は思わず身をよじってリーダーの手から逃れようとした。ちらりと隊長の方を見てみると、同じみたい。いきなりムネを揉むなんて、何するんだ……え、ムネ?

「証拠、わかったか?」
「ムネぇぇぇぇ!?」
「おっぱいだねぇ」

 いつの間にか僕のムネが膨らんでいた。ムネだけじゃない。体全体、女子高生位の女の子になっているんだ。驚いて隊長の方を見ると、やっぱり女の子になっている。隊長も女子高生位の歳だけど、なぜか欧米人とのハーフっぽかったりするし。

「女になってるぅぅぅ。隊長ぉぉぉぉぉ」
「まぁ、深川君、落ち着いて」
「こんな事になってるのに、何落ち着いているんですかぁぁぁ」

 僕の叫び声をよそに、村へと連れて行かれる隊長と僕。歓迎の宴で教えてもらったんだけど、どうやらあの『底なし沼』は『入った者を女の子にする泉』の水が流れ込んでいるらしい。そんなのが実在するなんて……そしてよりによって、僕たちがその餌食になるなんて……

 歓迎の宴は豪勢な料理が出たり、村の女の子が給仕してくれたりで、普通に見れば楽しい宴なんだろうけど、今の僕にとっては憂鬱なだけ。だって、女の子になっちゃったんだよ。さすがに隊長も今度ばかりはどうしようもないのかも。つい不安になって、隊長のだぶだぶなサファリジャケットの袖を引っ張る。

「隊長〜、これからどうするんですか?」
「こうなっちゃったら、探検隊にも出れないねぇ」
「そんなぁ……」
「番組もマンネリになってきたしねぇ。テレビ局違うけど、にゃんにゃんクラブに応募しようかぁ」
「隊長〜 そんな事言ってぇ……」
「もう女の子なんだからさ。覚悟決めようよぉ」

 にゃんにゃんクラブっていうのは、別のテレビ局でやっている、女子高校生を集めて歌ったり踊ったりのバラエティ番組だ。今の僕たち二人は……合格して会員番号をもらえる位のルックスだし……冗談になってないですよぉ。隊長ぉぉぉ。






































で、元隊長は結局応募して……合格しちゃったんだけど……

「会員番号32番、山口・スーザン・久美子ですぅ」

 僕ももうナレーター出来ないんで、応募しちゃいました。会員番号33番、深川智子です。これから応援してください♪





あとがき

 嘉門達夫の「行け行け川口浩」を聞いていて、ふと思いついたネタです。泉に落ちてTS、というのはまぁ割とオーソドックスな話しかと思います。でも思いついたのは、その後の後日談ネタだったり。元ネタの川口探検隊も、後日談ネタのおニャン子も、30禁ですかねぇ(笑)。別にスーザンも布川も特段好みな訳ではないんですけどね(汗)。

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