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実録・私はUFOにさらわれた

作:かわねぎ
画:りじ〜様



「うん……ここはどこだ?」
俺は目を開けたが、天井の灯りが眩しく、視力が戻らない。
いや、部屋全体が明るいのか?
手足を動かそうとしたが、何故か感覚が遠い。
俺は視力が戻る間、何故こんな所にいるのか、思い出してみた。
確か俺は県境の峠を車で走っていたはずだ。
今日は夜遅くまで隣県の営業所で客の接待。
同僚の注意も無視して、車でうちの方へ帰ろうとしたんだ。
そりゃ、少しは酒も飲んだけど、後半は烏龍茶だ。十分酔い覚まししたさ。
峠道とはいえ、2桁の国道だ。そんな細い道じゃない。
まあ、深夜帯ともなれば交通量も少なくなるから寂しいんだけどな。
そして、眩しい光が見えた。
まるで真昼のように俺の視界を灼いたんだ。
確かあの先は下り坂でSカーブの連続……
「まさか! 事故った? 救急車? 病院? あの世?」
パニックになる俺。
手足が動かないのは、死んだせいか?
これからお迎えが来るのか?
天国か? 地獄か?
そんな時、お迎えは壁から現れたんだ。そう、ドアを開いてじゃなくて、壁から。
銀色の服を着た奇妙な小人。
まるで、そう、アメコミに出てくるようなリトルグレイ型宇宙人。
「%&※★$λΣ@凸?」
そいつらは何か音を発している。
俺をさらにパニックに陥れるにはこれで十分だった。
じゃ、俺はこれで気絶するから。勝手にあの世にでも連れてってくれ。

再び目覚める俺。
あれ? 今度は手足が動……動かない。何かで固定されてるぞ。指は動く。
ベッドの上から覗き込むリトルグレイ。
なんかグロいな。目を覚ますんじゃなかったよ……
「気ガツイタカ」
「俺は生きているのか? 事故ったんじゃないのか?」
「ワレワレハてぃず星人。銀河系ノ反対側カラ来タ」
今度は言葉が通じるな。『ワレワレ』ってことはもっと沢山いるって事か。
ティズ星人だがティガ星人だか知らないが、これってUFOに誘拐されるっていうアレ?
アブダクトってやつ?
そんな。安物のB級SF映画じゃないんだから、勘弁してくれ。
「そんなのライトパターソンとかロズウェルでやってくれ!」
「詳シインダナ。ソンナノB級SF映画ニシカ出テコナイゾ」
悪かったな。好きなんだよ。
あんたも詳しいな。趣味が合いそうだ。
それにしても、こうやって拘束されているって事は、何かの実験をしたのか?
「俺に何をした!」
「悪イガ、ワレワレノ実験材料トナッテモラッタ」
「解剖とかキャトルミューティーションとかかよ」
「ソンナ野蛮ナ事ハシナイ。外部カラ君ノ体ヲすきゃんシテ調ベタダケダ」
「そんな事をして何が分かるってんだ」
いや、宇宙人というのは科学技術が進んでいるというのが相場だ。
きっと、DNAレベルまで詳しく調べられたんだ。
「観察ノ結果、重大ナ事実ガ判明シタ」
重々しく声を出すリトルグレイ。口がないからどこから喋っているんだか。
俺も唾を飲み込んで、奴の言葉を待った。
「γ−GTPトとりぐりせらいどガ高メダッタ。酒ハ控エタホウガイイ」
「健康診断かい!」

それからしばらく掛け合い漫才のような会話が続いたが、割愛させてもらおう。
それにしても宇宙人とのコンタクトってこういう物なのだろうか。
アブダクトされた人間が話したがらないのも、分かる気がする。
アホらしいからだ。
でも、悪い宇宙人ではないらしい。
自損事故を起こす寸前だった俺の車ごと、助けてくれたんだからな。
それについては礼を言ったのだが、礼には及ばないだと。
逆に勝手に研究して済まなかったと謝られる始末。
案外良い奴かも。

「オ詫ビト言ッテハナンダガ、何カ望ミヲ一ツ叶エテヤロウ」
「そうだな。一生かかっても使い切れない分の金が欲しい」
俺は即答する。やっぱり世の中金だよ。金。あっても邪魔にならないしね。
途端に口ごもるリトルグレイ。
「イヤ、ワレワレニ出来ル事ダケナノダガ……」
何だよ。使えない奴。そもそも何が出来るんだ?
「ワレワレノ自慢ハ進ンダ医療技術。遺伝子れべるデ完治デキル」
「俺はどこも悪くはないぞ。それじゃ何にもしてもらえないな」
「ソレハ残念ダ。ソレデハコレデ、サヨナラダ」
おいおい、もうさよならかい。
せっかく何かしてくれるんだから、やってもらわないと。
急いで考える。ちょっと時間をかせごう。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。背を伸ばしたりなんても出来るのか」
「身長ノ増加カ。モチロン可能ダ。身体的特徴ヲ変エル事ハ容易ダ」
なるほど。体を作り替えることが出来るって訳か。
と、いうことは?
出来るのか?
俺は以前から心に秘めていた望みをリトルグレイに告げていた。
緊張からか、声が少し震える。
「お、俺を女に出来るのか?」
「オンナ……雌生体ノコトカ。簡単ダ。全身ノDNAヲ少シ書キ換エルダケダ」
あっさり答えるリトルグレイ。
こっちは一生かけても叶わない望みなんだぞ。
そんな俺の気持ちは知らず、奴は早速準備を始めていた。
「ソレナラ、べっどニ横ニナルトイイ」
「ああ、そうそう。ただ女になっただけじゃ駄目だ。16歳の女の子にしてくれ」
おっと、忘れる所だった。このまま女になっても、トウが立っている。
どうせなら、一番いい時期を体験しなくちゃ、損だ。
「16サイ?」
「そう。せっかくなるなら女子高生じゃないとな」
「ジョシコウセイ? ヨクワカラナイガ、生誕後16年経過シタ雌生体ダナ」
16歳の女の子って言い方は出来ないのかね。
まあいい。俺が女の子になれるんだから。



意識が遠くなっていくが、俺は気持ちよくそれに身を任せた。
やがて、世界が暗くなった。

どのくらい経ったのだろう。俺にはわからない。
目を覚ます俺。
あれ? 今度は手足が動……動かない。何かで固定されてるぞ。指は動く。
ベッドの上から覗き込むリトルグレイ。
やっぱり目覚めに見る顔じゃないよな……
「気ガツイタカ。成功シタ」
何で手足を固定するんだよ。
これじゃ、胸を触って「なんじゃこりゃ〜」って出来ないじゃないか。
情緒を理解しない奴だな。まあいい。まずは、お約束の鏡だ。
リトルグレイに言いつける。
「鏡……鏡は?」
おお、甲高くなった声。女の子だよ。女の子。
奴が機械を操作すると、俺の前に鏡が出現する。
さあ、いよいよ新しい俺、いやワタシとご対面だ。
手垢が付いているかも知れないが、用意しておいた例のセリフを口にする。
でも、そのセリフはごく自然に俺の口をついて出てきた。
「こ、これが俺?」
絶句する俺。そう、そこには女になった俺が映っていた。
確かに女。女性なんだが……
「おい、リトルグレイ」
「てぃず星人ダ」
「なんでもいい。なんだ、これは」
鏡に映った俺の姿は、80歳は行っているだろうかという老婆。
服から覗く手もシワシワだ。
「何の冗談だ。俺は16歳の女の子って言ったはずだぞ」
「間違イデモ何デモナイ。ワレワレノ暦デ16年経過シタ姿ダ」
しれっと答えるリトルグレイ。
そう言えば、確認しておくことを一つ忘れていた。
もう遅いだろうが、一応聞いてみた。
「あのさ、ティズ星の一年って……」
「一年ハ1827日ニ決マッテイルダロウ」
俺の頭の中は1827÷365×16を計算するまでもなく、今の髪の毛と同じく、真っ白になってしまった。



あとがき

 「おふび〜つ」のコンテンツ、「TSインタビュー」を見ていて、ふと思いついたUFO+宇宙人ネタです。でも、TSしてると言っても、これじゃ救いようがないですよね。勢いだけで書いたショートストーリーなので、お気楽にお読みください。

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