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魔法少女リーフ

第2話 父と子

作:優 様


 弥生さんが蔵の中に入ってきた。子供達もそれに遅れること約50m。ショートカットの似合う女の子と背の高い男の子が走ってくる。顔立ちは双子のため良く似ている。双子と言うのは、僕の子供の、樹と皐月である。

「お母さん待ってよ」

 皐月が息を切らせて走ってくる。

「母さんどうしたんだよ、いきなり『私の後についてくればわかるわ』と言って飛び出して行って」

 樹は皐月に合わせて走ってくる。

(親子二代そろってやることが全く一緒だよ)

 僕はもう苦笑するしかなかった。ようやく二人は蔵の中に入ってきた。

「来ればわかるからそう言ったのよ」

 弥生さんがそう言うと、

「一体何がわかるの?」

 皐月が、その言葉に反応するかのように言った。

「皐月姉ちゃん、お祖父さんと並んでる娘知ってるか?」

 樹は僕の存在に気付いたようだ。

「えっ、あの娘誰なの?私も知らないわよ」

 皐月が樹の質問に答える。

(わかるほうがすごいけど、そういわれると何か悲しい物があるな)

「あなた達が良く知っている人よ」

(確かに良く知ってるはずだけどね)

「弥生さん、和広さんと全く同じことやってない?」

「確かに、わしが弥生に教えたやり方とよく似てるな」

 僕と和広さんがそう言うと、弥生さんは、

「私がわかったから、子供達にもわかると思って、真似してるのだけど」

「確かに全部真似出来たらわかるかもしれないけど、それだったら、僕はまたあれを着なきゃならないよ」

 そう言うと、弥生さんは僕のほうを見て『しまった』という顔をした。弥生さんのときは僕が自分の服を着ていたため、それから僕の事を『和樹』だと認識してくれたのだ。今の僕は皐月の白いワンピースを着ている。

「あの娘が着ているのって、私のお気に入りのワンピースじゃないの」

 皐月は僕が着ているものが、自分の物であることに気付いたようだ。

「皐月のよ。ちょっと借りてるの。この娘に合ったものが無かったから」

 弥生さんは皐月に説明するように言う。

「後で返してよね、それ私のお気に入りなんだから」

 皐月は僕を睨みつけてそう言った。

(皐月・・・お父さんをそんな目で見ないでくれ)

「それにしても、可愛い子だね。その服、皐月姉さんより似合ってるよ」

 樹は僕を見つめるように見ている、何故か頬が少し赤くなっている。

(樹・・・間違ってもお父さんを恋愛の対象には取らないでくれ)

 そう樹が言うと、皐月は樹を睨みつけて、

「なんですって〜、樹もう一度言ってみなさい」

 お気に入りのワンピースが皐月より似合うの一言が、皐月の逆鱗に触れてしまったらしい。

「わ、ごめんなさい、皐月姉さん」

 皐月はものすごい剣幕で、樹に迫る。僕はやれやれといった感じで、

「喧嘩するほど仲がいいというけど、こっちの問題を片付けてからにして欲しいよ」

 と言うと、ため息をついた。

 皐月から逃げ回っている樹が積み上げてあったダンボールに、ぶつかったと思うと、積み上げられたダンボールは崩れ落ちた。

「うわっ」

 樹が叫ぶ、樹は崩れ落ちたダンボールの下敷きになってしまった

「「「「樹」」」」

 僕達は同時に叫ぶと、樹の上に乗っているダンボールをとり始めた。数分後、樹に圧し掛かったダンボールは取り除かれた。樹は気を失って、足の太ももの辺りから血を流していた。

「弥生、救急車だ急げ」

 和広さんが叫んだ。弥生さんは、頷くとすぐに蔵から出て行った。

「樹、樹」

 皐月はおろおろしている。

「皐月、何やってるんだ、包帯を取ってくるんだ」

「で、でも」

 皐月は困惑している。

「僕が血止めをする、このワンピースを使うけどいいな」

 僕は、皐月に一応許可を求めたが、皐月には聞こえなかったようだ。

「ワンピースの布より包帯のほうがいいんだ、早くしろ」

 僕はそう言うと、ワンピースの太ももにあたる部分を破り止血に当てた。

「わしが取りに行く、皐月はここで見守っていろ」

と言うと、和広さんは包帯や薬を取るために、蔵を出て行った。

「これでよしと」

 包帯を巻いた物の樹からおびただしい血が流れている。

「これじゃあ、樹が死んじゃうよ」

 皐月が弱々しい声で言う。

「そうだ」

 僕は指輪を見て思いついた。

(魔法を使えば、何とかなるかも)

 僕はそう考えると実行した。

「指輪に秘めし力よ、その力を我に示せ認められし主葉月が命ずる」

 そう言い終わると、指輪は光を放った。僕を光が包み込む、そして光が消えると魔法少女リーフとなるのだ。

「えっ、あ、貴女は何者なの?」

 皐月は驚いていた。

「わたくしの名前はリーフよ覚えね」

 僕は一応、自己紹介をしておく。

「リーフさん?」

「それより、樹君を何とかしないと」

 僕は魔法の詠唱をはじめた。

「この者にやすらぎを、ヒーリング」

 僕が魔法を唱えると、樹の傷が少しだけふさがった。が、焼け石に水の状態だった。まだ、おびただしい血が流れ出ている。

「これじゃあ駄目なの?」

 僕に焦りがで始めた。

(弱い魔法も繰り返せば何とかなるかも)

 僕はそう思うと治癒魔法を繰り返し樹にかけた。

「ヒーリング」

 これで、10回目となる治癒魔法をかけた。樹から流れ出る血は無くなった。、

「よかった・・・・」

 魔力を使いすぎたのか、僕はその場に崩れ落ちた。そして、視界はホワイトアウトした。

「ちょ、ちょっとどうしたのよ?しっかりして」

 皐月の声が聞こえたと思うと僕は気を失った。

 どれぐらい気絶していたんだろうか?僕は目を開けた。何か殺風景な部屋だった。

「ここは、何処ですの?」

(あれっ?僕はどうして女言葉で話してるんだ?)

 僕は少し混乱していた。目線を下に下ろすと、淡い黄緑色のドレスが目に入った。

(そうか、僕は女の子になったんだ、それに指輪をつけたままだから変身したままなんだな)

 それを見て僕はようやく自分の置かれた状況を理解した。

(ここは病院だな、それも二人用の部屋だ。ここで指輪を外すわけにはいかないな)

 となりには、誰も居ない空きベッドが見える。この場所で元に戻ると、厄介なことになりかねないからだ。もし元に戻ったら、別人の少女がここにいる事になる。それを説明しても、取り合ってはもらえないだろうから。

 かちゃ、ドアを開ける音がする。

「気がついたか」

 和広さんが中に入ってくる。

「和広さん・・・・」

 僕は和広さんに視線を移す。

「しかし驚いたよ、救急車を呼んだのはいいが、君と樹が倒れてるんだから」

「そうでしょうね、それと和広さんこの姿の時はリーフとお呼びください」

「リーフ?」

「はい、如月さんがそう名づけてくださいました」

「そうか・・・如月がそこまで書いてたのか」

 和広さんは、感心したように言う。

「それと、話の続きだが君と樹が救急車で運ばれたんだ。君は気を失っているだけだったけど樹は貧血で倒れるにしては、血液の配分がおかしいがすぐに良くなるだろうって言われたからほっとしたよ」

 和広さんが樹について説明してくれた。僕は胸をなでおろした。自分が気を失うほど、魔法を唱えたかいがあったのだから。

「樹君は何処にいるの?」

「君より先に気がついたから、精密検査を受けている。その後帰宅するそうだ」

「良かったですわ」

「君も、気が付けば退院しても言いそうだ」

「和広さんわたくしはどれぐらい気を失ってましたの?」

「2時間ぐらいだけど、それがどうかしたのか」

「少し気になりましたので」

(今、どれぐらい魔力が残っているんだろうか)

「リーフちゃん、気になってたんだが、どうしてそんな言葉使いになってるんだ?」

「変身の影響ですわ、変身している間は、わたくしが言おうと思っている言葉が、すべてこのような言葉に変換されますの」

(早く変身を解きたいな、この言葉使いは落ち着かないから)

「成る程な、如月もそうだったのだろうな」

「和広さん、早くここをでて変身を解きたいの」

「そうだな、そんな言葉遣いじゃ落ち着かないだろうからな、早くここを出るか」

 そう言うと、僕と和広さんは病室を出た。廊下を歩いていると、様々な人が僕を珍しい物でも見るかのような目で見ている。その視線で見つめられるのははっきり言って嫌だ。でもこの場所で(この場所でなくても)この格好では、目立つのは仕方ない。髪の色と目の色だけでも目立つのに、それにドレス姿だからこれで目立たなかったら不思議だ。

 僕は逃げるように、病院を出た。そして、少し歩いた場所で人がいないことを確認して、指輪を外す。
指輪から光が出て、元の姿に戻る。

「やっと元に戻れた」

「か、和樹君、その格好は・・・」

 和広さんが僕の服を指差して言う。

「あっ」
 僕は顔を真っ赤にした。着ているワンピースの太ももの辺りが、破れている(正確には破ったのだが)。変身しているときとは、別の意味で目立つ格好となっている。

「か、和広さんタクシー呼んでもらえます?」

「わ、わかった」

 そう言うと和広さんは、電話をするために病院に戻った。

(やっと戻ったのに、これじゃあ恥ずかしくて歩けないよ、え〜ん)

 僕はその場に座り込んで、ワンピースを破ったことを忘れてしまっていた自分を悔やんだ。その後、タクシーが来るまで、戻ってきた和広さんの後ろに隠れてたことは言うまでもない。

 タクシーが来て自宅に帰ると、僕は急いで家の中に入った。中には、皐月が居た。

「皐月、弥生さんと樹は?」

「まだ帰ってないわ、え〜と貴女の名前は?」

(そうか、変身した後の名前は教えたけど、今の姿の名前は教えてなかったな)

「僕の今の名前は葉月だよ」

「葉月さんありがとう、樹を助けてくれて」

 弥生は御礼を言ってきた。

(自分の娘に御礼を言われると、何かくすぐったいな)

 僕は照れ笑いをしていた。

「皐月にお礼を言われると何か変な感じがするよ」

「それどういう意味?それにどうして私の名前を知ってるの?」

 皐月は頭の上に?マークをつけていた。

「皐月も僕のことは知ってるはずだよ」

「えっ?私が葉月さんを知ってるの?」

 皐月の頭の上に?マークが追加された。

「葉月ちゃん、どうやって皐月に自分の事を説明するつもりだ? 皐月はだいぶ混乱しとるぞ」

 和広さんが苦笑して言う。

「とりあえず、弥生さんと樹が戻ってくるまでに、教えるつもりでしたけど、この様子じゃあ無理そうですね」

 僕も苦笑していた。

「お祖父さんはこの娘のこと知ってるの?」

 皐月は和広さんに問い掛けた。

「樹と弥生さんが帰ってきてから、ちゃんと教えるから今は、僕に他の着る物を持ってきてくれないか?」

 僕は顔を赤くして、自分の太ももの部分を指差す。

「それより、私の部屋に一緒に来てくれるほうが早いわ」

 皐月がそう言うと、僕は皐月の後についていった。皐月が自分の部屋のドアを開くと「中に入って」と言って、僕を部屋の中に入れてくれた。

「皐月の部屋に入るのは何年ぶりかな?」

 僕は呟くように言った。

「えっ、葉月さんは私の部屋に入ったことがあるの?」

 僕の呟きは皐月に聞こえたようだ。

「うん、かなり昔だけどね」

 僕は頷いた。

「かなり昔って・・・貴女は私と同じ年ぐらいに見えるんだけど」

「そうだね、そう見えるだろうね。僕は皐月と同じ学校に通うことになると思うよ」

「葉月さんが、私と同じ学校に通うの?」

「そう、皐月と同じ年としてね」

「同じクラスになれるといいね」

「そうだね、それより着替えを貸してもらえるかな?」

「あ、御免なさい、葉月さんはどれがいいかな?」

 皐月はクローゼットを開いて、僕に尋ねた。クローゼットの中には洋服が数着並んでいた。

「皐月が、僕に似合うと思う物なら何でもいいよ」

「そう、それなら、これなんかどう?」

 皐月は、緑色のサマードレスを出してきた。

「季節的にはちょっと早すぎる気がするけど、今日は暖かいからいいよね」

 といって、それを手渡してくれた。

「ごめんね、皐月のお気に入りをこんなにしてしまって・・・」

「いいのよ、あの場合なら仕方がないわ」

 皐月は首を横に振った。

「ありがとう、じゃあ着替えるね」

 僕はそう言うと着替え始めた。

(こういう服にはまだ抵抗を感じるけど、なれないといけないからね)

 僕はそう思いながら、着替えた。

「貴女スタイルいいわね、羨ましいわ」

 皐月が僕の身体への感想を漏らした。

(僕の正体が皐月の父親だと知ったら、どうなるかな?)

 僕は着替え終わると、感想を言った。

「ウエストが少し緩いんだけど」

 そう言うと、皐月の顔がこわばった。

「なんですって〜、もう一度言って見なさい、もう一度」

 皐月はそう言うと、僕の両頬を引っ張った。どうやら、皐月にとってそれは禁句だったようだ。

「ふぉめんあふぁい」

 僕は謝った。はたから見ると同じ年ぐらいの少女同士がじゃれ合っているように見えるが、心の中は父と娘である。和樹が本来の姿ならば、ものすごい光景になるだろう。

「謝ったから、許してあげるわ」

 皐月は僕の頬を引っ張るのをやめた。

「今度言ったら、これじゃあすまないわよ」

 皐月がきつい目線で言う。

「以後気をつけます」

 僕は両頬を押さえながらそう言った。

「それより貴女は、リーフさんの姿のときとだいぶ言葉使いが違うわね」

「あの姿のときは、そうなるんだ、僕の意思に関係なくね」

「どういうこと?」

「つまり、自分の事を『僕』って言おうとしても『わたくし』って言ってしまうんだ」

「そうなんだ」

 皐月は納得してくれたようだ。

「でも、貴女が『僕』って言うのは似合わないね」

「仕方ないよ、昨日までこんな身体ではなかったんだから」

 僕は視線を下げて言った。

「昨日までって?」

「それは、弥生さんたちが帰ってきてから話すよ、樹にも聞いてもらわないといけないからね」

「樹にも?」

「和広さんと弥生さんは僕の事を知ってるけど、皐月と樹は僕の事を知らないと言うだろうからね」

「貴女は私も知ってる人なの?」

「「ただいま」」

 弥生さんと樹の声がする。

「降りよう、さっきの質問の答えだけど、僕のことは皐月も樹も良く知ってるはずだよ」

 皐月は頭の上に?マークをつけたまま、僕の後に続いた。

「おかえり、弥生さん、樹」

 僕は二人に声をかける。

「ただいま、和樹さん」

 弥生さんが僕に挨拶すると、樹と皐月は目を丸くしていた。

「弥生さん樹には話してないの?」

 僕は尋ねてみた。

「和樹さんこそ、皐月に話してないの?」

「二人とも、話してないんだな」

 和広さんが言った。

「弥生さん、皐月と樹に話すか」

「そうね、言わないとフォローを引き受けてくれないでしょうね」

「「ど、どういうこと?」」

 樹と皐月はハモっていた。

「皐月に樹、誰か家族の中で見てない人がいるだろ?」

 和広さんが先陣を切って言う。

「「家族の中で見てない人?」」

 皐月と樹はすぐには思いつかないみたいだ。

(家の中での僕の存在ってそんな物なのか?)

「僕って、家の中では存在感無いんだ・・・」

 僕は床に向かって「の」の字を書き始めた。

「どーせ、どーせ僕なんか」

 僕はいじけていた。

「こらこら、和樹さんいじけないの」

 弥生さんが慰めるように言った。

「お母さんがこの娘を『和樹』と呼んでいるということは・・・・」

 皐月の顔が青ざめてきた。

「どうしたんだよ?皐月姉ちゃん、顔青いぜ」

 樹が皐月を気遣うように言う。

「皐月は気付いたようだな」

 和広さんは皐月の顔を見てそう言った。皐月は肩を震わせてこう言った。

「ま、まさか貴女はお父さんなの!?」

 皐月は叫ぶように言った。和広さんは無言で頷いた。

「えっ、あれが父さん?」

 樹も驚いている。まあ、そこまで変貌している父を見て驚かないほうがすごいけど。

「で、でもあの娘は自分で『葉月』と名乗ってたわよ」

 皐月はまだ信じられないようだ。まあ仕方ないだろう、昨日までの父が、今は同年代ぐらいの女の子で、しかも魔法少女なのだから。「信じろ」と言われても信じるのは難しいだろう。ただ、例外として和広さんは、変身する姿を両方見ているので、すぐに和樹のことを理解したのだが。

「それは、わしがそう名前をつけるように提案したからだ。あの姿で『和樹』はおかしいだろう?」

 和広さんは、僕が『葉月』と名乗る理由を説明した。

「「た、確かに」」

 二人は頷いた。

「でも、どうしてあんな姿をしてるの?」

 皐月がもっともな疑問を投げつけた。

「それはな・・・・・・」

 和広さんは今までの経緯を説明した。

「信じられない・・・あれがお父さんだなんて」

 皐月はまだいじけている僕に、視線を向けた。

「俺は、父さんに助けてもらったのか」

 樹も僕に視線を向けた。

「だから、私の部屋に入った時『皐月の部屋に入るのは何年ぶりかな?』何て言ってたのね」

「父さんが、皐月姉ちゃんより奇麗なんて・・・・・」

「樹、そんなこと言ったら皐月が怒るわよ」

 弥生さんが注意するが、遅かったようだ。

「いーづーきー」

 皐月たちはまた喧嘩をはじめた。喧嘩が終った後、子供達は僕のことを『和樹』だと認めたが、僕がいじけた状態から元に戻るまで、一時間かかった。




あとがき

妖精の話と平行して書いてると、感覚が狂ってくるような気がします。
今回はちょっと短いかもしれません(汗)
結局、魔法少女として活動できるんでしょうか?
次回は一話の冒頭部分にある、入学式一週間前まで時を
進めたいと思います(進むかわかりませんけど)
それでは第三話でお会いしましょう
第三話  女の子として(仮)


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