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らいか大作戦外伝
あたしらしく

〜前編〜

作:優 さん



ある日の明け方・・・
パカッ、シーリングカプセルが開く、
カプセルから不定形な物が飛び出しそれは人を形作る。
それは10歳位の女の子となる

「ふぅ〜、窮屈だった」
少女はそう言うと伸びをする。

「さてと、作戦を実行にうつさなきゃ」
少女は軽くあたりを見回すと、ベッドで気持ちよく寝ている自分とそっくりな少女が目に入る。
ここまで言うとわかると思うけど、あたしの名前はキャメル、
ここで寝ているのは戸増頼香ちゃん、あたしはこの人そっくりに作られたイーターで、
今日はちょっとした、計画を遂行するために、カプセルから出たの。
その計画は・・・内緒♪

「頼香ちゃんを起こさないように・・・」
あたしはしのび足で歩き、箪笥へ到達すると、その中から着替えを取り出す、
頼香ちゃんの服を着て、部屋のドアまで行くと、
きぃ、ドアを音が出ないようにゆっくりと開ける。
そして、廊下に出ると、

「頼香さんもうお目覚めですか?」
セミロングにメガネをかけエプロン姿の少女があたしに声をかける。
ビクッ、あたしは心臓が止まるかと思うほど驚いた。
『イーターに心臓があるのか』なんて突っ込まないでね。

「か、果穂ちゃん、ビックリさせないでよ」
そう言ってあたしはハッとする、自分本来の言葉遣いだったからね。

「ごめんなさい、そこまで驚かれるとは思ってませんでしたから」
果穂さんはあたしが驚いた事に考えが行ってしまい、
言葉遣いのことは気付いてないようだ。

「それで、果穂わた・・・いや、俺に何の用だ?」
あたしはまた間違えそうになり、慌てて言葉を直す。

「ただ、頼香さんが部屋から出てくるのが見えたので声をかけただけです」
果穂ちゃんのその言葉にホッとする。
そして、作戦遂行のために必要な物を果穂ちゃんに要求するために話をする。

「そうだ、果穂に聞きたいことがあるんだ」
あたしは頼香ちゃんの口調を真似て、果穂ちゃんに尋ねる。
「何でしょうか?」

「テラン人だけに効くクロロホルムみたいな物を持っているか?」

「はぁ、一応ありますけどそれをどうするんですか?」
果穂ちゃんはあたしを『どうしてそんなものを要求するんだろう?』
と言う風な目で見る。
ここは話をずらさないと・・・、と考え。

「やっぱり持っていたか、それを残らず俺に渡せ」
あたしは少し怒り口調で言う。
ここで、これぐらい強く言わないと、果穂ちゃんが簡単にそれを出すとは思えないしね。

「何に使うんですか?」
果穂ちゃんは頭の上に?マークをつけ、あたしに質問する。

「使う気は無いよ」
あたしが憮然と言う。

「では、どうしてそんなものを今頃になって要求するんですか?」
果穂ちゃんは?マークを一つ追加する。

「おまえがもっていると、くだらない事に使うかもしれないからな」

「くだらない事って?」
果歩ちゃんは首を傾げる。

「例えば、それを使って俺を眠らせ『頼香ちゃんの寝顔傑作集』と言う風なビデオを編集したり、
さんこうの機能を使って、果穂が設計した服の中で俺が着なかったものを、転送装着させて、
それをビデオにとって『頼香ちゃんコスプレ全集』と言うビデオを編集するとかだ」
あたしは以前学んだ果穂ちゃんの性格と趣味から想像して言ってみる。
それが当たっているのだろうかはわからないけど、果穂ちゃんの顔が青ざめている。

「そ、そんなことのために取り寄せたわけではないですよ」
果穂ちゃんは慌てて答える。
どうやら図星だったようだ。
頼香ちゃんはこんなことを考えている人と同居しているんだなと思うと、
少しかわいそうに思えた。

「図星のようだな」
あたしはもう一息でいけると思い、冷たい声で言う。

「ち、違いますって」
果穂ちゃんは否定するが、説得力はゼロである。

「じゃあ、何に使うつもりだったんだ?
それは、テラン人の俺以外に効き目は無いんだろう?」
あたしは冷笑を浮かべて果穂ちゃんを責める。

「え、え〜と・・・・」
果穂ちゃんは言い訳を必死で考えているようだ。
そこまでして、頼香ちゃんのビデオを取りたいのだろうか?
あたしは果穂ちゃんの性格を疑った。

「果穂・・・さっさと出しなさい」
あたしはぐずぐずしてる暇は無いので、早く出してもらうために、
果穂ちゃんを怒鳴る。
少し自分の口調に戻っているんだけど、果穂ちゃんは気付いてないみたい。

「はいっ」
果穂ちゃんはそう言うと、に自分の部屋へ、一目散に駆け込んでいった。
少しやりすぎたかな?あたしは心の中でそう思う、
果穂ちゃんがこんなことを考えている事を知ったら、頼香ちゃんはどんな反応を
示すかな?
あたしはそう思うと苦笑していた。
そして、果穂ちゃんの部屋へと歩いて行き、ドアを開ける。
部屋の中では、果穂ちゃんが何かごそごそしている。

「果穂、もしごまかしたら・・・わかっているんだろうな」
果穂ちゃんがごまかすのを防ぐために、そう言ってみる。

「そ、そんなことしないですよ」
そう言うと、果穂ちゃんは瓶詰めを出す。
その中には、星型をした固形状の物が入っている。

「これか・・・」
果穂ちゃんから瓶詰めを受け取る。
ちなみに果穂ちゃんは泣く泣く、これを出していた。
近いうちに実行する気があったようだ。

「あと、これはどのぐらい間効果があるんだ?」
あたしはこの効果を知らないため聞いてみる。

「それで全部ですから、聞かなくてもいいでしょう」
果穂ちゃんは少しやけ気味に言う。
そんなに撮りたかったのかな?頼香ちゃんのビデオ。

「いいや、果穂のことだからいつかまた取り寄せるはずだ。
そのときに意識の飛んだ時間を計算すればおまえが犯人だとわかるからな」

「うっ」
果穂ちゃんは言葉に詰まる、また取り寄せる気はあるのね。

「わかりましたよ、効果は一粒につき三時間です」
果穂ちゃんは、はき捨てるように言う。
このことで関係がまずくなったりしないよね。
あたしは少し心配になる。
しかし、作戦の遂行のため、気にしないようにしよう。
心の中でそう思った。

「今頃になってどうして・・・」
と果穂ちゃんはぶつぶつ言っていたが気にしないようにする。

「そうそう、今日は果穂の当番だろ、こんなところで文句言ってるけど、
朝ご飯のほうは大丈夫なのか?」
あたしは目的の物を手に入れると、そう言って果穂ちゃんの部屋を出る。
あたしの言葉の後に果穂ちゃんはすぐ部屋を出て、台所に直行する。
どうやら、何かやりっぱなしだったようだ。

「ふぅ、どうやらばれなかったみたい」
あたしは少しホッとする。

「でも、これからが肝心だから」
あたしはそう言って、気合を入れなおすため、両頬を叩く。

「それにしても頼香ちゃんの言葉遣いは慣れないわ」
そう、溜息混じりに呟くと、あたしも台所へと歩いていく。
台所の中を覗くと、果穂ちゃんが鍋をたわしでこすっていた。
おそらく鍋を焦げ付かせたのね。

「果穂大丈夫か?」
慰めの言葉を果穂ちゃんにかける。

「頼香さんのせいですよ」
果穂ちゃんはぷんぷん怒っている。

「元はと言えば、よからぬ事をたくらんでいた果穂が悪い」
あたしはビシッと指摘する。

「可愛い女の子を撮るのがどうしていけないんですか?」
果穂ちゃんは猛然と反論してくる。

「自分を撮ればいいだろ、果穂だって十分可愛いんだから」
あたしはそう言うと少し頬を赤らめてしまう。
他人を『かわいい』と誉めるのは何となく恥かしい。

「もう自分の物は撮ったから、頼香さんの物が欲しかったんです」
果穂ちゃんは言い切った。

「もう撮ってるって・・・・」
自分のはもう撮っているのね。
果穂ちゃんの言葉に苦笑してしまう。

「果穂ちゃん・・・・自分に正直なのはいいけど他人のことも考えてよ」
あたしは少し呆れ気味言う。

「だって、頼香さんは・・・・って果穂ちゃん?」
果穂ちゃんのその言葉に『しまった』と思い、あたしは慌ててしまう。

「と、とにかく、今度こんなことを考えていたら、果穂のビデオカメラ没収する
からな」
あたしはそう言って、カップにコーヒーを入れる。

「わかりました」
果穂ちゃんはシュンとしてしまった。
ビデオカメラを没収されるのがそんなに辛いのかな?
あたしは少し悪い事をしたのかな、と思いながら、
自分で注いだコーヒーを持って、台所を後にする。
頼香ちゃんの部屋へと歩きながら、その瓶詰めに記載された説明書を読む。

「えっと、『この薬はテラン人を安らかな眠りの世界へ導くための物で、
他の星の人には飲ませないで下さい、例プレラット人に飲ませると酔っ払います 』
成るほどそんな効果があるのね」
あたしは一人頷く。
その記載を見て、あたしはもけさんとからめるさんを思い浮かべ、
その二人が居る玄関の近くにある「もけとからめるのへやと書かれた小さな小屋
へと行く。
あたしが近くに来ると、もけさんが小屋から出てきて「頼香ちゃんどうちたんで
ちゅか?」
もけさんがあたしに話し掛ける。

「ああ、もけ、そこに居たのか、からめるはどうした?」
あたしは頼香ちゃんの口調で話をする。

「頼香どうしたんだ?こんなに朝早く尋ねてきて」
からめるさんが少し眠そうに、あたしを見る。
全くあたしが頼香ではないことに気付いていない。

「いや、これをやろうと思ってな」
と言って、頼香ちゃんの部屋から取ってきたひまわりの種を手のひらに出す。

「ありがとうでちゅ、頼香ちゃん」
と言ってもけさんがあたしの手のひらのひまわりの種を取ろうとする。
あたしはそれをさえぎり、
「もけ、今日はちょっと食べ方を変えてみないか?」と言って、
もけさんとからめるさんをじらしてみる。

「なんだい?新しい食べ方って?」
からめるさんがあたしに尋ねる。

「俺がひまわりの種を投げるから、それをキャッチして食べてくれ」
あたしは新しい食べ方?の説明をする。
ひまわりの種は10個ある、それを一ずつ投げる。
もけさんとからめるさんはあたしが投げるひまわりの種を追いかけキャッチして
食べる。
それに夢中になっている所に、さっきの薬をついでに投げてみる。
もけさんとからめるさんはひまわりの種だと思い、それを食べてしまう。
さてどうなるのかな?
あたしは少し様子を見てみると、もけさんとからめるさんが千鳥足になっている
事に気付く。

「あれっ、頼香が三人にみえるぞ」

「からめるしゃんは五人にみえまちゅよ」
もけさんとからめるさんは酔っている様ね。
あたしは薬の効果を確認する。

「いい気持ちでちゅ」
もけさんは千鳥足で、歩いているとからめるさんに飛び着くような形で転んでし
まった。

「何をするんだ。もけ」
からめるさんは、酔っていても正気を保っているようね。

「へけけ・・・からめるしゃん」
もけさんが不敵な笑いを浮かべる。

「ど、どうしたんだ?もけ」
からめるさんがもけさんの笑い方に驚く。

「好きでちゅよ〜」
もけさんがからめるさんに・・・・うわ〜見てられないよ。

「ら、頼香、僕たちになにを・・・・」
と言うからめるさんの声が聞えていたが、
あたしは手で目をふさいで、少し急ぎ気味に頼香ちゃんの部屋へ戻る。

「驚いた・・・こんなに効果があるなんて・・・」
あたしは頼香ちゃんの部屋に入り、小さく呟く。

「でも、これなら上手くいくわ」
あたしはそう言うと、机の上に持ってきたコーヒー置いて、
そのそばに置いてあるシャープペンシルを使い一筆書くと、瓶詰めから一粒薬を出す。
それをコーヒーの中に入れ、良くかき混ぜておいた。
ちなみに一筆書いた紙にはこう書いてある。
『頼香さんおはようございます、目覚ましにコーヒーを置いておきます、
眠そうな顔を祐樹さんに見られたら、嫌でしょう?   果穂より』

「よし、完璧ね」
あたしはやる事を終えたため、シーリングカプセルの中で様子を見ることにした 。
それから、30分後・・・・・・。

「う〜ん」
頼香ちゃんが目を覚ます。

「え〜と、時間は・・・・・」
頼香ちゃんはベッドにおいてある時計を見て「6時か・・・・そろそろ起きるか 」
と言って、伸びをして辺りを見回す。

「あれっ、昨日箪笥を開けたままにした覚えは無いぞ?」
頼香ちゃんは首を傾げて「ま、いいかどうせ使うんだから気にしないでおこう」
と、一人呟き、箪笥に歩いていく、その途中、机の方を見てコーヒーに気付く。

「ん、どうしてコーヒーがあるんだ?」
頼香ちゃんは再度首を傾げ、あたしが置いていた手紙を読む。

「果穂のやつ・・・気を使ってるのか・・いやもしかすると・・・」
頼香ちゃんは何かを疑っているようだ。

「ここは飲まない方が無難だろうな」
そ、そんな〜、せっかく苦労して薬を果穂ちゃんからもらって来たのに・・・・ 。
正確には奪ったと言うのだが、ここは突っ込まないでおこう。
あたしは頼香ちゃんの言葉に落胆する。
その後、頼香ちゃんは着替えを済まし、部屋を出て行った。
それを見届けるとあたしはカプセルからでて、ドアを開け、
忍び足で台所まで行き、こっそり頼香ちゃんたちの様子を覗く。
そして、台所を覗くと、朝ご飯を並べている果穂ちゃんと、頼香ちゃんの姿が見える。

「果穂、おはよう」
頼香ちゃんが果穂ちゃんにいつも通りの挨拶をすると、
果穂ちゃんはキッと、頼香ちゃんをにらみつける。
頼香ちゃんは果穂ちゃんが自分をにらみつけたことに首を傾げている。
果穂ちゃんが睨見つけた理由を、知っているだけにあたしは『悪い事をしたのかな?』
と、覗きながら罪悪感を感じる。

「果穂、俺が何かやったかのか?」
頼香ちゃんは果穂ちゃんに尋ねている。

「自分の胸に手を当てて考えればわかりますよ」
そう言われても、心当たりは無いでしょうね
あたしがやったことなんだから。
自分の心の中で突っ込む。

「さあ、早く朝食を済ませましょう」
果穂ちゃんは、少し怒り口調で言う。
不機嫌である事は誰の目から見ても明らかだ。

「ああ」
頼香ちゃんは果穂ちゃんの用意したご飯を『どうして果穂が怒っているんだろう』と言う風な表情で食べていると・・・・・コトッ、
頼香ちゃんの手から箸がおちる。

「か、果穂おまえ・・・」
頼香ちゃんはそれを言い切ることなく、テーブルに崩れ落ちる。

「頼香さんが悪いんですよ、あんな事・・・・・・・」
頼香ちゃんテーブルに伏せて寝息を立てているようだ。
果穂ちゃんの言葉にあたしは果穂ちゃんが一服盛ったことを確信する。
ただ、後の方の言葉が聞けなかったけど何を言ってたのかな?

「さてと、ビデオを撮りに行かないと」
果穂ちゃんがそう言って、台所からでようと、こちらに向かって歩いてくると、
あたしは、そばにある観葉植物の後ろに隠れ、果穂ちゃんが通り過ぎるのを待った。
がちゃ、果穂ちゃんの部屋のドアが開く、
果穂ちゃんが部屋に入るのを確認すると、あたしは台所に入り、
台所の椅子に腰掛けて眠っている少女・・・つまり頼香ちゃんを背負い、
果穂ちゃんが戻ってくる前に部屋へ連れて行こうとするが、
外見が全く同じ少女であるためかどうかはわからないけど、やはリ重いのだ。

「頼香ちゃん、重い・・・」
あたしは文句を言いながらも、頼香ちゃんの部屋へとたどり着く。
ドアを開け、部屋の中に入り、頼香ちゃんをベッドに寝かすと、
あたしは急いで、台所へ戻る。
そして、頼香ちゃんと同じポーズでテーブルに伏せる。
がちゃ、ドアの開く音が聞える。
おそらく、果穂ちゃんが頼香ちゃんを撮るための道具の準備が終ったでしょうね 。
あたしは果穂ちゃんの足音から、果穂ちゃんの位置を判断し、
台所に入ったと思うところで、ガバッと起き上がり、振り向く。
あたしの行動を見た果歩ちゃんは普通の人が幽霊を見た驚きを、
3乗したぐらい驚いた表情をしていた。

「果穂・・・・よくも一服盛ってくれたな」
あたしは物凄い形相で、果穂ちゃんに迫る。
盛られたのは、本物の頼香ちゃんだけどね。

「ら、ら、ら、頼香さん!!?」

「覚悟はできてるんだろうな、果穂」
あたしはドスをきかした声(のつもり)で言う。

「ど、どうして・・・・・」
果穂ちゃんはあたしがどうして起きているのか疑問に思っているようね。

「果穂の事だからな、俺に全てを差し出した振りをして、油断したところをねらうだろうと、
予想はしていたんだ」
あたしは心の中で笑い転げていた。
だって、果穂ちゃんのあんな表情が見られるなんて滅多にないことだから。

「で、ではあれは薬が効いた振りをしていたんですか?」
果穂ちゃんは疑問をぶつける。

「ああ、迫真の演技だったろ?」
あたしは得意げに言う。
演技じゃなくて本当は薬が効いてるけどね、頼香ちゃんが・・・だけど。

「で、でも、薬は飲んでいるはず・・・」
果穂ちゃんは必死になって言う。

「もけに頼んで転送してもらったんだ、あの薬の予防薬をな」
あたしはそういって、もけさんは今どうしてるだろう?と考える。
へべれけ状態のもけさんがからめるさんに愛の告白?をしているところを思い浮かべる。
・・・・やめよう、あの後のことを考えてはいけない、そんな気がした。

「な、なるほど」
果穂ちゃんは納得したようね。

「そ、それでは、学校に行きましょう」
果穂ちゃんは、ビデオカメラを持って、台所を出ようとする。
あたしは逃げようとする果穂ちゃんの肩をつかんで、

「ごまかそうとしてもそうはいかないぞ」
あたしはにっこりと笑って、果穂ちゃんを引き留める。

「ら、頼香さん怖いですよ・・・・」
果穂ちゃんは怯えているみたいだ。

「約束通り、ビデオカメラを取り上げるからな」
そういってあたしは果穂ちゃんが持っているビデオカメラを奪いとる。

「頼香さん、それだけは・・・・」
果穂ちゃんはあたしが取ったビデオカメラをじっと見つめて言う。
ちょっとかわいそうだけど自業自得ね。
あたしはそう割り切った。

「忠告を聞かなかった罰だ」
といって、頼香ちゃんの部屋へ行き、部屋の中に置いてすぐ戻ってくる。
ちなみに果穂ちゃんはビデオを取り挙げられたためか、
呆然とその場に立ち尽くしていた。

「果穂、おまえの罰はまだ終わってないぞ」
あたしがそういうと、果穂ちゃんは過剰に反応し、
「ら、頼香さん罰ってまだあるんですか?」
果穂ちゃんはあたしの言葉に正気を取り戻す。
ただ、ビデオカメラを取り上げられたショックは大きいみたい。

「ああ、果穂がもうこんな事を思いつかないようにしないとな」
あたしは手をぽきぽき鳴らしながら、果穂ちゃんに迫る。

「ら、頼香さん、もうしませんから許してください」
果穂ちゃんは懇願するように言う。

「問答無用」
そういって、あたしは果穂ちゃんの脇などをくすぐり出す。
本物の頼香ちゃんもこれぐらいのことはするよね。
あたしはそう思い、果穂ちゃんをくすぐり続ける。
2DKのマンションに果穂ちゃんの笑い声(あるいは悲鳴)が響き渡る。
マンションが防音設備であるかどうかは知らないけど、
苦情の電話が来なければ大丈夫よね。
それが続くこと数分、チャイムがなる。

「だれかな?」
あたしはふと疑問に感じくすぐりをやめる。

「き、きっとゆーきさんですよ、早く出てあげた方がいいですよ」
果穂ちゃんは難を逃れるためか、玄関に行くことをあたしに勧める。

「今日はこれで勘弁してやる、だが・・・・今度やったら・・」
一応最後に果穂ちゃんへ脅しをかけておく。

「・・・わかりました」
果穂ちゃんは元気なく承諾する。
くすぐりの刑による疲労が大きいのかな。
あたしは玄関に行くと、深呼吸をした。
そして「どちら様ですか?」と、質問する。
まあ、こんな時間に来る人は祐樹さんしかいないよね。
『祐樹だけど、開けてくれるかな?』
祐樹さんがドア越しに言う。

「ゆーきか、いまあけるよ」
玄関を開けると、大学生の男の人が立っていた。
この人は頼香ちゃんの恋人(だと思う)の祐樹さん、
頼香ちゃんになりすましたあたしをいち早く見破った人。

「おはよう」
祐樹さんがあたしに挨拶をする。

「ああ、ゆーきおはよう」
あたしも挨拶を返す。
祐樹さんはにっこり笑って、

「頼香はどうしたんだい?キャメルちゃん」
もうばれてる?

「ななな、何を言ってるんだゆーき、俺は頼香だぞ」
一応ごまかそうとするものの、焦っているので余計怪しまれるような物になっている。
しかし、本人はごまかすのに必死だ。

「キャメルちゃん、普通通りに話していいよ」
祐樹さんは笑顔のままでそう言ってくれる。

「祐樹さんはやっぱりごまかせませんね」
あたしは普段通りの口調に戻す。

「ところで、頼香はどうしてるのかな?」
祐樹さんはあたしに尋ねる。

「それは・・・・・・」
あたしは覚悟を決め、今までの経緯を裕樹さんに説明する。

「なるほどね、間接的にしろ、キャメルちゃんが頼香を眠らせちゃったわけだ」
祐樹さんは納得したような表情を見せる。

「それで、キャメルちゃんは頼香を眠らせて何をしたかったんだい?」
祐樹さんは優しく尋ねる。

「あたしは・・・学校へ行ってみたかったの、頼香ちゃん達は帰ってくると、
学校での事を楽しそうに話してたから」
あたしは今日の作戦の目的を洗いざらい裕樹さんに話した。
それを祐樹さんはまじめに聞いてくれた。

「成る程ね、でもそれなら頼香に直接頼んでも良かったんじゃないのかな?」
祐樹さんのその言葉にあたしはハッとする。
その手があったんだ・・・・・。
今頃になって気づくあたし。
そして、自分の表情が暗くなるのがわかる。

「まあ、いい機会だから今日はキャメルちゃんが頼香の代わりに学校に行ってみればいいんじゃないかな?」
祐樹さんはあたしに優しい言葉をかけてくれる。

「はいっ」
あたしは元気良く返事をした。

「学校では自分らしく振る舞ってみるといいよ、無理して頼香のまねをしても、
学校を楽しめないだろうからね」

「あたしらしくですか?」

「そう、キャメルちゃんは頼香にそっくりなだけで、
頼香とは違った個性を持っているからね、自分らしくするといいよ」
裕樹さんは少し疑問そうに見つめていたあたしに優しく微笑みかけてくれる。

「祐樹さんは優しいですね」
ただのイーターであるあたしは、優しくされたことがなかったから嬉しかった。

「そうかな?」
祐樹さんは照れ笑いをする。

「ありがとうございます。
裕樹さんのお言葉に甘えて、あたしらしくしてみます」
あたしはぺこりとお辞儀をして祐樹さんにお礼を言う。

「じゃあ、中に入ろうか僕もお腹がすいたしね」
祐樹さんがそういうと、あたしも中に入る。
台所に行くと、果穂ちゃんが寝そべっていた。
くすぐりの刑の疲労のせいかな。

「果穂ちゃん、祐樹さんの前で寝ているなんて失礼よ」

「頼香さんのせいですよ・・・・」
果穂ちゃんは小さくつぶやく。
まだ体力が回復していないのね。
だから、あたしの言葉遣いが変わっていることに気づいていないみたい。

「元はといえば果穂ちゃんが悪いんでしょ」
あたしはそういうと、朝ご飯をよそって、祐樹さんの座っている席の前に置く。

「ありがとう」
祐樹さんはあたしにお礼を言う。

「今日は祐樹さんの予定は?」
あたしは頼香ちゃんが質問しそうなことを言ってみる。

「ご飯を食べたら大学の方に行くよ」
祐樹さんは気を遣っているのか、頼香ちゃんに接するように接してくれる。

「そうですか、では、途中まで一緒に行かない?」
あたしは祐樹さんを誘ってみる。

「頼香さん・・・言葉遣いが・・・」
果穂ちゃんはあたしを指さして言う。

「頼香、ちゃんと言わないとだめだよ、今日は女の子らしい喋り方で通すって言った事、
果穂さんにちゃんと伝えておかないと」

「ごめんゆーき」
あたしはぺろっと舌を出し苦笑する。
祐樹さんが果穂ちゃんに説明する。

「ほら、やっぱり無理だろう?頼香が女の子の言葉を話すのはね」
祐樹さんはわざとあたしを挑発する言葉を使う。

「そんなことはないぞ、じゃなくてないわよ」
あたしはわざと間違えてみる。

「そういうわけだったんですか」
果穂ちゃんは納得してくれたみたい
多分頼香ちゃんなら誘うと思ったからね。

「頼香の申し出は嬉しいけど、時間の方は大丈夫かな?」
祐樹さんは時計を見て、あたし達に言う。
時間を見ると時計は8時20分、よくわからないけど、
いつもなら出ている時間なのかな?
あたしはわからないけど、果穂ちゃんが時計を見て驚いていたのを見ると、
どうやら、時間的にやばいみたい。

「頼香さん急ぎましょう、このままでは遅刻ですよ」
果穂ちゃんはふらふらと立ち上がり、台所から出ていった。

「じゃあ、制服にあたしも着替えてくるね」
あたしは祐樹さんを台所に残し、頼香ちゃんの部屋へと入っていく。
中にはいると、ベッドの上で天使の寝顔の頼香ちゃんが「スースー」と寝息を立
てながら気持ちよさそうに眠っている。
あたしは悪いと思いながら、頼香ちゃんの制服を着て、頼香ちゃんが何時も持っ
ていくランドセルをしょって部屋を出ると、
果穂ちゃんが「頼香さん遅いですよ」と、玄関のほうからあたしに声をかける。

「ごめんなさい、今行きます」
あたしは急いで玄関行き、頼香ちゃんの靴を履くと、
果穂ちゃんと一緒に玄関から出る。

「「行ってきます」」
あたし達は中に居る祐樹さんに向かって言う。

「ああ、行ってらっしゃい」
ご飯を食べ終えた祐樹さんが笑顔で見送ってくれた。
あたし達は祐樹さんが見えなくなるのを確認すると、走り出した。

「果穂ちゃん急がないと遅刻しちゃうよ」
あたしはゆっくりとしか走れない果穂ちゃんをせかす。

「頼香さん待って下さい、私は貴女みたいに速く走れないんですから」
果穂ちゃんはもう息が上がっているみたい。
もしかして、あたしのくすぐりの影響まだ残ってるのかな?

「でも、速く行かないと本当に遅刻するよ」
あたしは再度、果穂ちゃんをせかす。
あたしにとって、学校にいけるのは今日だけかもしれないから速く行きたいのだ
けど、
今のあたしは頼香ちゃんとして、学校に行くのだからそれはいえない。
あたしは少しの間考えて、果穂ちゃんを急がせるための方法を思いつく。

「来栖ちゃんが待っているよ」
あたしは思いついたそれを実行する。

「はぁはぁ、そうですね来栖さんに迷惑をかけるわけにはいきませんね、
頼香さん先に行ってください。私は後で行きますから」
果穂ちゃんはそう言うと、小走りからをやめ、ゆっくり歩き出す。

「わかった」
そう果穂ちゃんに言い残すと、あたしは公園に向かってまた走り出した。
何故公園に急ぐのかと言うと、その公園が来栖ちゃんとの待ち合わせ場所だからね。
公園の場所は大体わかる、もし通り過ぎることがあっても、
来栖ちゃんが止めてくれるよね。
あたしはそう思いながら、走っていると・・・・。

「頼香ちゃん遅いよ」
来栖ちゃんに声をかけられた。

「ごめんなさい、来栖ちゃん朝ちょっとごたごたがあってね」
あたしは遅れた言い訳をする。
そもそも、ごたごたを起こしたのはあたしなんだけどね。

「来栖ちゃん?」
あたしの言葉に来栖ちゃんは首を傾げる。

「あまり気にしないでくれ、実はゆーきとちょっと賭けをして、
俺が一日女の子の話す言葉で過ごせれば『スイートリーフ』のケーキをご馳走してくれるって、
ことになったんだ、だから今日は言葉遣いが変わるけど、気にするなよ」
あたしはもっともらしい言い訳をする。

「頼香ちゃんって意外と現金なのね、それに今の言葉でそれを不意にしちゃったんじゃないの?」
来栖ちゃんは痛いところを突く言い方をする。
ただし、それが本当ならね。

「いいの、祐樹さんに来栖ちゃんが言わなければね」
あたしは来栖ちゃんに圧力?をかける。

「わたしにもケーキを分けてくれるなら黙っててあげるよ」
来栖ちゃんはニコッと笑って、黙る条件を出す。
来栖ちゃん・・・貴女の方が現金じゃないの?
と言う言葉を出しかけて飲み込む。
ここで長い時間議論している暇は無いのだから。

「頼香ちゃん、果穂ちゃんは一緒じゃないの?」
来栖ちゃんが頼香ちゃんと常に(そこまでかどうかはわからないけど)一緒の果
穂ちゃんがどうして居ないのか疑問に思っているよう
だ。

「果穂ちゃんならあそこに」
あたしはかなり遠くに見える点ぐらいの大きさに見えるものを指差す。

「あれが果穂ちゃん?」
来栖ちゃんはあたしが指した先を見るが、おそらく果穂ちゃんと判別することは無理でしょうね。
だって、あたしにも判別できないからね♪

「そうだよ、それで『来栖さんと先に行ってください』って言ってたよ」
あたしは果穂ちゃんからの伝言を来栖ちゃんに伝える。
ちなみに点となっている果穂ちゃんは少しづつ近付いている。

「頼香ちゃんはどうする気なの?」
来栖ちゃんはあたしに尋ねる。

「う〜ん、果穂ちゃんの言う通り遅刻しないように急いだ方がいいと思う」
あたしは早く学校に行きたいため、来栖ちゃんに自分つまりキャメルとしての意見を述べる。
ここで頼香ちゃんなら『果穂が来るまで待とう』と言うかもしれないけどね。

「来栖ちゃんはどうなの?」
あたしは来栖ちゃんに尋ねてみる。

「果穂ちゃんに言うとおり、遅刻しないように先に行こう」
来栖ちゃんはどこか迷っている様に見えたが、
遅刻はしたくないと割り切ったみたい。

「そうと決まれば・・・・」

「うん・・・・」
あたしの言葉に来栖ちゃんがうなずくと、
二人一緒に学校へ全力疾走となった。
5分後・・・・・何とか予鈴がなる前に二人は学校に駆け込むことができた。

「はぁはぁ、なんとか間に合ったね」
来栖ちゃんが息を切らしてあたしに言う。

「はぁはぁ、そうね」
あたしは来栖ちゃんの言葉に頷く。
ガラッ教室のドアを開けると、
キーンコーンカーンコーン始業のベルが鳴る。

「戸増さん、雲雀さん、ギリギリセーフね」
先生と思われる人のその言葉にホッとし、。

「「よかった〜」」
あたしと来栖ちゃんは安堵する。
そして、あたしの初めての学校生活が始まる。




後書き

かわねぎさんと話していて盛り上がって、私が書く事になってしまった(笑)
最初は、キャメルではなく来栖ちゃんに焦点を当てた物を書くつもりだったんですけどね。
結局十万ヒットまでに完成することができませんでした(汗)
後編、あるいは中編も速く書くつもりです。
まあ、いつになるかはわかりませんけど、来栖ちゃんのお話もかわねぎさんに許可を頂いて書くつもりです。

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