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MAID IN STRANGE


地駆鴉


世界観表示CG

この作品はシェアワールド「らいか大作戦」の一部である
【 MOE-DOLL根幹設定】並びに『DOLL王国と惑星連合との同盟』を最終的に予定されているされている、
【若葉のDOLL 萌ゆる戦乙女】を根幹作品とする

【若葉ワールド】

を前提として書かれた作品です。
DOLLについてより詳しくはこちら
大本である【らいか大作戦】は、
こちらを 参照してください。


<!! 注 !!> この物語に出てくるDOLLはDOLL設定に準じてはおりますが、本来のDOLLとは異なります
 この物語は滅茶苦茶です。DOLL本編とは別物です。御了承ください。


 Huge Man Type Intellectual Machine.
 通称、HMTIM。巨大人型知的機械。
 オレたちが住む辺境の惑星に存在する……敵だ。
 ヤツらはオレたちの町にある鉱山から産出するレアメタルを狙って襲ってくる。当然、オレたちは必死の反抗をして、ヤツらの侵略を食い止めている。
 ヤツらが誰に作られたのか。ヤツらがなぜレアメタルを狙ってくるのか。どちらもわからない。……というか、なんでオレたちが必死になってレアメタルを守らなきゃいけないのかもわからない。だって鉱山なんかとっくの昔に閉鎖されてるし、レアメタルだってほとんど取り尽くしてて、出て来るのは鉄クズ並みに価値の無い残りクズなのに……まあ、どっちにしろヤツらは町も壊そうとしてきてるし、それは守らなきゃいけないんだけど。
 と言う訳でなんかよくわからないけど、お互い引っ込みがつかなくなって戦闘が続いてる。
 オレことハザクラは町を守る防衛軍のリーダーをしていた。もちろん立派な男で、二十歳の好青年だ。彼女はいなかった。しかしそれは昔の事。今は……なぜか見た目十三歳ぐらいのメイド長髪美少女だ。彼氏はいない。しかも防衛軍の最終兵器として、町を守っている。
 なぜ……なぜそんな事になったか。それは……。

 あの日、防衛軍全員で山へピクニックに行った時の事だった。
 山の緑と空気がすがすがしい中、皆で酒盛りなんかをしていた。
「おーい、ハザクラ。オカザキがいねぇぞ。おめぇ探して来い」
 防衛軍の兵器とかを整備しているメカオタクのコジマさんにそう言われて、オレはオカザキという同僚を探しに行く事になった。
「お酒、残しててくださいよ。まだ飲んでないんですから」
「甘い甘い。いつまでも、あると思うな大吟醸。名酒コロボックルは全てオレの腹の中に収めさせてもらう」
「ちぇっ」
 意地の悪い事を言うコジマさんに舌打ちしてから、オレは森の中に入った。
 かなり探したけど、オレはオカザキを見つけられなかった。でもオカザキは用を足していただけで、すぐに見つかっていたらしい。それはあとになって知った事だ。
 そしてオレはオカザキを探していて、見つけてしまった。見た目は十歳ぐらいだろうか。メイドの格好をした、ショートカットの美少女だ。
 こんなところにこんな格好をした女の子がいるわけない。オレはそう思ったが、目の前には確かにその子がいる。迷子かと思って声をかけた。
「君……こんなところで何してんの?」
「えっ……あ!」
 女の子はこっちに気付いて驚いたような顔をすると、遠慮がちに……でもいきなり抱きついてきた。
「うわっ! ちょ、ちょっと何すんだよ!」
「ご、ごめんなさい……あ、あの、わ、我々はDOLL。お、お前たちを同化する。抵抗は……あ、あの、無意味なんです」
 その女の子はひたすらどもりながらそう言ったあと、突然キスをしてきた。これには本当にびっくりした。しかもなんか、口の中に何かが入ってくるような感覚。目を白黒させてると体全体が熱くなって、いつの間にか気を失っていた。

 目を覚ましたのは夜。その時にオレの体はメイドの美少女になっていた。心臓が止まるかと思うぐらいびっくりして、そのあと一時間は呆然としていた。
 でもどうしようもなくて、防衛軍本部へ戻る事にした。山を下りて、町へと戻った。
 いつもより視点が低いと感じながら、防衛軍本部アパートにたどりついた。DOLLに同化された事よりも、この時にここに戻った事が一番の不幸だったのかもしれない。
 中へ入ると、洗面所の前で歯を磨いているオカザキに会った。
「我々はDOLL。お前たちを同化する。抵抗は無意味だ」
 挨拶よりも先に、なぜかそんな言葉が出た。そう、オレはDOLL。仲間を増やさなければならない……はずだった。
「あ、あーあーあーあー。DOLLかあ」
 オカザキがポンと手を打った。
「あ、あの……」
 さっきはすんなり言葉が出たのに、なぜかその時はどもってしまった。なんとなく、話すのが怖いというかなんというか……そういう気持ちになっていた。たぶんDOLLにされたオレの人格は、山で会ったあの女の子と同じような「大人しい」とか「引っこみ思案」とか「怖がり」とか、そんなふうになっていたんだと思う。
「あの……同化……」
「あ、ああ。ちょっと待った。DOLLって確か、ロボットだったよな。少しそこで待ってて、すぐ戻るから。コジマさーん!」
 オカザキにそんな事を言われて、人格がメイドタイプなオレは素直に待ってしまった。そしてすぐに、オカザキはメガネをかけた四十代の男を連れて戻ってきた。しかしその時オレは思い出してしまった。コジマさんは大のメカ好きで、はじめて見た機械は必ず分解しようとする事を……。
「おお、これがDOLLか! 人型ロボットだよな……くーっ! 人型ロボットったら、男の夢だぜ!」
 コジマさんの目がランランと輝いてオレを見ていた。
「え、えーと……あ、あの、ご、ごめんなさい。お、お邪魔しました」
 なぜか背筋がゾッとして命以上の危機を感じたオレは、振り向いて外へ逃げようとした……が。
「待ーった。このコジマ様の目の前に人型ロボットが来て、無事ですむと思うなよ……」
 肩をつかまれて、振り返れば、そこには恍惚とした笑みを浮かべるコジマさんの顔があった。貞操以上の危機を感じたオレは逃げようと思って駆け出したが、瞬間、背中から押し倒されてしまった。
「キャー! イヤぁー!」
「ジェネレータの奥の奥まで分解してくれる!」
 抵抗もむなしく、オレはあっと言う間に、DOLL装甲という全身をおおう装甲をはがされてしまった。すると突然、コジマさんがすっとんきょうな声を上げた。
「なんだこりゃ!? 装甲の下は普通の人間か!?」
 オレはDOLLの事をよく知らない。でもあとでコジマさんに聞いた話によると、DOLLは外に着ている装甲の他はほとんど普通の人間と変わりないらしい。
 その時はそんな事、よくは知らなかったけど、どうやらオレに対するコジマさんの興味が無くなったらしいというのはわかった。コジマさんは純粋にメカ好きなだけで、機械以外の物には大して興味を持たない。
 背中からコジマさんの重みがなくなって、オレはホッとした。
「こらオカザキ! どこが人型ロボットだ! 単なるパワードスーツ着た女の子じゃないか!?」
「え、そうなんですか? そうか……じゃあ普通の女の子なんですね。普通の……女の子。生身の……生……」
「……ひっく。うう……ひどいよう……もうお嫁に行けないよう……」
 コジマさんがオカザキに詰め寄っている横で、立ち上がったオレは押し倒されたショックで泣いてしまっていた。
 そんなオレにオカザキがスススッと近付いてきて、頭をなでてきた。
「そんなに泣かないで。いや、泣きたいだけ泣けばいいさ。泣いてるとこもかわいいし」
「うえ〜ん……ふにゃ〜うう……ふええ……」
 今、思えば、死ぬほど恥ずかしいけど、その時は頭の上に置かれたオカザキの手に安心して、気がすむまで泣いていた。
 十分もそうしていたら、いきなりコジマさんがオレの肩をつかんで床に押し倒してきた。
「あっ! な、なに!? や、やめて……やめてください!」
「コジマさん! いきなり何を!? どうせなら最初に自分にやらせてくださいよ!」
 驚いたオカザキが、コジマさんの肩をつかんで聞いていた。この時のオカザキが何をさせてくれと言っていたのか、いまだに謎だ。
「馬鹿野郎、そんなんじゃねえ! ちょっとコイツのナノマシンをいじってやろうと思ったんだよ」
「ナノマシン? そんなの持ってるんですか、そのコ?」
「ああ、オレのカンだ。コイツからはナノマシンの気配がする!」
 コジマさんは自信たっぷりに言い放った。
 オレは恐怖した。その名の通りナノサイズとは言え、ナノマシンも立派なメカだ。コジマさんはそれに興味を持ってしまっていた。
「やめて、やめて、やめてください! お願いです! もうこれ以上……」
「うるさいわい。ちょっと黙っとれ! よし、耳を借りるぞ」
「ナノマシンをいじるって、どうやんです?」
「こうやんだ……」
 生身になってもここだけは機械のままになってるオレの耳をつかんで口を近づけると、コジマさんは大きく息を吸いこんだ。そしてすぐに大音響と共に息を吐き出した。
「おいこらあ! DOLLのナノマシン! 聞こえてんだろが! すぐに出てこい!」
「そんな……そんなので、出てくるはずないです……。――んうっ!?」
 耳元で叫ばれて頭をクワンクワンさせてると、オレの口の中から、水のようにナノマシンたちが出てきた。ちょっと、気持ち悪かった。
「な……!? コジマさん、どうやったんです、これ? どうやってナノマシンを操ったんですか?」
「気合だ」
 オカザキの問いに、コジマさんはキッパリと答えた。
「熱き血潮を持つメカニックの気合! これこそ、全てのメカを操る力の元となるのだ!」
 スパナをグッと握り締めて、コジマさんは熱く語った。気合だけでどうにかなるもんでもないと思うけど、実際にどうにかしちゃったんだから、コジマさんは変態だ。
「よーし、じゃあナノマシンども。オレの言う通りに働いてもらうぞ。……誰かは知らんが、どうせDOLLになったんなら好きにしてもいいだろう……」
「い、いや……もういやです! もう……許して……」
 コジマさんの不吉な言葉にオレは泣いて懇願したけど、許してはくれなかった。
「オレはメカニック〜。おまえを改造する〜。抵抗は無意味だ〜」
 鼻歌を歌いながら、そりゃもう楽しそうにナノマシンの働き振りを見守るコジマさん。
 その時にオレはサイボーグにされて、その上、DOLLとしてのプログラムまで書き換えられてしまった。
 その後にハザクラだって事を説明した時には、皆に爆笑された。人が美少女にされた事が……そんなに面白いか。



「あーあー、ただいまマイクのテスト中。あーあー……よし。えー、防衛軍の皆様、本日もお日柄が良く、絶好の戦闘日和です。毎度おなじみHMTIMです。投降するかたは今から白旗を、抵抗するかたは武器を持っておいでください。今から三十分後に攻撃を開始します。繰り返します……」
 今日もHMTIMの部隊が攻撃にやってきました。アパートの窓から外を見ると、二十メートルぐらいの大きな人型ロボットがメガホンを持って、何か喋っていらっしゃいます。
「人に優しく健全な侵略を心がける、HMTIM、HMTIMです。エイチエムティー……では読みにくい、というかたは、ヒムティムとお呼びください。HMTIM、ヒムティムです。一般市民のかたにはご迷惑おかけしますが、なにぶんにも侵略活動ですので、なにとぞご理解頂けるようお願い致します」
「ほわあ……恐いですね。おっきくて、強そうで……凄いなあ……」
「おいこら、ハザクラ。まだ終わってないだろうが」
「あ……ご、ごめんなさい。御主人様」
 肩叩きを途中でやめて外を見ていたので、御主人様に怒られちゃいました。あ、御主人様はコジマ様です。
 あ、それと、私の言葉づかいですけど、DOLLの人格プログラムを御主人様が改造して、遠隔操作で今の私みたいな「忠実なメイド」人格のオンオフをできるようにしたんです。
 本当は私、今みたいな言葉づかいはイヤなんですけど……つい、こうなっちゃうんです。
「ご、御主人様……そ、そろそろあの……オフに……」
「ん? ああ、そうだな。じゃあそろそろオフにしてやるか」
 御主人さまがポケットからテレビのリモコンみたいな物を取り出して操作をしました。その瞬間、メイド人格がオフになったオレはコジマさんに思いっきり殴りかかった。
「このっ!」
「おっとどっこい」
 しかしすんでのところであっさりかわされてしまった。けど、もう一撃!
「たあっ!」
「なんとどっこい」
 また簡単にかわされてしまった。でもまだあきらめない。大振りでもう一撃!
「でやあっ!」
「よっとどっこい」
 またまた、すんなりかわされてしまった。もう一撃……と思ったけど、大振りの一撃をかわされてしまったせいで、オレはバランスを崩して前のめりにコケてしまった。
「わ、わあっ!?」
 ドシン、と派手に床へ倒れる。ちょっと鼻が痛かったけど、他は大して痛くなかった。胸が大きかったら痛かっただろうけど……。
「はしたないぞ」
「え? ――あ!」
 コジマさんに言われて、すぐに気づいた。コケた時にメイド服のスカートがまくれあがって、下着が見える状態になっていた。
 オレは慌てて起き上がって、女の子座りをしてしまいながらスカートを押さえた。顔が赤くなってるのが……自分でわかる。
 コジマさんが「ふっ」と鼻で笑った。
「おまえの行動パターンなんぞお見通しじゃい。まーったく、いつもいつもおんなじ事ばっかりしてきよって」
「アンタがこんな改造するからだろ! ナノマシンを使ってどうにでもできるんなら、男に戻してくれてもいいだろ!?」
「男に戻すって言ったら、オカザキが猛反対してな……。まあとにかくそう興奮するな。暑いからスイカでも切ってくれんか?」
「話をそらすな! スイカなんかどうでも…………は、はい。わかりました、御主人様。く、くう……」
 スイッチを入れられた私は、またメイド人格に戻ってしまいました。悔しいけど、御主人様には逆らえません。
「冷蔵庫の中に熊本産のスイカがあるからな。頼んだぞ」
「な、なんでこんな星に地球の熊本産のスイカが、あるんですか……?」
「いらん事を気にせんでいい……。いいから、メイドはさっさと言う事を聞く。まったく……今年の夏も暑くてたまらんわい」
「クーラーがあるんじゃないですか……?」
「あれはオンボロで使い物にならん。冷風を出そうとしたら熱風が出るような代物だからなあ。まあしかし、そのおかげでサウナができたわけだからな」
「あっ……」
 御主人様のサウナという言葉で、私は今日の分の日課を忘れていたのを思い出しました。
「朝、サウナに入るの忘れてました……。今月中に二キロは落としたいのに……」
 太ってるわけじゃないですけど、そうならない為には日頃の心がけが大切です。やっぱり、気になっちゃうんです。
「……ダイエットなんか、ナノマシンでどうとでもなるんだがな……」
「え? 御主人様、今、なんて……?」
「あー、いい、いい、どうでも。いいから、さっさとスイカ切って来い」
「あ、は、はい!」
「えー、防衛軍の皆様、攻撃まで残り十分となりました。非戦闘員はシェルター等へ退避をお願いします。繰り返します……」
 外から聞こえてきたHMTIMの声に、私はハッとしました。御主人様は今気付いたように「おっとそうだった」と言ってらっしゃいます。
「あ、あの……戦闘がはじまるから、避難しないと……」
「何をすっとぼけた事言ってんだい。おまえさんが戦わんと話にならんだろうが」
「ええ! ま、また私……戦わなきゃいけないんですか? イ、イヤですよ……」
 私はDOLLになってから、とても臆病になってしまって、戦いもとても怖いです。御主人様にまた戦えなんて言われて……泣いちゃいます。
「う、うう……イヤです……。逃げましょうよお……ひっく。うう……」
「あーもう、うっとおしいのう。えーと、戦闘用武器……武器……ここか……っとと」
 私が泣いても、御主人様は全然気にしてくれません。部屋の隅のゴチャゴチャしたところで、私の武器を探しておられるようです。
「戦闘開始まであと五分となりました。避難がすんでいないかたは急いでください。野次馬してるかた、命の保障はできませんよ。ほらほら、シェルターに避難しておいてください」
 外ではHMTIMが野次馬のかたたちを叱っていました。もうすぐ戦闘がはじまるのに御主人様に逃げては駄目だと言われて、どんどん涙があふれてきました。
「うええーん! 怖いよお……うわーん! ひっく……うう……わーん!」
「だー、やかましい! おっと、あったあった。ほらよっと」
「あ……」
 御主人様が渡してくれたのは、私用の剣でした。鞘に収められていて、背中に背負えるようになってます。
 剣を背中に背負うと、戦闘意欲が湧いてきた!
「よし、わかるな。戦闘開始だぞ」
「ああ、任せてくれよコジマさん! アタシがアイツら、スクラップにしてやるよ!」
 実を言うとアタシにはメイド人格の他に、コジマさんが作った戦闘用人格がある。今のアタシは正にそれ。剣を持つとスイッチが入るってわけだ。
「いよーっし!」
 すぐにアタシはアパートを飛び出してHMTIMのところへ走った。
「あ、来たな! いつもの改造DOLLめ! 今日こそは我々HMTIMが勝利してみせる! サイボーグだかサイコーロだか知らんが、半分生物半分機械なんて半端なマシンにいい顔させてたまるか! 我々巨大人型こそが真のマシンだという事を、これでもかってぐらい思い知らせてくれる」
 十五メートルのロボット二体に囲まれた二十メートルのロボット。HMTIMの連中が隊長って呼んでるヤツだ。
「うるさい、脳味噌機械め! ごちゃごちゃ言ってないで……」
「よーし、戦闘開始と行こうじゃないか! マシーンファイト!」
「レディーー……」
 アタシと敵隊長で同時に叫ぶ。
「ゴオォォォォォーーーーーー!」
 戦闘開始だ! いきなり敵隊長のマシンガンが火を噴いた。その弾を余裕でかわす。ちなみに、他の敵や防衛軍の仲間は傍観に徹している。手出しができないほど、アタシたちのレベルが違うからだ。
「ええーい! 毎度毎度毎度毎度……チョコマカとお!」
「いつもいつもいつもいつも、のんびりしてて……動き遅いんだよ! アンタ!」
 飛び上がって、二十メートルある相手の頭部を叩く!
「上拳!」
「ぐわ!」
 重力に従って落下する。その途中で相手の腹部にも一撃。
「中拳!」
「うっぐう……は、腹を……」
 さらに落下して……なところにも一撃。
「下拳!」
「はう……! あぐう……な、なんちゅうところを……!」
「ここだけもう片手で、もう一発!」
「うぐあ……! ぐう……はあ……ぐ、ぐぐ……ひ、ひどすぎる……!」
 地面に着地して、すぐにもう一回飛び上がる。相手が怯んでいる隙に両手の拳に力を込めた。ナノマシンの改造した手が、赤熱する。
「ダブルバーニングナックゥゥゥゥゥゥゥルッ!」
 右手で相手の胴を正拳で突いたあと、間髪入れずに左手でアッパーを決めてやった。強力な衝撃で、上空高くに吹っ飛ばされる敵隊長。
 もう一度地面に着地してから、力いっぱい飛び上がる。空高く浮き上がった敵隊長を捕らえて、背中の剣を抜いた。
「スプレンディッドソードでトドメだ! サルベイション! スラーッシュ!」
「なんだと! くっ!」
 一振りした剣は、空中で見事に敵隊長の胴と足を斬り離した。落下する敵隊長上半身。こちらも着地する。
 勝ったと思った。しかし。
「隊長! 新しい足です!」
「よし! 合体モード、軸合わせ!」
 HMTIMの一体が投げた足パーツが敵隊長上半身と空中で合体した。
「ははは! まだ終わらんという事だ! くらえ! クラッシュ! ブゥゥゥゥゥッツウ!」
 敵隊長はさっきアタシが斬り離してやった下半身を手に持って、こっちに投げつけてきた!
「あ……そんな!? きゃああああああッ!」
 投げつけられた巨大な足に、アタシは押し潰される。そしてすぐに敵隊長の元下半身は大爆発を起こした。もちろんアタシは爆心にいて、巻き込まれた……。
「見たか! 半端なサイボーグなんぞでは真似できん芸当だろうが! これこそが我らHMTIMの性能だ! 貴様らなどとはダンチなのさ!」
 高笑いする敵隊長に言い返す事も、もうアタシにはできない。サイボーグのおかげか死んではいないけど、時間の問題かも知れない……。
 アタシ以外の怪我人も死者もいない事を確かめて、ゆっくりと目を閉じた。
 まだ爆発の余熱で熱いままの地面の感触が、最後の感触になるのか……。
「ふっふっふっふっふ……」
 最後に聞こえたのは……コジマさんの笑い声?
「切り札があるのはそっちだけじゃないぞ。立て! ハザクラ! おまえはまだ終わってはいない!」
 コジマさんはそう言うけど、今のアタシにはもう、デコピンする力も残ってない。もう、どうしようもないと思っていた。
「ナノマシンたちよ! 今こそ力を出す時だ! FPモード、起動!」
 コジマさんの叫びと共に、まるで呼応するかのように体が軽くなった。いきなりだ。
 これは……ナノマシンの働き?
「体が……動く!」
 アタシは立ち上がった。体全体が熱くなっているのを感じる。
 着ていたメイド服はナノマシンの作用によって体に密着する戦闘服に変わった。頭には、V字型のティアラができあがる。
 普段は新陳代謝程度にしか使われていないナノマシンを、フルパワーで使う、FPモード。コジマさんのかけ声で、今それが起動した!
「ボクの戦いはこれからだ!」
 一人称も「ボク」に変わる。コジマさんによると、さわやかなかっこよさを出すには「ボク」がいいらしい。でも今はそんな事どうでもいい。
 ボクは勝つ!
「FPモードだと!? どうせコケオドシだろう! 今度こそこれでトドメだ!」
 敵隊長が腰を落として力を込める。ボクも相手がどんな事をしようとしているか予想がついて構える。
「弾薬転送路確保! くらえ! 全方位マシンガァァァン!」
 敵隊長の全身至るところから連続して弾が発射された。他のHMTIMたちは盾を構えて弾を防いでいる。
「う、うわ! まずいぞ、おい! どうすんだよ!?」
「ハザクラ! やれ!」
 慌てるオカザキさんと落ち着いてるコジマさん。
 ボクは後ろにいる皆を守る為に、両腕を突き出してそれを発生させた。
「ナノフィールド!」
 ナノマシンが集まって、大きく強固な半透明の壁になった。弾をいとも簡単にはじいていく。
 これがボクの本気の力だ!
「なにい! バリアーだと!? くっ、この! 接近戦で勝負だ!」
 弾を撃つのをやめて、敵隊長がレーザーソードを抜いた。ボクは剣を持ち直して、空高くかかげた。
「ナノラージソード!」
 ナノマシンの作用で剣が巨大化して、五メートルはある大剣になった。
 それを構える。
「ハザクラ! 覚悟おおお!」
「そうはいくもんか! サルベイションスラッシュ!」
 剣を横に振った。当たりはしなかったけど、相手は怯んだ。この隙に!
「手加減はしないからね! 突き! 突き! 突き、突き、突きぃぃぃぃ! ていていていていていていていていていていていてい! てぇぇぇぇぇいっ!」
「は、速い!? ぐうああ!」
 連続して無数の突きをお見舞いする。敵隊長のボディはもう、穴だらけだ。
「これで本当に終わりだ! 正義の刃を受けろ! バァァァァァニング! ソォォォォォォォッド!」
 大剣が真っ赤に赤熱する。
「バーニングスラッシュ! スワローカウンター!」
 一瞬で剣を二振りする。一撃目は敵隊長の胴体と足を、二撃目は胴体と首を斬り離した。
「こんな……! こんな馬鹿なぁぁぁぁ!」
 敵隊長の頭部が二体のHMTIMの方へと飛んでいく。ボロボロの敵隊長の体は巨大な爆発を起こした。もちろん、その爆発の衝撃はナノフィールドで防いでる。
「た、隊長!」
「大丈夫ですか! 壊れてませんか!」
 片方のHMTIMが敵隊長頭部をキャッチした。
「壊れて……ってなんかイヤな心配の仕方だな。いやまあ大破だけど。……それはともかく」
 しぶとく壊れていなかった敵隊長は、二体のHMTIMに抱えられて去っていった。
「おぼえてろぉぉぉぉ!」
「来るなら来い! ボクはいつでも相手をしてやる!」
 去っていった敵にそう言ってやると、「明日のお昼にまた来るからなぁぁぁ!」という叫び声が聞こえてきた。
「いやあ、お見事お見事。はい、おつかれさま」
 オカザキさんがいつの間にか後ろに来ていて、ボクの背中の剣を取った。剣を取られて戦闘用の人格が引っ込むと……なんだか……今更ですけど……怖くなってきちゃいました。
「ふええーん! 怖かったよおー!」
 思わずオカザキ様に抱きついちゃいます。
「大丈夫大丈夫。ああ……戦闘後のこれが楽しみ……」
 いつも私が抱きつくと、オカザキ様はとても喜んでくださいます。
「ふええ……うええーん! うう……わあーん!」
 戦ったあとは毎回こうして怖くて泣いちゃいます。でも、いつも泣いてた時の事を思い出すと、自爆装置のスイッチを入れたくなっちゃうぐらい恥ずかしいです。



 戦闘が終わってすぐアパートの一室で、オレは自爆装置のスイッチを探して自分の体を見ていた。今はもう、メイド人格のスイッチは入っていない。だからこそ、今までにした事を思い出して自爆したくなる……。
 コジマさんの事だから、たぶん自爆装置もとっつけてると思う。以前、「自爆装置は男のロマン」と言っていた。
「あ、あの……す、すみませーん。どなたか、いらっしゃいますかー」
 アパートの玄関のほうから女の子の声が聞こえてきて、オレは自爆装置を探すのを中断した。
 玄関に来てみると、そこにいたのはオレをDOLLに引き込んだあの女の子DOLLだった。
「あ、こ、こんにちは……お元気でしたか」
 きっとここにいる他の人たちをDOLL化しにでも来たんだと思う。
 その女の子を見ていて、今自分がこんな美少女になってコジマさんにもてあそばれているのはこの子のせいだと思うと、頭に来た。
 オレと同じ目に遭わせてやる……。
「ちょっと待っててくださいね。すぐ戻りますから。コジマさーん!」
「なんだあ? 今、オレは一分の一アドラステアの設計図を……お! またサイボーグの元!」
 コジマさんは喜んで、女の子DOLLの上に馬乗りになった。
「改造改造! ヘイヘイホ〜っと!」
「キャアっ! な、何するんですか!? ああー!」
「ハザクラが格闘用だったから、おまえさんは長距離支援型に改造してやろう。一回タンク型を作ってみたかった!」
「イ、イヤー! タンクだけはイヤー!」
 ちょっとかわいそうな気もするけど……まあ、いいか。
 そんな事を考えながら見ていると、コジマさんが女の子DOLLを押さえつけたまま、オレの方を向いてきた。
「ハザクラ、おまえもついでに再改造しとくか?」
「え……?」
 逃げようと思った時には遅かった。スイッチが入れられて、御主人様には逆らえなくなってしまいました。
「やーっぱロケットパンチははずせないよな〜。男の夢! 男のロマン! よしいくぞお! ナノマシン、カームヒアァ!」
「だ、誰かぁー! イヤアアアァァァァ……」
 私と女の子の悲鳴がむなしくこだましました……。



 女の子DOLL……あ、モミジちゃんって名前らしいです。モミジちゃんの改造と私の再改造が終わったあとの今、今日の勝利を祝って皆でパーティーをしています。
 パーティーって言ってもスイカとお酒ぐらいしかなくて、あんまり綺麗じゃないアパートの一室でしてるんですけどね。でもどんな貧弱なパーティーだっていいんです。
「今日はハザクラ、よくがんばったね。ほめてあげよう、なでなでしてあげよう」
「あ、ありがとうございます……えへへ」
 オカザキさまが私の頭をなでなでしてくれてます。こうしてほめてくれるの嬉しくて、次の戦闘でも怖いけど、また頑張ろうかなって気になります。でもいつもそんな事思っても、戦闘直前には泣いてるけど……今度は泣かないように頑張りたいです。
「おいおい、モミジも飲まねぇか。せっかく飲めるんだから、飲まなきゃ話にならねぇだろ?」
「ご、御主人様……モミジちゃん、まだ子供ですから、あんまりお酒なんて……」
「見た目がガキなだけだろ? 中身は大人かもしれねぇじゃねぇか。いや、子供でもどうでもいい。とにかく飲め、飲め。ほれ」
「い、いや……た、助けて……お、お母さん……」
 強くお酒を勧める御主人様に、モミジちゃんはすっかり怯えちゃってます。部屋の隅で丸くなっています。タンク型にされかけたのが、トラウマになっちゃってるみたいです。……私も、タンク型だけは嫌です。ロケットパンチを打てるようになっちゃいましたけど……。その内、胸からミサイルが出るように……とか言われそうで、ちょっと怖いです……。
「なんだあ? そこまで怖がらなくてもいいだろうに……」
「御主人様、飲み過ぎですよ」
「ハザクラ……おまえはかわいいッ!」
「キャッ! オカザキ様も飲み過ぎです」
 突然、オカザキ様に押し倒されてしまいました。顔が赤いオカザキ様。こ、怖いです……。
「オレはもうガマンできない! ハザクラあ!」
「や、やめ……! オカザキ様、やめてえ!」
「くぉらオカザキ、そりゃ犯罪、だ」
 危ないところで、御主人様がオカザキ様を引き離してくれました。御主人様は機械には目がありませんが、女の子への興味はあまりないようでホッとします。
「こんにちわー!」
 玄関の方から、誰かの声が聞こえてきました。またお客様のようです。
「こんにちわー、ハザクラさんいますかー?」
 私へのお客様。私は玄関に行きました。
 そこにいたのは、また女の子でした。ポニーテールの、私の外見と同い年ぐらいの女の子です。
「あの……どちらさまですか? 私がハザクラですけど……」
「どちらさまと言われてもな……HMTIM様だ」
「えっ……!?」
 私は女の子をジッと見ました。けど、やっぱり普通の女の子です。
「人間サイズのボディがこれしかなかったのだ。見た目人間だが、中身はまるきり機械だ。サイボーグじゃないぞ」
「あの……隊長様、ですか……?」
「ああそうだ。言わずと知れたHMTIM隊長様だ。貴様にこれを届けに来た!」
 女の子姿の隊長様が渡してきたのは、回覧版でした。なんなんでしょう?
「あの……これ……?」
「明日十時! 本気で本当の真の力を発揮して、貴様を倒す! 尽きましては周辺への被害が甚大になると予想されますので、明日までにそれを近所に回してください。内容は、戦闘区域の範囲と戦闘開始時刻、戦闘終了予想時刻などが書かれてます」
 変なところに丁寧なHMTIM隊長様。よくわかりません。けど、皆を巻き込もうとするよりかはいいでしょうけど……。
「それでは任せたぞ! 確かに回せよ!」
「は、はい、わかりました……」
 隊長様は笑顔で手を振って帰っていきました。
「じゃ、明日十時にまた。バイバーイ」
「ば、バイバーイ……」
 明日、また戦うんでしょうか……それも、今までとは違って、本気で本当の真の力を発揮して。
 御近所様にこんな回覧版を回さなければいけないほど、凄く威力のある武器を使うんでしょうか。また、私が戦わなければいけないのでしょうか……。
「ふええーん……やっぱり怖いよう……」
 いつまでこんな事しなくちゃいけないんでしょう……。泣いちゃいます。


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