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この作品の設定は、『らいかワールド』の世界観に基づいていますが、らいか大作戦等の本編とは一切関係ありませんのでご了承ください。本編等の詳細設定は http://www.ts9.jp/ をご覧ください。






『前方にいる艦に告ぐ!! こちら護衛艦“らくおう”!! 期間は物資輸送船“いちよう”の進路を妨害している!! 直ちに移動せよ!! さもなくばこちらも強硬手段に出ざるをえない!!』

 すべての通信チャンネルに同じ内容の通信が入っている。

「ご苦労なことだ」
 俺は向こうからの通信を適当に聞き流しながらそうつぶやいた。
 いくら強硬手段に出るといっても、向こうは連合所属の護衛艦……ようはお役所づとめの連中だ。

 ――いきなり砲撃なんてことはない――ぎりぎりまで説得しようとしてくるはずだ。

 だが、こちらはそんなものを気にする必要のない宇宙海賊!! 好きなようにやらせてもらう!!

「計画どおりにいくぞ!! ゴールド!! シルバー!! プラチナ!! いけっ!!」

『らじゃ!!』
『イエスサー!』
『ハーイ♪』

 やつらの通信が入っていない俺たちの船だけの機密通信網から、三つの声が響く。二つは男の声、そしてもう一つは女の声。
 外部モニターのほんの少しのぶれと共に、三機の小型戦闘艇が連合の護衛艦に向かっていく。

「よし……そのままフォーメーションαで護衛艦を撃破しろ。輸送船は後でじっくりと料理する……」
『ようっし! シルバー! プラチナ! 合体だ!!』

「は?」

 がったい……って言ったか? 今…………

『いくぞ!! 煉獄合体!!』

 我が宇宙海賊団の優秀な戦士……ゴールドとシルバー、そしてプラチナ……彼らが駆る小型戦闘艇ラックフェル・イーグル、ラックフェル・ホーク、ラックフェル・コンドル……それらが今、俺の知らない変形をし、次々に組み合わさって……『人型のロボット』……に変形する…………

「な……」
『何〜〜〜〜!?』

 危うく、相手側の通信と俺の声が合わさるところだった。

『ラックフェル・ナイト!! 始動!!』

 い、いつの間にあんな改造をほどこした…………!?

『いくぜ!! 煉獄刀!!』

 急速に真っ白になってゆく俺の頭の中に、ゴールドの元気のいい声だけが響いてくる。
 第一、ナイトって言いながら、何で刀なんだよ…………?

『一閃!!』

 ザン!! ズガガガガガン!!

 モニターに、ラックフェル・ナイトとやらが護衛艦を撃破した映像が映し出される。向こうもあっけに取られていたのだろう……たいした抵抗はしてこなかった。

『よし、護衛艦は片付けたわ! ミスリルさん! 揚陸チューブを出して皆を輸送船に乗り込ませて!!』
 プラチナからの通信が俺の元に届く。ああああ、そうか、揚陸チューブか。まあ、ここからは策士と呼ばれる俺の作戦どおりに………いくのかな?

 って、言うか、合体ってなんだぁ!?




宇宙海賊船ラックフェリン

DOLL襲来! 史上最大の作戦!!


作:Zyuka




「作戦はまあ、うまくいった……と思う。首尾よく連合の物資を奪えたんだからな……」

「いやあ、これで当分は食料や水、それに空気に困らなくてすみますね」
 俺の言葉を、シルバーが引き継ぐ。
「本当に……これでようやくお風呂には入れるわ」
 プラチナも、女性らしい意見を述べる。
「俺は腹いっぱい飯が食えればそれで満足だけどな」
 最後に、ゴールドがそういうと……
「あなたが馬鹿食いするから、いつも食糧不足になるんでしょ!」
「何だと!? お前なんか一日に7回も風呂に入るじゃねえか。水不足はお前の責任じゃぁないのか!?」
「何よ! 女の子はねぇ、男と違ってデリケートなのよ! 馬鹿ゴールド!!」
「なにぃ!? 馬鹿とはなんだ!! 馬と鹿に対して失礼だろう!!」
「じゃあ、訂正するわ。アホゴールド!」
「何打と間抜けプラチナがぁ!!」
 いつものことながらすぐに口喧嘩を始めるゴールドとプラチナ……これをなだめるのは俺の仕事じゃない。

「おいおい、二人ともやめろよ。とにかく今回は大戦果だったんだ。他のとこじゃそれを祝ってパーティをやってるんだぞ」
 二人をなだめるのはそう、シルバーの役目だ。

 普段は口喧嘩ばかりするゴールドとプラチナ、そのなだめ役のシルバー……この三人が俺達海賊団の中でトップ5に入る戦闘能力の持ち主だと、誰が信じるだろうか?
 まあ三人とも戦闘タイプのシア=デュラム人なのだから……

「おっとそうだった。こんな反省会みたいなのはとっとと終わらせて、俺もパーティに行かなくては!! なにせ今回の戦闘の英雄だもんな」
「そうよね、その後でおふろっと」
「じゃあ、さっさといこうか」
「あんまり飲むんじゃないぜ、シルバー。お前が酔っ払うと、大変なんだからな」
「そんなことはわかってる」

「ちょっと待った!!」
 部屋を出て行こうとする三人に対して、俺は大声を上げる。
「その戦闘のことに関して、お前達に聞きたいことがあるんだ!!」
「なんですかミスリルさん?」
「そんなことより早くパーティに行こうぜ。せっかくのご馳走がにげってってしまう」
「そうですよ、ミスリル副キャプテン」

 そう、自己紹介が遅れたようだがここで言っておく。俺の名はミスリル。
 BH三連恒星第7惑星シア=デュラム星発祥の宇宙海賊団“ラックフェリン”の副キャプテン、つまりナンバー2という立場にある。
 まあ、こういうと聞こえはいいかもしれないが、実際やってることはなんか中間管理職みたいな物。
 なぜか姿をあまり見せない俺達宇宙海賊団のキャプテン(Zのつく呪術師だとか、孔雀の羽を持つ妖精だとか噂はあるが、真偽の程は確かではない。実は俺も真の姿は知らない)と部下達の橋渡しのようなことをやっている。そして、連合やその他所属の輸送船やなにやら、ほかにも小規模な宇宙基地や発展途中の小惑星を襲う算段をしているのも俺だ。
 まあ、時々民間の武装船を装って、護衛の仕事もしたりするが、そんなことは本当に時々だけである。

 ちなみに……この海賊団の大半を占める俺達シア=デュラム人は、基本的にはヒューマノイドタイプなのだが、地球人やテラン人とは大きく違う2つの特徴がある。
 1つは頭に角があること。
 シア=デュラム人は、頭に1本以上の角を持つ有角種族だ。そして、この角の数によって、4っつのタイプに分類される。
 一番多いのは1本の角の市民タイプ。この海賊団で一番多く働いているシア=デュラム人のほとんどがこれにあたる。
 次に、2本角の戦闘タイプ。ゴールド、シルバー、プラチナの三人がこれにあたる。2本の角を持つシア=デュラム人は、なぜか戦闘能力に秀でているという特徴をもつ。肉体的な事はもちろん、武器や戦闘艇を遣わせても120%位の力を引き出せることができる。それゆえ、戦闘の主力メンバーになることが多い。
 そして、3本から5本の角を持つ法族タイプ。この俺、ミスリルは4本の角を持つためこれにあたる。そしてもう一人、3本の角を持つやつもいるのだが、こいつは後で紹介しよう。まあ、この法族タイプには、ほかのシア=デュラム人より遥かに強い特殊能力がある。ありていに言えば、強力なエスパーといったところだ。1本の角の市民タイプでも特殊な力を持つ者はいるが、法族タイプには遠く及ばない。戦闘能力だけは、戦闘タイプに劣るかもしれないがな。
 最後の4っつ目は6本以上の角を持つ神族タイプというもの。謎のキャプテンがこれだ。あの方の頭には、7本の角がある。シア=デュラム人は基本的に角の数が多いほど、偉く、そして特殊な力も強くなるというから、すごい方だということはわかる。でも、謎が多すぎる。
 そして……角の数とは関係無しに、シア=デュラム人にはもう1つ、ほかのヒューマノイドとは大きく違った特徴があるのだが…………これは、別の機会に話すとしよう。…………別にいいだろ。今慌ててしらなくったって。

 それではまあ、話を元に戻そう。

「お前達に聞いておきたいんだが……あの煉獄合体ラックフェル・ナイトって言うのは一体なんだ?」
「ああ、あれですか?」
「メタルのやつがそう改造したから使ってくれって」
「結構面白そうだったから、実戦で試してみたの」
「……メタルが?」
 あいつも俺と同じ法族タイプ、3本の角を持っている。
 確かに、あいつならやりかねない。って言うか、今までしなかったのが不思議だ。
 元々ラックフェル・イーグル、ラックフェル・ホーク、ラックフェル・コンドルの三機もあいつが作ったんだし。

「そういえば……メタルちゃん、次は本艦を改造してラックフェル・パラディンにするって言ってたわ」
「何!!」
 あいつがやるといったら、本当にやる!! 止めなくては!!
「ブロンズ!! ブロンズ!! 応答しろ!!」
 俺はオペレーションシステムを使って通信を専門職としているブロンズを呼び出す。が、出ない。

「たぶんパーティに行ってるのだと思いますよ」
「ああ、俺達も早く行きてぇ!!」
「ミスリルさん、行ってもいいですかぁ?」
「あのなぁ!!」
 こいつらは、俺達の海賊船が改造されようとしているのに、パーティのことしか頭にないのか!?
「ミスリルさん、もしかして怒ってます?」
「いや、怒ってなどいない……」
 その寸前までは来ているが……ここは、我慢だ。
「まあ、副キャプテンが怒ったら、すぐにわかるけどな」
「確かに、遠慮なく怒ってくれていいんですよ」
 こいつら……まさか“あれ”を期待してるんじゃないか?
「いや、怒りはしない!! とにかく俺はメタルを探す!! お前達はパーティでも何でも行っていろ!!」

 そして俺は司令室を飛び出した。

     ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

「我々はDOLL。お前たちを同化する。抵抗は無意味だ」
「邪魔だ」

 ポイッ!

 俺はどこからともなく現れた13歳くらいの変な格好をした少女を海賊船の外に放り出した。
 見たこともない少女だったが、容姿が気に食わなかったし、俺の機嫌が悪かったてのもある。
 第一ここは海賊船、全種属生命尊重とか異種族権利保護とか言うきれいごとは連合の奴等にでも言わしておけばいい。侵入者はたとえ希少生命体であったとしても、宇宙へポイッだ。(ただし、プレラット人の場合は考えるかもしれない)

「ひっどっ〜い! なんかDOLLに対して一番扱いひどくない〜? いくらDOLLが宇宙空間でも問題なく動作できるからって、せめて名前ぐらいは出してよ〜!!」

 なんか騒いでいるが気にしない。俺はとある理由でローティーンの少女というのは苦手なのだ。見ていると、怒りたくないのに、怒りたくなってくる…………怒ってはいけない…………俺は、何があっても怒ってはいけないのだ。
 それにメタルを一刻も早く見つけなければいけない。そして、馬鹿な事をやめさせなければならない。そのときにも、怒ってはいけない。

「アルミ!! メタルのやつを知らないか!?」
 俺はたまたまとおりかかったチャイナドレスのお団子娘、コロセウナ人のアルミに聞く。
 コロセウナ人は、なぜか地球という星の中国って国に酷似した文化を持っている。
 アルミはメタルの助手をやっているから、もしかしたら知っているかもしれない。
「メタルお師匠様あるか? お師匠様なら宴会の場から面白い気配を感じたとか言って出ていかれましたある」
「どこへいったかわかるか!?」
「さあ、知らないある。私が興味あるのはあの方の知識であって、あの方自身ではないあるから」
「ああ、そうだった。邪魔をしたな!!」
 コロセルナ人っていうのはどうもマイペース過ぎる所がある。
 くそ、メタルのやつ、どこにいる!?

「クケ〜〜〜〜〜!!」
 俺は顔を真っ赤にして走ってくるダチョウをパッとかわし、さらにメタルを探す。だんだんと、怒りの沸点に近づいてる気がする…………いや、だめだ、怒ってはいけない…………

 ドゲッ!!

 何かにつまずいた。

「いったぁ〜い」
「すまない……って、あ、メタル!!」
「何するの……って、あっミスリル副キャプテン!?」
「メタル、おまえなぁ……」
「ちょっと待って副キャプテン……せっかくだから、ちょっと自己紹介させてもらうわ」
「はぁ?」
「私はメタル。ミスリル副キャプテンやゴールド達と同じシア=デュラム人の法族……三本角ね、身長170.5の八頭身美人!! あ、ちなみに3サイズや体重はトップシークレットね。乙女の秘密に踏み込んじゃイヤン♪」
「誰に向かって自己紹介してるんだ?」
「読者」
 相変わらずわけのわからんやつ。これでシア=デュラム切っての天才科学者と言われていたんだから始末におえん。
「っていうか、なぜこんな長身美人に副キャプテンつまずくことができたかというと…………」
「そんなことまで説明しなくてもいい。それよりもおまえ、この船を改造しようとしているらしいな?」
「ぎく…………」
 メタルが目をそらす……
「あっと……私の眼鏡はどこへいったのかしら……」
「正直に答えてもらおうか? どうせおまえのことだ。俺が気づく前に下準備とかは済ませてあるんだろ? 教えろ。どこをどう、何%ぐらい改造したんだ?」
「ええーと…………とりあえず、ナイトの次はパラディンってことで…………」
「で、最後は本星まで改造してジェネラルか?」
「あ、それいいアイデアかも」
「……おまえな……」
「あ、副キャプテン、もしかして怒ってる?」
「怒ってなどいない!!」
 と、言い争う俺たち二人の元に……

「さっきは、よくもやっていただきましたね…………」
 と言って現れた第三者がいた。本当に第三者だ。
「誰?」
 メタルがいう。だが、俺には答えられない。
 しかし、この場にいていい存在ではない!! 正体不明のローティーン少女!!
「…………なんか副キャプテンに似ているわね」

 ビシィ!!

 どこかで何かが切れる音がする。いけない……いけなないぞ!! 怒ってはいけないんだ!!
 第一、身長198cm、ちゃんとした成人男性のこの俺と、あんなちっちゃな子供のどこが似ているんだ? いや…………メタルがそう言うのには、わけがあるのだが…………ここでは言わん!!

「ハァハァ…………とにかく、我々はDOLL。お前たちを同化する。抵抗は無意味だ」
「そうか、わかった」
 俺はつとめて冷静に、怒らないようにその少女の前に立つ。
「そうか、わかってくれたか! それでは我々を受け入れて、我々の仲間に……」
「ここは海賊船だ、海賊船に乗り込んだ密航者は問答無用で放り出される。わかっているな?」
「え…………?」

 俺は再び少女を宇宙へ放り出した。

「何で出てくるたんびにこんな目にあうの〜〜!?」

 なぜか叫び声が聞こえてきたが、どうでもいいことだ。
「今の女の子…………DOLLって言ってなかったかしら?」
 ふと、メタルが真剣な声色で言ってくる……こいつがこういうよう物の言い方をするときは……
「…………知っているのか?」
「ええ、第1級の危険生物のはずよ…………」
 危険生物?
「俺たち海賊よりもか?」
「私の記憶が正しければ……一刻も早く全員を検査しなければいけないわ!! DOLLの犠牲者がもう出ているかもしれない!!」
「…………それで、改造の件はうむやむにするつもりか?」
「や〜〜ん、それどころじゃないって副キャプテン!!」

     ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

「で、結果はどうだった?」
 ラックフェリンの大講堂に、パーティを中断して仲間全員をかき集め、チェックする。
「全員チェックしてみて問題ないってわかったわ」
「本当によかったある……DOLLが紛れ込んでいたと聞いた時はどうなる事かと思ったあるが……」
 メタルと、助手のアルミが報告書を開きながらそういった。

「ナノマシンによる種族のコピーか……」
「彼女達は、それを同化と呼んでいます。全宇宙の低的生命体を自分達と同じ存在にすることを、最終目標としているらしいです」
「ふざけた侵略者だな」
「連合のほうでも、DOLLは発見次第最寄の宇宙基地に報告しろと言っています」
「ここから一番近い連合の宇宙基地は…………って、そんなことを考えていても仕方ない。俺達は海賊。連合に従う義務も義理もない」
 俺は薄く笑う。
 いいぞ…………一時期沸点ぎりぎりまできていた怒りのパロメータがどうにか平常時まで落ち着いてきているらしい。これなら、怒らずにすみそうだ。

「いえ、副キャプテン!! できることなら民間船に偽装してでも報告に行くべきです!!」
「は? どういうことだ? スチール?」
 俺はなぜか鼻息の荒い仲間、スチールの顔を見た。
「ここから一番近い連合の宇宙基地と言えば、もちろんTrans Space Nineでしょう!? 噂では、美しい女神の宝庫だとか!!」

「………………………………………………(いつもより長く沈黙しています)」
「これを見てください!!」
 そういってスチールは一冊の本を開ける。タイトルは……“最強・究極・爆裂TS9 第12巻”。出版会社は連合宇宙軍とある…………著者近影“アルキメデス・フォンヤード”?

「誰だか知らないが、酔狂なことやってやがるな…………」

 俺は怒ると言うよりもあきれ果てた。第一、12巻ってことはまだほかに11冊あるというのか?

「見てください!! これが連合の最年少少尉、ライカ・フレイクス嬢です!!」

 ピシッ!!

 怒りの沸点に近づく。そこに乗っていたのは、今俺の最も見たくない存在、すなわちローティーンの少女だった。
 黒い髪をポニーテールにした美しい少女だが……こういうのは俺の怒りのパロメータを上げるだけで何の役にも立たない。

「次に地球と言う星の現地協力員庄司果穂嬢!! 自分の一押しです!!」

 眼鏡の少女……いけない、怒ってはいけない…………スチール…………今ここでおまえを宇宙に放り出したい…………だが、密航者でもない者……仲間にそういうことをするのを許されるのはキャプテンだけだ…………

「同じく雲雀来栖嬢!!」

 平常心、平常心…………だから平常心…………そういや、さっきまでパーティをやっていたこいつだ。酒が入って酔っ払っているのだろう。普段のスチールなら、こんなことはしない…………

「さらに司令部つきの秘書官の少尉かわねこ嬢!! 指令代理もつとめているらしいです!!」

 キャロラット人の少女……か、確か前の調査ではTS9の指令はかわねぎと言う名前だったはずだが……血縁者なのだろうか? いや、ラテン人とキャロラット人ではDNA構造が違うはず……

「さらに副指令のれも嬢!! テラン人とプレラット人のハーフだそうです」

 このれもって娘はハイティーンのようだ。よかった、これで少しは沸点にいくのを避けられる。まあ、それが幸か不幸かはわからないが。

「ええっと次は!! DOLLの……えええ!! DOLL!?」

 ガタガタガタガタ!! バタン!!

「我々の仲間がいるんですか!?」

 ピシッ……

 また来たのか懲りないやつ!!

「って、これが三度目になります……我々はDOLL」
「それはもういい!!」

 三度俺はその少女を宇宙に放り出した。

「多分、あの子のDOLL属性は、けなげとかあきらめないとかね」
 メタルがぼそりと言う。

「…………スチール、あまり副キャプテンに幼い女の子の姿は見せないほうがいいわよ。副キャプテンにとってそれは鬼門なんだから」

「え、じゃあ誰ならいいんですか!?」
「そういう意味じゃないわ。とにかく、その本をしまった方がいいわよ」

「ミスリル副キャプテン、大丈夫ですか?」

 ああ、大丈夫だ。ちょっと……後ちょっとすれば沸点を超えるかもしれないが……
 まあ、とりあえず、あの小娘を放り出したダクトを閉めておくか。

 …………ダクトの外はもちろん、宇宙空間。グラビティバリアという薄い重力の膜が張ってあるおかげで気体はここから出て行くことはない(個体ならあっさりと通り抜ける)が、開きっぱなしっていうのはあまり気持ちのいいものじゃない。
 コンソールを操作して……

『煉獄変形システム、稼動します』

 はぁ?

「あ…………」

 後ろでメタルが声をあげる…………まさか…………
「おまえ……まさか……完成させていたのか?」
「う……うん……煉獄変形ラックフェリン・パラディン♪」

 ガガガガガ…………

 内部にいる俺達に、その変形のさまが見られるわけがない…………
 そう思っていた……が、そんなことはなかった。外部からの危険を探知するために放出してある小型無人探査機から、船の変形する様子を捕らえた映像が送られてくる。

 それは、あの煉獄合体ラックフェリン・ナイトよりも巨大なロボットが生まれる瞬間だった。

 それを見た瞬間、俺の中で今日あった出来事が反芻される。

 煉獄合体ラックフェリン・ナイト…………
 しつこい変な小娘…………
 TS9という所のアイドル達の写真…………
 そして、この煉獄変形…………

 少ない? 悪いな、俺の怒りの沸点は限りなく低いんだ!!

『煉獄変形ラックフェリン・パラディン!!』

 そんな音声が聞こえた瞬間、俺の怒りは爆発した。

「ふざけるなぁ!!」

 そして……………世界が急速に大きくなっていく…………

     ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

「私はあきらめない!! 何度でも復活する!! 我々はDOLL。お前たちを同化……って、あれ?」

 また来たのか………あきらめの悪い小娘が……
 俺は、そいつの顔を真正面からにらみつける。ちょうど目の高さが同じなんで、直接見ることになる。

「こんなかわいい娘、さっきまでいた………?」
 戸惑いながら、DOLLの小娘は横にいるメタルに聞く。
 まあ、わからないのも無理はないだろう。そいつの目の前にいるのは、自分同じくらいの年頃の、小さな女の子、なのだろうからな。

「何言ってるの? この娘は、ミスリル副キャプテンよ」
「へ?」

「説明してあげる。私達シア=デュラム人にはね、他のヒューマノイドとは違う二つの大きな特徴があるの。ひとつは、有角種族……角を持ってるって事と、もうひとつは、変身能力があるって事」

「は? 変身能力、ですか?」

「そう、たとえば……」

 そう言って、胸ポケットから眼鏡を取り出すメタル。それをかけると…………

 ポワンッ♪

「うわ………」

 メタルの八頭身体形があっという間にちぢみ、どこからどう見ても二頭身になる。
「まだ納得できない? じゃあ……」
 二頭身メタルは、ピョンピョンとはねて、近くにいたゴールドの顔にキスをする。
 とたんにゴールドは虎に変身した。

「ガオッ!!」

「はわ…………」

 これにはさすがにびびったか、後ずさりするDOLL。

「変身条件や変身後の姿、そして変身解除条件は人によって違うわ。ちなみに、市民タイプだろうが、戦闘タイプだろうが、法族タイプだろうが、変身後の姿は選ぶことができないの。つまり、市民タイプでもとんでもないものに変身してしまう人もいれば、法族タイプでも情けない、変なものになっちゃう人もいるわけなの」
 つまり、情けない、変なものの代表が俺、というわけだ。
 “怒り”という変身条件を満たすと、ローティーンの女の子になってしまうわけだから。

「へ、へ〜〜〜18へ〜くらいいきそうですねぇ………」
「納得したか…………?」
 俺はちょっと世の中の新しい事知りましたって顔をしているDOLLに聞いた。
「ハイ。…………所で、ええっと、ミスリルさん、でしたよね? その姿のままで私達の仲間になりません? そのかわいい姿のままで、永遠に近い時を生きられますよ?」

 か・わ・い・い……………?

「あ、そうそう。言い忘れてたけど、ミスリル副キャプテンの場合、その姿になった時の方が超能力の攻撃力が上がるから。気をつけてね」

「へ…………?」

「よかったな。今回とばっちりを受けるやつがちゃんといてくれて」
「そうだよなぁ。俺はあの副キャプテンの姿は好きだけど、とばっちりを受けるのだけはいやだもんな」
「こないだとばっちり受けたのは俺だったんだよなぁ。あのときゃ死ぬかと思ったぜ」

「エート…………」
 周りの空気を読んで、やっと自分の身の危険を感じたのか。少し逃げ腰になるDOLL……
 だが、俺の怒りはもう臨界点を超えている。

「俺の前から消えてなくなれ!!」

 ドガガガガガガガガガッガァ〜〜〜ン!!!!!!!!!!!!!!

「結局最後までこういうオチ〜〜〜!!」
 そういい残し、DOLLは吹っ飛んでいった……………





 …………後で聞いた話だが、その日たまたま近くを通りがかった観光船が、胸からビームを放つ巨大ロボットを目撃したらしい。

 まあ、別にどうでもいい話だ。

 とりあえず、宇宙でも一二を争う危険生命体、DOLLが俺達海賊団の船に進入したという事件はとりあえずこれで終了した。

 言っておくが、こんなことは宇宙海賊船ラックフェリンでは日常茶飯事である。



                                        (終わり)



   おまけその@

「お……お子様ランチが……な……い……」
 私は、食堂でメニュー表を見ながら茫然自失した。

 この宇宙船……だか巨大ロボットだかにある食堂のメニュー表には、私達DOLLの大好物、“お子様ランチ”が存在しないのである。

 なんで!? なんで!? なんで!? どうして!?

「お客さん、早く注文してくださいよ」
 大柄な食堂のコックさんが私に向かってそういう。頭に角が無い所を見ると、シア=デュラム人じゃないらしい。
 でも、食堂にお子様ランチを置いてくれないコックさんなんて、仲間にしてあげないもん。(こら)
 と……
「何だおまえ、まだここにいたのか?」
 このかわいい声は……
「ああ、ミスリルちゃん」
 私と同じくらいのかわいい女の子。この船のナンバー2だってさっき聞いた。
 普段は背の高いお兄さんなのだが、怒ると女の子に変身するらしい。
「誰が“ちゃん”だ? またぶっ飛ばしてやろうか!?」
「やだぁ!!」
 ミスリルちゃんの手のひらに光が集まるのを見て、私は慌てて逃げる準備をする。
「お、副キャプテン。またその姿になってるんですかい?」
「ほっとけよ。アイアン。とりあえず、トレインランチを頼む」
「はいよ!」
 そう言ってちょっと背の高い椅子に座るミスリルちゃん。う〜んプリティ……こういう娘を仲間に加える事ができたら、皆にも自慢できるんだけどなぁ……

「はいよ! トレインランチ、いっちょ上がり!」
 そう言って、コックさんがミスリルちゃんの前に持ってきたのは…………
「ああ〜〜〜お子様ランチ〜〜〜!!」
 上に旗のついたトマトケチャップと鶏肉と玉葱とコーン入りのピラフ。おいしそうなデミグラスソースのかかったハンバーグ。グリンピースで色を添えたパスタ。レタスにのっかたポテトサラダにプチトマト。プリンとオレンジジュース、おまけの玩具までついたまごう事なきお子様ランチ……………………

「はあ、何言ってる? これはトレインランチって言うんだ」
「で、でも…………これってお子様ランチじゃ…………」
 私はミスリルちゃんだけではなく、コックさんにも聞いてみた。
「いや、これはトレインランチって言うんだ」
 ええ〜ん、お子様ランチとどこが違うの!?

「よく見ろ。うつわが汽車の形をしているだろ? それにおまけの玩具も汽車シリーズだ。だからこれはトレインランチ」

 そういう問題? 場所が変われば名前が変わるって事?

   おまけそのA

『フフフ…………気持ちいい〜〜〜』
 ラックフェリンの主要戦闘員の一人であるプラチナさんが、広いお風呂の中で尾っぽを伸ばしている。
 そう、尾っぽである。誰がどう見ても魚の尾っぽである。
 彼女の変身後の姿は人魚。変身条件は水に入ることで、解除条件は体を乾かすこと。

「つまらない……」

 俺、ブロンズは風呂場に隠してあるカメラからの画像を見ながらそうぼやいた。
 これが怒りを爆発させたあとのミスリル副キャプテンや眼鏡をかけていない状態のメタルさんならもっといいのに……
 いやいや、これはこれで萌えるってやつがいて、結構高値で買っていってくれるのだ。ニッケルとかチタンとか、ああゆう連中が…………

 で、そのニッケルとかチタンだが……他の隠しカメラの映像に目を移してみる。

『クケ〜〜〜!!』

 どこかの廊下を、酔っ払ったダチョウが疾走している。どうやらそれを止めようとしているようだ。
 あのダチョウはプラチナさんと同じ主要戦闘員のシルバーさんだ。彼の変身後の姿はダチョウ……変身条件は酔っ払うことで、解除条件は酔いがさめること。つまり、酔っ払って変身するといつも暴走するのだ。

 ついでに、もう一人の主要戦闘員ゴールドさんの様子を見る。彼はメタルさんにキスをされて虎に変身してから、睡眠の姿勢に入っている。戦いの場でない限り、彼はあの姿ではいっつも寝ている。まあ、解除条件が3時間の睡眠なのだから仕方ないか。

「まったく……問題児ばかりだな……」

 そういう俺もシア=デュラム人、変身したらどうなるか、どっこいどっこいって所なんだけどな。

   おまけそのB

「まったく……なんでいつもいつも怒んなきゃいけないんだか……」

 俺は自室に戻り、山のようにつまれているDVDの中から、面白そうな物を探し始めた。

 そう、この俺ミスリルの変身解除条件は笑うこと。何か面白いお笑いDVDでも見て笑わないと、この少女の姿から抜け出せないのだ。
 この際だから白状しておく。実は俺はしょっちゅう頻繁に起こっているので、ここにあるDVDのほとんどを見てしまっているのだ。

 うう、情けない……まあ仕方がない。気を取り直して、今日はどれにしようか……

「これにするか……」

 タイトルは、“これは夢オチ『ナイトメア・ユイム』”…………………






       あとがきにかえて……名前の出てこなかった人達による座談会

オリハルコン:おっす! おらゴ…………じゃない。俺はオリハルコン。Zのつく呪術師だとか、孔雀の羽を持つ妖精だとか、そんな噂のある宇宙海賊船ラックフェリンのキャプテンだ。キャプテン・オリハルコンとでも呼んでくれ!!

 トルメリア:ええっと…………本編にて3回も宇宙に放り出された挙句、最後はビームで吹き飛ばされたDOLLのトルメリアです。やっと、やっと、やっと、名前が出てきました。ああ、ながかったぁ……結局本編じゃ一度も名前出してもらえなかったよう。お子様ランチも食べられなかったし…………

オリハルコン:ハッハッハ!! 災難だったな。

 トルメリア:っていうか、あなたの部下なんでしょ!! ミスリルちゃんも他の人達も!!

おりはるこん:つってもうちの場合、自由にやれが教育のモットーなんだけどなぁ……

 トルメリア:お詫びとしてお子様ランチをおごって!!

オリハルコン:やだ。第一うちのコック、アイアンの作る料理にお子様ランチはないぞ。トレインランチはあるけど。

 トルメリア:名前が変わってるだけでしょ! ねえ、おごるくらいいいじゃない!!

オリハルコン:おっと時間だ!! じゃあ、皆、またな!!

 トルメリア:あ、ずる!! って、これ次あるの!?



      用語説明

宇宙海賊船ラックフェリン:その名のとおり、宇宙海賊船である。
             製造されたのはシア=デュラム星。そのためか、乗組員の7割はシア=デュラム人である。
             かの星の技術力の粋を集めて作られたというこの船は、一瞬で外装を変えることも、
             巨大ロボットに変形することも可能である(笑)。
             ちなみに普段は海賊船らしく、黒い外装をしている。

    シア=デュラム星:ブラックホール三連恒星第七惑星。
             ブラックホールを中心とし、三つの太陽が微妙なバランスを持ってその周りをまわっている。
             そんな星を中心とした星系にある星だからこそ、
             ここまででたらめな種族が生まれたのではないだろうか?

    シア=デュラム人:BH三連恒星第七惑星の知的生命体。
             頭に角を持つことと、変身能力があることで有名。
             そのためか、過去に他の星の科学者から実験動物扱いを受けたという……
             ゆえに本星自体が連合に組せず、また海賊行為も見逃しているふしがある。
             一般に頭の角が多いほど社会的地位が高いといわれている。
             ついでに、角が多かろうが地位が高かろうが、変身能力には何の関係もない。

      コロセウナ人:銀河を旅する少数種族。別名知識の探求者。
             どこかしらマイペースな所があり、自分の興味のないことには一切かかわらない。
             しかし、一度興味を持った事柄に対しては、一生をかけてでも追求する。
             もちろん、変身能力なんてものはない。
             彼らの文化は地球の中国という国に酷似していると言う……

     トレインランチ:上に旗のついたトマトケチャップと鶏肉と玉葱とコーン入りのピラフ。
             デミグラスソースのかかったハンバーグ。
             グリンピースで色を添えたパスタ。
             レタスにのっかたポテトサラダにプチトマト。
             プリンとオレンジジュース、そしておまけの玩具つき。
             ここまで書くとお子様ランチのようだが、うつわが汽車の形をしているのと、
             おまけは汽車シリーズなので、これはトレインランチというのである。
             ちなみに発明者のアイアンさんはテラン人らしい。

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