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果穂ちゃん通信・Vol.1

原作:かわねぎ 文:ジャージレッド&秘密結社果穂ちゃんクラブ 画:MONDO


【第9話の勝手に果穂ちゃん】

 徹夜明けで、眠そうな果穂ちゃん。
 あくびして、ちょっと涙がでてきたらかわいいかも。
 眼鏡の脇から人差し指を入れて、そっと涙を拭く。
 表情は眠気により “ぽややん” としているだろうし、いいですよねぇ。
 ところで机で寝ちゃうよりも、保健室に行くという手は使えないのかな?
 そうしたら、添い寝しに行ってあげるのに……。

(初出 『少年少女文庫』感想掲示板 2001/5/23)


【第10話の勝手に果穂ちゃん】

 浴衣を着た果穂ちゃん。物静かな雰囲気の彼女には、和装がよく似合う。袖を押さえる手がなまめかしい。
 でもね、でもね、自分の浴衣姿をビデオに収めておかないのは犯罪だよ〜。
 かわいいもの、きれいなものは、ビデオに撮っておかなくちゃいけないんだよ〜。
 果穂ちゃんには、頼香や来栖には無い、かわいらしさがあるんだからね。じゃ、分かったらビデオに写ろうね。
「そうだぞ。果穂。ジャージレッドさんも言っているように、かわいい娘は、ビデオに写る義務があるんだぞ。
果穂ちゃん水着姿 わかったらお父さんのビデオにおとなしく写されなさい。
 かわいい愛娘のビデオ……。はうぅぅぅ。たまらん。たまらんぞおぉぉぉ!!!
 そうだ! 今度は水着を送ってあげよう。もちろん子供だけで海に行くのは危険だから、保護者同伴でな!
 果穂の水着姿……。かわいい。想像しただけでかわいいぞ!」
「お父さん……。私、そんなにもかわいいですか?」
「勿論だとも。今更何を言う?」
「悪い虫、ついても知りませんよ。
 ほら、言ってるそばからあそこでジャージレッドさんが、私の浴衣姿を見て目を血走らせているし、水着になんてなったらどうなることか……」
「コラ! ジャージレッド、貴様よくも私の愛しい果穂のことをイヤらしい目で見たな! ゆるせん! この庄司紳二が成敗してくれる!」
「待って下さい、お父さん! これは花粉症なんですよ、花粉症! 決して果穂ちゃんをイヤらしい目で見ていたなんてそんなことはありません!」
「ええい、お前にお父さん呼ばわりされるいわれはないわ! だいたいお前の花粉症は、この季節には直っているはずだ! そこに、そこになおれ!!」
「くそうこうなったら……、果穂ちゃん! おじさんと一緒に逃げよう。2人だけの愛の王国を築くんだ♪」
「冗談でもイヤです」

(初出 『少年少女文庫』感想掲示板 2001/6/12)


【番外編でも勝手に果穂ちゃん】

「まったく、果穂のやつめ。今日が父の日だったとはな。まったく泣かせることをしてくれる……」
 親娘2人で家に戻って来たとき、家に入って果穂がすぐにしたことを思い出して、紳二はしんみりとしていた。
 果穂は、家に入ると自分の鞄から綺麗にラッピングされたプレゼントを出すと、『はいっ』とだけ言いつつ、すこし照れたような表情で紳二にわたしてくれたのだった。
 最初は何のことだか分からなかった。今まで父の日を祝ってもらったことがなかったせいもある。しかし、いくら今は少女の姿をしているとは言っても、あの誠二が、こんなことまでしてくれるとは……。
「何が入っているのかな?」
 中身が気になってしょうがないのだが、娘からのプレゼントを、じっくりと、ゆっくりと、少しでも長く味わってみたいという気持ちも有って、まだ封を切れないでいるのだった。
 というわけで、今は、プレゼントをくるくると回してみたり、電灯の光に透かしてみたり、重さを確かめてみたり、そんなことをして楽しんでいるのだった。
「しかし、果穂が風呂から出てくるまでには中身を確かめておかんと、礼を言うこともできんし、かといってせっかくここまで綺麗なラッピングを無駄にするのもな……」
 紳二は悩んでいた。何もそんなことで悩まなくても良いのにと、部外者なら思うところなのだが、あいにくと紳二は完璧に当事者であった。
「そうだ! ラッピングを破る前に、このプレゼントの姿を写真に納めておこう!」
 さすが、果穂の父である。血のつながりは否定できない。
 こうして、紳二は一旦、自室に戻ると、愛用のカメラを手にした。
 その時である……。
「キャーッ!!」
 風呂場から果穂の叫び声がしたのだった! 紳二は大慌てで風呂場まで行くと、ガラッと、風呂場の引き戸を開けたのだった。
「果穂! どうした? 大丈夫か!?」
 飛び込んだ風呂場で紳二が見た物、それは、風呂場の窓から大事な娘の裸を覗き見ている “ジャージレッド” のにやけた顔だった。
「こおら、ジャージレッド! 貴様! そこで何をしている!」
 紳二は、娘を愛する気持ちが高ぶり、窓から覗いているジャージレッドの顔にストレートをおみまいした。
 ドゲシッ! (ううっ、私の出番は、今日はこれだけなのか?)
 ジャージレッドは薄れゆく意識の中で果穂の裸身を記憶に焼き付けようと努力していた。ほら、保存する前に電源落としちゃうとまずいしぃ〜。(笑)
「果穂、大丈夫か?」
 ジャージレッドを見事成敗し、湯船に身を沈めている果穂のほうを振り返った紳二は、じと目でにらむ果穂の怒った顔を見た。とまどう紳二。
「お父さん。その左手に持っているものは何ですか?」
 かわいらしい声にも関わらず、果穂の声は、なぜか地獄の底から響いてくるよう雰囲気であった。
 果穂の指摘を受けて、今更ながらに左手に目をやる紳二。そこにはプレゼントの写真を撮ろうと思って用意したカメラがあった。
 すぐには状況がつかめなかった紳二だが、“女性”の入っている風呂場にカメラを持って乱入するということは、どういうことかということに思い至った時、額から滝のように汗が流れてきた。
「ちっ、違うんだ! 果穂! このカメラは……」
 大慌てで弁解しようとする紳二だったが、なぜか頭の中が白くなってしまって、言葉が出てこない。
「問答無用です! お父さん、あなたって人は!」
 果穂の目に軽蔑の色が浮かぶ。
「違うんだ、果穂、これは、これはジャージレッドの陰謀なんだ。信じてくれ〜〜〜」

 その後、紳二が果穂から許しをもらうまで、そりゃあもう色々とあったのだが、それはまた別の話であった。

(初出 『少年少女文庫』感想掲示板 2001/6/12)


【ほぼ公認(笑)、第11話の勝手に果穂ちゃん】

 その夜のこと……。
「どうしました? 頼香さん、元気が無いですね……」
 心配そうに頼香の顔をのぞき込んで尋ねる果穂。
 既にピンクのネグリジェに着替えているその姿は、めまいがしそうなぐらいにかわいいのだが、当然、頼香にとってはどうでも良いことであった。(なんとバチあたりな!)
「ん? 何でもないよ。ただちょっと……、ね」
 言いよどむ頼香。実はついさっき祐樹にうち明けたことで悩んでいるのだが、果穂には言えるはずもなく言葉を濁すばかりである。
「うーん。頼香さんらしくもないですね。
 ……あっ、分かった! せっかく男に戻った祐樹さんともっと一緒に居たかったのにってところですか? ふふっ、頼香さんも完全に女の子ですね♪」
 もしかして頼香を元気づける為に、わざと誤解をした振りをしているのかもしれないが、果穂は頼香をからかいにかかってきた。
「なっ、何のことだよ!」
 頼香は虚を突かれてちょっと顔を赤くしつつ応えたが、本心だけに反論しきれない。
「今更隠さなくても良いですよ。もっともっと思いっきり祐樹さんに甘えたいんですよね」
 頼香の反応を楽しむかのような果穂。いや、本当に楽しんでいるのだが……。
「いいだろ! 甘えたって。
 俺は小さな女の子。ゆーきは大人の男の人。俺がゆーきに甘えるのはちっともおかしくないぞ!」
 開き直った頼香。純情っ娘が開き直るともう怖いものなしである。それに、頼香も今の悩みを忘れる為に、果穂の挑発に積極的に乗っているという面もあり、ますます感情はエスカレートしている。
「素直でかわいいですよ。頼香さん♪」
 頼香の反応を軽くあしらうと、果穂はくすくすと笑った。
「なっ、何言ってるんだよ。果穂は! からかうんじゃないってば!」
 果穂からかわいいと言われて、なぜかドキドキしてしまった頼香であった。実を言うと頼香は、他人からかわいいと言われることに対してまだ慣れきっていなかったりする。
「からかってなんかいませんよ。かわいいからかわいいと言ったまでです。
 やはり恋する女の子は世の中で一番かわいいですね。うふふっ、抱きしめてぐりぐりしちゃいたいぐらいです。きっと祐樹さんもそう思ってらっしゃいますよ」
 確かにからかいではない。果穂にしてみたら頼香がかわいいというのは本心なのだ。いやいや頼香だけではない。来栖もかわいいし、少女と名の付く者は自分も含めてみんなみんなかわいいのである。
「もう、人のことばっかりからかって! そういう果穂は好きな男の人とかいないのかよ!
 ……果穂は自分から女の子になったんだから、実は男の人が好きなんだろ?」
 反撃に転じた頼香は、果穂の急所を直撃した。
「いやなこと言わないでください。私は男が好きだから女の子になったんじゃありません。女の子が好きだから、自分自身も女の子になったんです」
 ホントに嫌そうな口調で話す果穂。気持ちは分からないでもない。
「果穂もそろそろ男を好きになってみろよ。自分が女だってことがますます実感出来ていいもんだぞ」
 うんうんと頷きながら語る頼香。既にさっきまでの影が消えている。
 それを感じた果穂は、やれやれと思っている。さすがに姿は少女でも中身は年長者。こういう点ではまだまだ頼香ですら果穂の足下にも及ばない。
「いいんですよ。自分が女の子っていうのは、十分に自覚していますから。
 それに私は少女にしか興味ありませんし」
 もうこれで話はお終いという感じの果穂。しかし頼香は更に言葉を続けた。
「そうだ! ほら、果穂のことを好きだっていう男の人がいるじゃないか!
 ええっと名前は、確か……ジャージレッド!」
 ジャージレッドの名前を聞いた途端、果穂の顔に縦線が数本描かれた。よっぽどその名前を聞くのが嫌らしい。
「冗談はよしてください。第一ジャージレッドは妻子持ちですよ。それなのに私を好きだなんて、まったくロリコンなんだから……」
 自分のことは棚に上げて、プンプンと怒る果穂であった。
「はははははははっ! 呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン。ジャージレッド参上!
 果穂ちゃん。おじさん悲しいなあ。そんな態度されたら、果穂ちゃんの外伝を書いてあげないぞ」
 ガラリと窓を開けてジャージレッドが入ってきた。うーん、鍵はちゃんと掛けておこうね。
「誰もあなたなんか呼んでません!」
 更に顔の縦線が増える果穂であった。
「おかしいなあ、確かに呼ばれたような気がしたのに……。
 あっ、わかった。果穂ちゃん、恥ずかしがらなくても良いんだよ。さあ、おじさんの胸に甘えにおいで!」
 ジャージレッドの厚かましさ、ここに極まれりである。
「じゃあ、書かなくても良いですよ。私の外伝。
 いやあ、残念ですねえ。作者は登場人物をどうにでも動かせるのになあ〜。私をああしたり、こうしたり……。いや、ホントに残念ですよね。そうですか、書きたくないんですか……」
 ふふんっ、という感じの表情で果穂はそう言うと、ジャージレッドの顔をジッと見た。
「ごめんなさい。果穂ちゃんをああしたり、こうしたりしたいですぅ〜。是非とも外伝を書かせてください。お願いですぅ〜」
 急に下手に出るジャージレッド。あんたにゃプライドはないんかい?
「分かればよろしい。じゃあ外伝を書かせてあげますから。エッチなシーンは無しですよ」
 釘を刺す果穂。頼香は楽しそうに見ているだけだ。さすがに主人公の余裕である。
「はい、それはもうエッチなシーンはなしと言うことで……? えっ! そんなあ〜、果穂ちゃん。エッチなシーンも書かせてくださいよ〜」
 全国100万人の果穂ちゃんファンの期待を背負って、ジャージレッドは懇願したが、既に後の祭りであった。口は災いの元? かな……。
 こうしてうやむやのうちに頼香は楽しい気持ちでベッドに入ることが出来た。ジャージレッド、様々である。(ホントか?)

 というわけでジャージレッドの元にはお礼として、後日、果穂の生写真が送られて来るのであった。
 ……ということがあればいいな♪
「あるわけないでしょ!」

(初出 『少年少女文庫』感想掲示板 2001/7/25)


【来栖ちゃんの番外編だって勝手に果穂ちゃん】

「ふにゃあ〜、ねむいですぅ〜」
 疲れ切った表情で、教室の机の上に身体を預ける果穂。見るからに眠そうである。
「ごめんね果穂ちゃん。私の為に迷惑かけて。ここ数日間、ずっと徹夜続きなんでしょ?」
 来栖が心配そうに声をかけてきた。
「いえ大丈夫ですよ。それに来栖さんのことが無くても、さんこうの電源システムの修理をしなければいけないことには変わりありませんし」
 そうなのである。一週間前に来栖が体再生チャンバーを使って男の子になったのだが、元に戻ろうとしたその日に宇宙艦「U.S.S.さんこう」の電源システムにが故障して元に戻れなくなってしまったのだ。
 というわけで来栖は金曜日になってもまだ男の子のままなのであった。そして、果穂はというと、昼間は学校。夜はさんこうの電源システムの修理と多忙な一週間を送っていたのだ。
「それで修理はいつ終わるんだよ」
 頼香も話に加わってきた。ぶっきらぼうな言い方ながら、その口調から果穂を気遣っているのが感じられる。
果穂ちゃん夏服姿「ご安心下さい。修理は昨晩に終わりました」
 少女の顔の下に隠された技術者としての顔をちらりとのぞかつつ、果穂は親指を立てた右手をぐいっと差し出しながらそう答えた。
「えっ! ホント!? 良かったあぁ〜。果穂ちゃん、ありがとう!
 ……お礼は私に出来ることだったら何でもするからね♪」
 見るからにうれしそうな来栖。やはり工藤君のこともあるので早く女の子に戻りたい気持ちでいっぱいなのだろう。
「お礼なんてそんな……。まあ、その件は後で話し合いましょう。
 それよりも一週間ご苦労様でした。しかし元に戻る為にはまたお泊まりしないといけませんね。ご両親のお許しはすぐにとれるのですか?」
 まあ果穂の心配ももっともである。なにせ3人娘の中で来栖だけが外見の年齢どおりの少女(今は少年だけど)なので、外泊するにも色々と面倒なのだ。
「あっ、それなら大丈夫。ここ一週間ちゃんと根回ししといたから。いつでもお泊まりのお許しは出ることになってるもんね」
 明るく応える来栖。
「それじゃあ明日は第二土曜日でお休みですから、今晩“お泊まり”しましょう。
 学校が終わったらさんこうで待っていますので、来栖さんもなるべく早めにおいで下さい」
 果穂は来栖に向かってそう言うと、にこりと微笑んだ。しかしその微笑みの下に隠された果穂の思惑に来栖は気がつくことはなかった。

 その日の夕方、来栖がさんこうに着いたとき、既に果穂は何やら準備をしていた。
「あっ、来栖さん。いらっしゃい。ちょうど良かったです。今、用意ができたところですよ」
 そう言うと、果穂は大きな荷物を持つと、自分と来栖をホロデッキに転送した。
「えっ? ここは……!?」
 なにやら妙なデジャブを感じつつ、驚きの声をあげる来栖。
「気がつきましたか? この部屋の風景はですね……」
 大事な秘密を打ち明けるような雰囲気で、ゆっくりとした口調で話し出した果穂。しかし来栖がその言葉を遮った。
「“魔法の双子 みらくる☆ティンクル” のお家の中だ! もしかしてこれって……」
 驚きの声を上げた後、なんとなくこの先の展開が見えて来栖は、言葉を濁した。
「ピンポーン。当たりです。お礼としてくる何でもしてくれるって言いましたよね、来栖さん。
 ……じゃあ私が『れもん』で来栖さんが『みるく』ってことで」
 いそいそと大きなバッグから衣装とビデオカメラを取り出す果穂。めちゃめちゃうれしそうである。
「確かに何でもお礼をするとは言ったけど。ねえ、女の子に変身したあとの『みるく』だよね」
 たぶん違うだろうと半分あきらめつつも、一応聞いてみる来栖。
「もちろん女の子に変身する前の男の子の「みるく」ですよ。せっかく来栖さんが男の子になったんですから、この機会を逃す手はありません!」
 果穂なりの理屈で力説するその言葉を聞いて、来栖は反論する気持ちを失った。それにここで果穂の機嫌を損ねて、女の子に戻してもらえないのは困る。
「うーん、しょうがないなあ……。今回だけだからね」
 あきらめのため息を吐く来栖。
「もちろん今回だけですよ。だからこそこの機会を逃しちゃ駄目なんです。
 乙女の命も短いですけど、かわいい少年の命も短いんですからね」
 こう言った果穂だったが、別に果穂はショタに目覚めたわけではない。あくまでももともとは少女である来栖が変身している少年だからこそ果穂の趣味の範疇に入っているのだ。
 元々の少年相手に同じことをしようなんてことは果穂は思いつきもしない。
「じゃあまずはこれですね。おとなしく半ズボンとTシャツからいきましょう。胸が無いことを強調するために、身体にぴったりとしたのを選んだんですよ」
 そう言って衣装を来栖に渡すと、果穂も自分の衣装を鞄から出した。
「果穂ちゃんも着替えるの?」
 ちょっと嫌な予感を覚えつつ果穂に尋ねる来栖。実はここ一週間で男の子の感覚のなんたるかを詳しく知った来栖だったのである。
「もちろん双子ですから、お揃いの服を着るんですよ。番組でもそうですよね」
 そう言うと果穂は自分の服をするすると脱ぎだした。そして下着だけの姿になると、上は来栖とお揃いのTシャツ、下はキュロットを履きだした。
 その一部始終を来栖はジッと見つめてしまった。というか目を離すことが出来なかったのだ。
 女の子の着替えは見慣れているはずなのに、なぜかとても新鮮な感じがして、そして男の子にしか分からない感覚まで出てきてしまっていたのだ。
「どうしたんですか? 着替えてくれないんですか?」
 ちょっと悲しそうな声で果穂が言った。
 果穂も元男性なのだが、今の来栖の心理状態には気がついていないらしい。いや、もしかして気がついて遊んでいるのかも……。
「いや、着替える。着替えます! だから果穂ちゃん、ちょっとあっち向いてて」
 恥ずかしがる来栖。
「大丈夫ですよ。女の子同士じゃありませんか」
 やはり遊んでいた果穂だった。
「えーん、だから今の私は男の子なんだってばあ〜。果穂ちゃんに見られていると恥ずかしいのよぉ〜」
 顔を赤らめる来栖。
 こうして倒錯的なコスプレ撮影会の夜は更けていく。さあて来栖ちゃんは無事に女の子に戻れたのでしょうか?

(初出 『少年少女文庫』感想掲示板 2001/7/28)


【ご期待感謝♪ 外伝風・勝手に果穂ちゃん】

「それではこれより『秘密結社果穂ちゃん倶楽部』第9回会員総会を開きます。会長、ご挨拶を」
 唯一の女性会員である信夫美優(しのぶ・みゆ)の声が体育館に響く。
 何故か男の子にはまったく興味がない彼女は『秘密結社果穂ちゃん倶楽部』に入会するやいなやメキメキと頭角を現し、会長に次ぐ地位を得て議事進行役を勤めていたのだった。
 しかし不思議なことに彼女が『秘密結社果穂ちゃん倶楽部』に入会したいきさつを本人も含めて誰も明確に覚えていないという事実があったのだが、彼女の有能さの前にはどうでも良いことであった。
 何しろ美優の存在があって始めて女子更衣室での果穂ちゃんの会話等をレポートしてもらうことが可能になったのである。ちょっとばかりのオカルトには目をつぶるべきであろう。
 話を戻して……。
「うむ、諸君も知っての通り我々『秘密結社果穂ちゃん倶楽部』の活動は順調に進んでいる。既に全校男子生徒のうち3分の1にあたる生徒が会員となり、日夜、果穂ちゃんの愛くるしい姿を激写したり、レポートしてくれたりしている」
 仮面をかぶった謎の会長が壇上で力説している。
 体育館という場にふさわしく赤いジャージを着用しているのだが、いったい誰なのであろう? 大人……、いや “おっさん” であることは間違いないのだが……。しかし全校男子生徒の3分の1が入会していて秘密結社も無いものである。
「まことに喜ばしいと言える。しかしである! 我々の理想は高い!
 今はまだ学校の中だけだが、いずれは果穂ちゃんの素晴らしく愛くるしい魅力を世に知らしめ、明日は街のアイドル、そしていずれは芸能界デビューを果たして日本の、いや世界のアイドルへと羽ばたいていただくのだ!!」
 静かに話し始めた謎の会長は、徐々にエキサイトして最後は絶叫にも似た声を張り上げた。
 腕を振り回し、口から泡を飛ばしているその姿は、後光が差しているかのようにかっこいい……、と本人は思っている。
「果穂ちゃん、万歳!」
 タイミング良く美優が叫ぶ。
「万歳! 万歳! 果穂ちゃん、万歳!」
 体育館に居並ぶ男子生徒達も続いて張りさけんばかりの声を口々に上げた。
 ちょっとどころか、かなり異様な光景である。しかしその光景を見ながら謎の会長は満足そうに頷いている。
「続きまして『秘密結社果穂ちゃん倶楽部』の会則を唱和します」
 しばらく『果穂ちゃん、万歳』の声が体育館を震わせていたが、その熱狂が少し収まったのを見計らった美優はそこまで言うと大きく息を吸った。
「第1条 我々『秘密結社果穂ちゃん倶楽部』は、果穂ちゃんの可愛らしさを日々確認することを誓います」
「第2条 果穂ちゃんは人類共通の宝ものです。果穂ちゃんを独占する者には制裁を加えることを誓います」
「第3条 何があろうとも我々『秘密結社果穂ちゃん倶楽部』の面々は果穂ちゃんの為に日夜戦い続けます」
 更に第10条まで会則の唱和は続いたが、疲れる連中である。
「諸君、よくぞ今まで我らがアイドル、希望の星、果穂ちゃんを独占しようとする魔の手から守ってくれた!
 果穂ちゃんを独占する者は許せない! 果穂ちゃんのあの可愛らしさこそ現代の女性が無くした清楚な美しさであり、守るべき貴重な宝である。
 恥じらいを忘れた現代女性は男性を押しのけ、虐げ、尻にひく。そんな中、果穂ちゃんのような女性はきわめて貴重である。我々『秘密結社果穂ちゃん倶楽部』は、果穂ちゃんを守ることに全力を尽くすことをここに誓う!」
 謎の会長がまたしても演説を始めた。陶酔しきったその姿は、本人のイメージの中では美しいのかもしれないが、突き出た腹がすべてを台無しにしていることを本人は知らない。
「会長、そろそろオーナーがいらっしゃるお時間です」
 体育館の壁に掛かる時計をちらりと見た美優が壇上の会長に声をかけた。
「おお、もうそんな時間か。よし、諸君、お出迎えの体勢を取るぞ。粗相のないようにな」
 なんと『秘密結社果穂ちゃん倶楽部』には謎の会長(笑)の更に上に、謎のオーナーがいたのだった!!
 果たしてその正体は!?

「待たせたかな?」
 夏というのにスーツをピシッと着込んだ本当にかっこいい “おじさま” という感じの男性が体育館に入ってきた。
 やはり仮面をかぶって顔を隠しているのだが、そのきざな格好ですら似合っている。
「いえ、とんでもございません。私からの挨拶がちょうど終わった所です」
 先ほどの態度とガラリとかわり、急にへりくだった態度をとる謎の会長。どうやら権力には弱いらしい。
「オーナー、お言葉をいただきたく存じます」
 美優が謎のオーナーに声をかける。雰囲気は有能秘書そのものだ。
「やあ、美優ちゃんこんにちは。果穂ちゃんの次に可愛いね」
 そういいながら謎のオーナーは壇上にあがり、謎の会長が今まで演説していた場所に立つと、ゆっくりと話し始めた。
「『秘密結社果穂ちゃん倶楽部』のみなさん。いつも活動ご苦労様です。
 私も果穂ちゃんの可愛らしさに感動し皆様の活動に共感いたしましたからこそ、こうして写真撮影の為のカメラの用意からフィルム代や現像代、そして同人誌制作の為の資金まで提供させていただいているわけですが、皆様の活動は私の期待通りの素晴らしいものです。重ね重ね有難うございます。」
 これまた腰の低い態度で話をする謎のオーナーである。
 しかしあまりにも腰の低いその態度は、腹に何かを隠しているようでどことなく怪しい。とはいっても小学生の会員達にはそんなことまで分かるはずがない。
「果穂ちゃんの愛らしさは現代にあってはとても貴重です。ここまで愛らしく清楚で美しい果穂ちゃんを誰か一人が独占する事は、人類に対する犯罪です。
 果穂ちゃんは人類共通の宝物です。皆様の日々の活動はこの素晴らしい宝である果穂ちゃんを守る力になることは間違いありません!」
 この後もしばらく話が続いたのだが……。
「オーナー、そろそろ挨拶を切り上げていただかないと残りの時間が……」
 時計を見ていた美優が謎のオーナーにそっと声をかけた。
「おお、そうだった。では後のことは美優ちゃんに任せよう。よろしく頼む」
 そう言い残すと謎のオーナーは壇上脇に並べられているパイプ椅子に座った。横には謎の会長が座っている。
「それでは本日のひとつめの議題ですが、果穂ちゃんは今度海に行くという情報を掴んでいます。偶然をよそおって海で出会い、スクール水着ではない私服の水着写真を撮らなくてはなりません。そのためには……」
 壇上でテキパキと議事を進行させる美優。司会役も堂に入ったものである。

「ところでジャージレッドよ。『秘密結社果穂ちゃん倶楽部』の活動は順調そのものだな」
 なんと!? 謎の会長はジャージレッドだったのか? 気がつかなかった(嘘)……。
「はい、庄司様の資金援助もあり同人誌も最高レベルのものが作成出来ており、有り難い限りです」
 なんと、なんと!? 謎のオーナーは果穂の父、庄司紳二だったのか? 気がつかなかった(嘘×2)……。
「ふふ、活動を通じて貴様は果穂の日常写真の数々を手にすることが出来る。私は、果穂に悪い虫が付くことを防止することが出来る」
 にやりと笑いながらジャージレッドと会話する果穂パパの紳二。
「お見事な戦略です。果穂ちゃんに近づく男子生徒を全て『秘密結社果穂ちゃん倶楽部』に入会させてお互いを相互に監視させる。それにより男子生徒の特定の誰かが果穂ちゃんと仲良くなるのを防ぐ。
 私にも娘が一人いますが、将来参考にさせていただきたいぐらいです」
 大事な資金源かつ果穂ちゃんの父という立場の紳二に逆らえるはずもないジャージレッドは、ここぞとばかりにこびへつらう。
「そう褒めるな。果穂に近づく男を完全に排除することが出来ない以上、仲間に取り込み私の管理下に置くことが一番良い方法だからな。ともかく果穂は私の娘だ。誰にもやらん!」
 静かに、だが力強く語る果穂パパ。まったく親バカ無限大である。
「なるほど、そういう裏の事情があったのですか」
 突然、背後から果穂ちゃんの声がした。
「「!?」」
 驚きのあまり声も出ない紳二とジャージレッド。
「この会の噂を聞きまして真偽を確かめにきたのですが、まったくお父さんってばいったい何を考えているんですか?」
 心底呆れたという声の果穂。
「いや、だから、違うんだ! これはだな……」
 必死にいいわけをしようとする紳二だが、言葉がうまく出てこない。
「呆れてはいますけど、非難するつもりはありませんから安心してください。
 私も特定の男の子とつきあうつもりはありませんから、男の子達がお互いに監視しあって私に手を出して来ないのは有り難い状況ですしね」
 果穂は優しくそう言うと、背後から回り込んで椅子に座っている2人の前に姿を現した。
「!? 果穂……、その格好は?」
 驚く紳二。なんと果穂は猫耳メイドさんコスプレをしていたのだった。
果穂ちゃんコスプレ姿「ファンサービスですよ。じゃあ、行って来ます」
 そう言い残すと果穂は壇上の美優の横まで走って行った。
「果穂ちゃん!?」
 やはり驚く美優。
「美優ちゃん。マイク貸して♪」
 美優の驚きを無視して明るく言う果穂。
「えっ? う、うん」
 素直にマイクを差し出す美優。果穂はマイクを受け取ると、突然の果穂の出現に驚いてざわついている会員達に視線を移した。
「みんなーー! こんにちはー! 果穂でーす! 『果穂ちゃん通信 Vol.3』見ましたー!
 とっても良くできた本だと思います。こんな本を作っていただいてうれしいですぅ〜。ですから今日はお礼にきました!」
 アイドルのノリで挨拶をする果穂。実は果穂にしてみたら特定の男の子とつきあうつもりはさらさらないのだが、女の子になって可愛いコスプレをするようになってからはファンの賛辞をとても嬉しく思っていたりする。
 もちろん女性ファンも男性ファンも分け隔てない。ファンに賛辞される可愛い女の子の自分という立場に酔っているのだ。

「「「うおおおお――っ!!」」」

 体育館中に予期せぬ嬉しい驚きの雄叫びが響く。
「今日は私のコスプレショーをお楽しみ下さい♪」

 こうして『第一回、果穂ちゃんワンマンコスプレショー』は始まったのだが、その模様は『秘密結社果穂ちゃん倶楽部』の会員でない方には教えて差し上げられないのでした(笑)。

 なお、入会案内は美優ちゃんが受け付けているそうですから、彼女にご相談下さいませ。m(__)m

(初出 『少年少女文庫』感想掲示板 2001/8/08)

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【果穂ちゃん通信・Vol.1】編集後記

果穂ちゃん倶楽部の会員の皆様へ。いつも活動ご苦労様です。
常日頃の皆様の活動の成果が一冊の本になってまとまりました。
果穂ちゃんの可愛らしさ、愛らしさを誰よりもご理解していただいて
いる皆様には改めて言う必要もありませんが、『果穂ちゃんは最高!』
です。この【果穂ちゃん通信・Vol.1】を隅々まで読んで、
果穂ちゃんの可愛らしさをご堪能下さい。
特に今回はMONDO会員のイラストが冴え渡っています。
おしみのない感謝を捧げます。ありがとうございました。

なお、『果穂ちゃん通信編集部』では皆様の投稿をお待ちしています。
感想掲示板に皆様の果穂ちゃんレポートをお書き下さい。
もしかしたら今度はあなたの文章が【果穂ちゃん通信・Vol.2】に載る
かも!? それではよろしくお願いいたします♪

                  果穂ちゃん倶楽部会長 ジャージレッド 

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