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 何もない部屋。生活のカケラすら感じられないガランとした空間。そこで一人の少女と成人男性のキャニアス人が相対していた。

「はぁはぁはぁ……」
「その程度か、小娘」

 オーラブレードを手にした来栖と、フェイザーブレードを持つイヌ科ヒューマノイドのキャニアス人。体格の違いは歴然としている上に、技量の差もキャニアス人の方が上。来栖は徐々に壁際へと追いやられていったのだった。

「馬鹿にしないでよ!」

 オーラスティックを握る手に力を込める来栖。ブレードの輝きがほのかに強くなっていく。だが、数刻前に比べるとそれも弱い輝き。

「ええーい!」

 来栖がオーラブレードを振るうも、そのことごとくが相手のキャニアス人に受けられている。その上、その攻撃ペースも徐々に落ちてきている。すなわち、受け手にとって余裕が生まれるという事だ。

「ふんっ」

 大振りになった来栖の隙を突いて、オーラブレードをすくい上げるように跳ね上げるキャニアス人。それ自体の来栖が加えた力の反動も加わって、手元からオーラスティックが跳ね飛ばされる。

「あっ!」

 獅子は兎を追いつめるにも全力を尽くすと言うが、その諺がそのまま当てはまるかのごとく、攻撃の手を緩めない。戦闘民族であるキャニアス人の本領発揮だ。丸腰になった来栖に容赦なくフェイザーブレードを突き立てる。

「オーラバリ……」
「終わりだ」

 来栖のオーラ特性が最も発揮されるオーラバリヤー。だが、その展開よりも早く、喉元に突き付けられるフェイザーブレード。その切っ先を突き付けられて、来栖は息を呑む。冷や汗が首筋を伝わる。明らかに勝負は決したようだった。

「負けちゃった……」

 床に膝をついて、息を整える来栖。その姿を見下ろして、相手のキャニアス人はフェイザーブレードの刃を消失させる。悔しそうに見上げる来栖だったが、ややあって一言つぶやく。

「……プログラム停止……」

 その一言で目の前のキャニアス人、そして「部屋」自体が薄れるように消えていった。後に残ったのは来栖と跳ね飛ばされたオーラスティック。そして初めからそこで戦いを見守っていた頼香と果穂であった。



らいか大作戦・番外編10

〜友との戦い・我との戦い〜

作:かわねぎ
画:ノイン さん




 U.S.S.さんこうホロデッキ。そこで来栖達は改良型オーラブレードの性能試験を行っていた。実戦形式でのデータを取るために、ファイザーブレードの剣術教習プログラムを使ってシミュレーションを行っていたのだった。

「来栖さん、ご苦労様でした」
「疲れたろ。ほら」
「ありがと、頼香ちゃん」

 オーラスティックを杖代わりに、よいしょ、と立ち上がる来栖にねぎらいの声をかける果穂と頼香。頼香は冷たいドリンクの入ったカップを来栖に手渡す。嬉しそうに受け取る来栖。髪の先がおでこに貼り付いている位に汗をかいた後だけに、喉が渇いていた来栖にとって頼香の気遣いが嬉しい。

「これで頼香さんと来栖さんのデータが取れました。ありがとうございました」
「いやなに。俺もいい運動になったよ」
「負けちゃったけど、あれでよかったの?」
「来栖さん、今日の目的は勝ち負けでは無いんですよ」
「むしろ負ける位の相手の方が、オーラブレードの性能を試せるだろうしな」
「でもさぁ……」

 どうも先程のシミュレーションの結果を気にしてしまう来栖。果穂や頼香の言うとおり、勝敗ではなく、負荷環境でオーラブレードの性能をどこまで出せるか。すなわちいかに強い相手と戦わせるか、がポイントなのだ。極端な言い方をすれば、データ取りには被験者を生かさず殺さずというところか。そうは言っても、来栖が勝ち負けにこだわってしまうところは、純粋に小学生なので致し方ないのだろう。

「でも頼香ちゃんは勝ったじゃない」
「ああ。でもあれだって俺は必死だったんだぞ」
「強いもんね、頼香ちゃんは。何で私だとダメなんだろ」
「ダメって事ないぞ。オーラブレードの使い方は上達してるしな。ただ……」
「ただ?」

 どのように来栖を納得させるか言葉を探す頼香。下手な慰めはしても逆効果だろうし、かといって厳しい事を言っても凹んでしまうだけ。難しい年頃故に、頼香も言葉を選んでしまうのだ。来栖の催促に、アドバイスに徹する事にしたようだ。

「ちょっと直線的というか、単調というか……」
「どういうこと?」
「力任せにオーラブレードを振るっているという感じだな」
「そうなのかな」
「来栖も俺も子供の身体だから、大きな相手と力比べになったら負けるのが当たり前だ」
「でも頼香ちゃんだって、さっきのシミュレーションは力比べじゃない」
「俺だって四六時中力押しばかりじゃないんだぞ。緩急付ける事が必要なんだ」

 そう来栖を諭す頼香だが、果たしてどこまで分かってもらえるか。当たり障りのない技術論なのだが、こればかりは訓練を重ねるか、実戦を通してでないと理解できない事かもしれない。

「緩急ねぇ。私も頼香ちゃん位に上手く使いこなせるかな」
「まあ、練習だな。俺だってそうだよ。さっきの俺のシミュレーションだって正直言うと70点ってところなんだ」
「あれで!?」
「ああ。来栖に言っておいて何だけど、俺もある意味力押しで押し切ったからな」

 どうやら頼香もシミュレーションの内容には不満を抱いているようだった。アクシデントから連合士官の少女の身体になったとは言え、今では自分がライカ・フレイクス。それならば連合士官として、より高みに昇りたいというのが頼香の本音だった。

 そんなやり取りの脇で、測定データを手持ちのデータパッドに転送する果穂。家でじっくりと結果を検討して新型オーラスティックに反映させる事だろう。この先の作業は果穂が大変になる番なのである。

「なあ、果穂。データ取りは終わりなんだろ」
「ええ、そうですけど」
「その前に一戦だけシミュレーションやりたいんだけどな」
「構いませんよ。どういった内容にしますか?」

 片付けに入る果穂に対して、すまなそうに申し出る頼香。果穂の作業が増える事に対する申し訳なさなのだが、当の果穂は全然気にもせずに、シミュレーションプログラムを検索していく。頼香にとっては自分のワガママなのかもしれないが、果穂にとっては大事な友人の頼み事なのだ。

「そうだな。力よりもスピードと技術重視で行きたいな」
「そうしますと4つほどプログラムがありますが、もう頼香さんはクリアーしてますよ」
「復習か。だったらキャロラット相手のプログラムでやってみるかな」

 頼香の言葉に、コンソールを叩きつつ、プログラムをセットする果穂。実行をする寸前で、ふとその手が止まる。人差し指を頬に添えて、ちょっと考え込むような表情。頼香もそれに気が付いたようだ。

「どうした、果穂」
「せっかくですから頼香さんに検証してもらいたいプログラムがあるのですが……」
「検証? 果穂が作った物か?」
「はいオリジナルで難易度の高いプログラムの試作品なんです。どうでしょう」
「わかった、それで試してみよう。それでは頼む」

何が来るんだ?

 頼香はそう言うと、オーラスティックを握り締め、ホロデッキの壁際でシミュレーションプログラムが始まるのを待っていた。何が出るか……誇り高きラファース人か、知略に秀でるラクティーア人か、はたまたMOE-DOLLが。いずれにしても果穂ならば頼香の力量を知っているだけに、それを上回る相手をプログラムしてくるのだろう。

 緊張感が高まる中、オーラスティックを握る頼香の手に力が入っていく。格子状の壁がだんだんとぼやけていき、先程来栖が戦っていた部屋が再現されると、次に光が人型に集まって、対戦相手を形作る。それほど大きな相手ではないことがシルエットから分かる。やがてその姿がはっきりしてくると、頼香は小さく驚きの声を上げたのだった。

「果穂!」

 オーラスティックを片手に佇む、栗色の髪の少女。いつも側にいる、見間違う事のない相手。本来の果穂のオーラ能力、と言うよりも運動能力から言うと、頼香の足元にも及ばない筈である。だが相手はホロプログラム。能力は果穂よりも数段上、下手をすると頼香よりも上に設定してあるはず。そう思うと、侮れない相手なのだろう。

「頼香さん、お相手よろしくお願いします」
「ああ。よろしくな……果穂!」

 ホログラム果穂の力量が分からないので、とりあえず手合わせとばかりに、二人の間合いを一気に詰める頼香。その瞬間にオーラブレードを展開して、袈裟懸けに斬りかかる。もちろん本気ではなくあくまで様子見。相手が見た目通りの果穂なら、受けるのが精一杯の筈。

 対する果穂はオーラスティックを水平に構えて、頼香の攻撃を受けようとする。頼香のブレードが果穂のスティックに触れるその刹那、果穂が一言つぶやく。

「オーラシールド展開」

 果穂の周りにさっとオーラの壁が展開され、頼香のブレードを受け止める。いや、むしろ頼香を押し返している。頼香が本気になれば果穂のシールドは破れる程度の強さのはずで、頼香の攻撃を押し返せるほどの強度は無かったはずだ。いつもの果穂では無い事を確認した頼香は、後ろにさっと飛び退く。

 間髪入れずオーラスティックを銃のように構える果穂。頼香が間合いを取ってくれたので、本来果穂が得意の中距離戦。オーラフェイザーを使うことが出来るのだ。自らシールドを破り、念じるような表情をする果穂。オーラシールドの破片と共に、オーラフェイザーの輝きが幾本か頼香へと延びていく。

「くっ、オーラシールド!」

 飛び退きつつ、オーラスティックで上半身を庇うように構えてシールドを張る頼香。果穂の放ったオーラフェイザーを難なく中和していく。受けつつも再び間合いを詰められるように体勢を立て直す事は忘れない。

「頼香さん、どうでしょうか」
「お前のオーラシールドの使い方……まさか……」
「ご想像にお任せします」

 頼香はシールドを消し、再びオーラスティックにブレードを展開させる。ホログラム果穂の能力が頼香の想像通りならば、次は斬り合いになるはずだ。果穂もスティックにブレードを展開させる。接近戦はまず仕掛けてこないはずの果穂。その構えを見て、頼香の表情がわずかにこわばる。

「……やはりな……厄介な相手だな」
「そういう事です。私から行きますね」


  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★


 本来の果穂と来栖は、頼香とホログラム果穂から少し離れた位置でその戦いを見守っていた。ホログラム側、すなわち頼香からは壁になっていて来栖達を見えないのだが、その逆は見える。先程の来栖とキャニアス人のシミュレーションも同じように果穂と頼香が観戦していたのだった。

「果穂ちゃん、あの果穂ちゃんって……」
「来栖さんも既におわかりですか」
「私と頼香ちゃんのオーラ能力だよね」
「はい。あの果穂は私達3人の能力を兼ね備えています」

 コンソールに流れ込む戦闘データを目で追いながら、来栖の疑問に応える果穂。果穂が作成した頼香専用シミュレーションプログラム。プログラムパターンと外見パターンは自由にリンクできるので、見た目頼香同士の戦いという事も出来る。そうはしなかったのは、区別が付かないという理由と、果穂の姿なら頼香の油断を誘えるかもしれないと言う考えがあったからである。

「姿は私なんですが、戦術行動パターンは頼香さんベースなんです」
「ってことは、今は頼香ちゃん同士が戦っているってこと?」
「ええ。私の手の内が全て分かる。もちろん頼香さんも同じ事です」
「自分相手で勝てるの?」
「難しいでしょうね。それに私と来栖さんの能力もあるのですから」


  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★


 果穂の冷静な判断と同じ事を、頼香は肌で感じ取っていた。ホログラム果穂のオーラブレードと数度剣を交えている。その太刀筋から、誰の動きがプログラムされているかを知ったのであった。

「来栖のシールド、果穂のフェイザー攻撃、それに俺の接近戦能力か……手強いコンビネーションだな」
「それぞれの力は本物と同じに設定していますよ」

 鍔迫り合いする二人。技も互角、力も互角だ。いや、能力のキャパシティは3人分のホログラム果穂の方が上。だが、頼香の考えは違った。目の前の果穂は、自分と全く同じ力量にまで落とす事が出来る。

 接近戦だけならば、オーラブレードで斬り合うか、来栖のようにシールドを攻撃に転用するかのどちらか。それだけで果穂の能力を発揮する余地は無くなる。さらにオーラブレードの特質がある。攻撃と防御シールドは同時に使えない。すなわち斬り合いを続けていれば、来栖の能力も封じられるという事だ。

 シールドを張る隙を与えないために、オーラフェイザーを撃つ隙を与えないために、猛攻を仕掛ける頼香。だが、そのことごとくが果穂に受け止められている。もちろん果穂も頼香を攻めているのだが、当然のように頼香に防がれている。

「なかなかやりますね、頼香さん」
「それは俺のセリフだよ。なら、これならどうだ!」
「どうぞ!」

 二人とも同じタイミングで強撃を振るう。お互いのオーラブレードがぶつかり合い、光の干渉を引き起こす。自分が仕掛けた力と同じだけの力をオーラブレードの刀身で受け止めている訳だ。押すにしても引くにしても、相手の力量を越えなければ、そこに付け入られてしまう。文字通り、力の拮抗だ。

(くそっ、見た目は果穂だけど、太刀筋は俺と同じか……)

 これ以上は耐えられないとばかり、お互いにオーラブレードを跳ね上げる。切っ先を合わせて、立て直しだ。一転して動きを止めて、相手の様子を伺う。さすがに達人同士ではないので、攻め入る隙はあるのだが……

(隙があるんだが……それは俺も同じ事か……果穂も同じ事考えてるな……)

 頼香の行動パターンを持つホログラム果穂。それ故、頼香の癖も再現されている。頼香にとってこのシミュレーションは、自分の動きをビデオで見せられるよりも、はるかに自分の癖の研究になるのだ。だが、目の前の果穂の隙はそのまま頼香の隙。お互いに同じ隙を狙っている事になる。

(なら、揺さぶりをかけてみるか)

 プログラムにどこまで「自分」が再現できる物なのか、それを確かめるかのように、動きを変えてみる頼香。攻撃のリズムを全身を使ったものに切り替える。果穂の攻撃も、鋭いステップで受け流す。果穂の運動神経で自分の動きについてこれるかどうか。それを確かめたいのだった。

「さすが頼香さん、動きが俊敏ですね。ですけど……!」

 一度は受けに回った果穂も、間合いを取り直して頼香に合わせるような動きを取る。頼香が攻めると果穂が引き、果穂が攻めると頼香が引き、お互いに決め手に欠ける状態になっていたのだった。

(このままだと俺の方が疲れるのが先か……)

 動きが激しくなった分、疲れも早く来る。ホログラムに対する生身の人間の不利な部分がここだ。頼香の動きがわずかに緩慢になってきているのに対し、果穂の方は相変わらずの動きで攻めてくる。徐々に受ける側に転じてつつある頼香だった。

「頼香さんが負けても、私がきちんと介抱してあげますからね♪」
「俺は果穂の毒牙にかかる気はない!」

 鍔迫り合いを繰り替える頼香と果穂。そんな中でも余裕があるのか、果穂がそんな事を頼香に話しかける。ホログラムの果穂とはいえ、どうやら嗜好は本物ベースのようだ。受け応える頼香の方には余裕が見られない。このまま押されると、本当に果穂の言うとおりになってしまう。

(このままでは果穂の思い通り……ん、果穂の?……もしかして……)

「まだ体力が続きますか。さすが頼香さんです」
「ああ、ホログラムと違ってとことんまでファジーに出来てるからな」
「私も頼香さんのパターンだけでお相手します」
「そう願うよ。お前のためにもな!」

 疲れを押さえて、打ち込みの激しいラッシュ。だが段々と大振りになっていく。そのことごとくを受け止める果穂。頼香としては口惜しいが、劣勢は事実。そのまま起死回生の一撃に移る。渾身の力を込めた一撃。だが、それも果穂にがっしりと受け止められてしまう。

「果穂、俺のような激しい動きだと……」
「はい?」

 力比べになった二人。頼香が堪えながらも口を開く。応える果穂はどこか余裕の表情だ。じりじりと押されつつも、しっかりと果穂に言い返す。

「……パンツ見えるぞ」
「え? きゃっ……」

 慌てて戦闘服のスカートの裾を気にする果穂。こんな手は使いたくなかったが、頼香は予想以上の効果にわずかに呆れ顔になる。それも一瞬で、オーラブレードの切っ先を果穂の眉間に向け、ぴたりと止める。

「あ……」

 眼鏡のフレームにコツンとオーラスティックの先を当てる頼香。あっけに取られた表情の果穂だが、すぐに不満そうな表情になる。ほとんど騙し討ちと言ってもいいだろう。

「頼香さん……」
「お前、ホント、果穂なんだな……」
「ずるいですよ」
「だって見えるのってホントの事だし、それに……」

 果穂が観念してブレードを収めたのを見て、頼香もオーラスティックを収める。そして果穂に近づいて耳元に囁きかける。

「女の子に馴染みすぎ……元男の反応じゃないぞ、それ」
「……女の子なら気にします!」

 まだ憮然とした表情の果穂。もちろん頼香にしてもこんな内容で勝ったとは思っていない。だが、そんな果穂の表情は普段見られない事もあって、なかなか楽しい結果になったな、と思ってしまうのだ。

「プログラム終了」

 頼香の一言、事実上の試合終了宣言で、「部屋」と「果穂」の姿が段々と薄れ行く。そして後に残ったのはオーラスティックを持った頼香と、コンソールを覗き込む本物の果穂と来栖。頼香は緊張感が切れた事と疲れから、思わずへたり込んでしまっていた。

「頼香ちゃん、お疲れ様」
「ああ……」
「最後どうなったの? 急に果穂ちゃんの動きが止まったけど」

 来栖が尋ねるが、頼香としてはちょっと答えにくい。自分の実力で勝った訳ではないので、ついつい言葉を濁してしまうのだった。

「う〜ん……油断というか何というか……」
「でも、すごい接戦だったよね。あの果穂ちゃんもかっこ良かったし」
「ああ。手強かったよ」

 いつまでも座り込んでいられないと、立ち上がろうとしてオーラスティックを杖代わりに体重をかける。そこに果穂が手を差し伸べてきたので、頼香もその手を取って立ち上がるのを助けてもらう。

「頼香さん、私の性格を見抜いてますね。見事です」
「ああでもしないと勝てなかった。俺と同じ能力ってのは手強いな」
「そうですね。ある意味弱点がないのですから。それはさておき……」

 果穂が簡単にシミュレーションの感想を頼香に話すと、頼香も率直な感想を答える。自分の欠点を客観的に見る事が出来たし、何より「自分」と剣を交える事が出来たのは、何よりの経験になった。

 今回のシミュレーションは果穂の自信作。それを頼香がどういった手段でも打ち破った事に、素直に感嘆していた。そうは言っても技術者として、わずかな悔しさがあるのも事実で、ちょっと意地悪にこんな事を頼香に言いたくなってくるのだった。

「……頼香さんだって見えてるんですよ」

 果穂の言葉に一瞬きょとんとする頼香。何を言われたのかを数刻遅れて理解すると、今度は頬を染めて、思わずスカートの裾を押さえてしまう。

「う゛……戦いの途中でスカートなんか気にしてられるか!!!」
「とは言っても……ねえ、来栖さん」
「うん、見えてたよ」
「ううう……」

 今更ながら恥ずかしさがこみ上げる頼香。元男とはいえ、頼香だって人の事は言えない。十分に女の子な感性が身に付いているのである。スカートの中を見られるのはやはり恥ずかしい。もちろん果穂がそのシーンをビデオ記録していた事は言うまでもないだろう。

「さて、シミュレーションはこれで終了しましょう」
「ああ。悪かったな、時間取っちゃって」
「かまいませんよ。それより汗をかきましたから、先にシャワーを浴びませんか?」
「あ、私もシャワー行く。頼香ちゃんも果穂ちゃんも一緒に行こうよ」

 果穂の提案に喜んで賛成する来栖。つい今まで激しい運動をしていた頼香は、確かに果穂の言うとおり、汗だくである。シャワーでも浴びてさっぱりしたいところだ。

「それじゃ、行こうか」
「うん」
「はい」

 頼香達3人が連れ立ってホロデッキを後にする。その時、ふと、頼香が思いついた事を口に漏らす。

「……汗かいたのって俺と来栖だけだろ……」

 そんな頼香のつぶやきが聞こえているのかいないのか。果穂と来栖は楽しそうにお喋りをしながら廊下を歩いて行ったのだった。




あとがき

 らいか大作戦番外編10。今回はノインさんの頼香イラストへストーリーを付けてみました。もともとこのイラスト、TS9の15万ヒットを踏んだという事で、描いていただいたものです。手強い敵を待つ頼香。そんなイメージから、こんなストーリーが生まれました。相手は果穂。運動神経がお世辞にもいいとは言えない果穂ですが、こんな活躍をさせてみるのも面白いかと思いました。でもラストはやっぱり果穂ですね。



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