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 小学校のグラウンド。
 頼香達のクラスは体育で、今日はドッジボールをやっている。
 男女別に4チーム構成。今対戦しているのは頼香がいるチームと男子チームだった。
 体を動かすのが得意な頼香は、当然攻撃の要として活躍していた。
 今は、内野に残っているのは男子チーム4名に対して、女子チーム2名。
 頼香と来栖だ。

「俺たち二人になっちゃったな」
「まったく頼香ちゃん以外狙って。男のくせにやる事がせこいんだから」
「なに、俺たちはまだ二人いる。逆転可能だ」

 女子チームは外野から頼香にパスして、頼香が男子に当てていく、という作戦を取っていた。
 対する男子チームは最初は頼香を潰せば楽勝と思っていたのだが、ほとんどのボールを頼香にキャッチされてしまい、返り討ちにあってしまったのである。
 そこで男子チームは、頼香以外の女子に当てていく作戦に切り替えた。
 その作戦が功をなして、女子チームを追い込んでいき、今や内野を二人まで減らしたのである。

「頼香さん、はいっ!」
「よし!」

 外野からのボールを受け取り、上半身を男子チームの内野に向けて、思い切って投げる。
 男女間の体力差がわずかに開きつつある年頃ではあるが、頼香の球速は平均的な男子よりも上だ。
 その勢いのあるボールに男子チームの内野が次々と沈められていったのだが、今や内野にいるのは運動能力の高い男子達のみ。
 頼香のボールはがしっと受け止められてしまう。

「ちっ……」
「ふふん。ほらよ、戸増……くらえぃ!」

 軽く舌打ちする頼香を余裕で見返す男子児童。
 そして負けじと勢いのあるボールを頼香にぶつけようとする。
 甘いな、とばかり、真っ正面でそのボールを受け止める頼香。
 ボールを抱き抱えるように、上半身でボールの動きをがっしりと止める。

「……いたっ!」

 ところが、突然襲った刺すような痛みにボールを取り落としてしまう。
 静かにバウンドするボール。
 頼香は思わずボールの当たった胸を押さえてうずくまってしまっていた。

『ピィィィィィ』

 頼香の外野行きを促すホイッスルではなく、試合終了を告げる長い音。
 すかさず来栖が頼香の側に駆け寄り、しゃがみ込んでいる頼香の顔を心配そうに覗き込む。

「頼香ちゃん、大丈夫?」
「あ、ああ……痛かったけど……」

 そんな二人の前に、ボールをぶつけた男子児童がすまなそうな表情で近づいてくる。
 来栖がその男子をきっと睨むようにして、非難の言葉をぶつける。

「ちょっと、頼香ちゃん痛がってるじゃない。女の子に思いっきりぶつけるなんて」
「ごめん。戸増ならあの位平気だと思ったんだけどな……」
「俺なら大丈夫だよ。ちょっと痛かったけどな。さ、体育の時間も終わったし、片づけ片づけ」
「ほんと、ごめんな」

 そう言って頼香は大丈夫であることをアピールするかのように、元気に立ち上がった。
 何も悪気があってボールをぶつけた訳ではないのだから、何も非難する事ではないのだ。
 まだ悪びれている男子児童の肩を軽くポン、と叩いて、来栖と一緒に体育用具倉庫に歩いていった。
 胸にわずかな痛みを感じながら。



らいか大作戦・番外編9

〜ちいさなムネの想い〜

作:かわねぎ




 頼香達のマンション。
 今日は来栖が塾の日で、後から遊びに来る予定である。
 その間、頼香と果穂は身の回りの家事を片づけていた。
 今は果穂の部屋に洗濯物を取り込んでいる最中だった。

「さて、後は畳むだけか」
「私はこちら半分をやりますから、頼香さんはそちらお願いします」

 小学生の自活なので、洗濯ももちろん自分たちでこなしているのだった。
 頼香が私服のブラウスやスカートを手慣れた手つきで畳んでいく。
 今は当たり前のように着ている服なのだが、手にしているのは当然女の子の服。
 自分がこんな物を着るなんて、数ヶ月前は想像もしなかったことだ。

「ワンピースにスカートに。こんなの着るようになったんだよな」
「そうですね。可愛い洋服が着られるなんて、夢みたいです」
「果穂は嬉しいだろうけど、考えてみれば女の服ってピンと来ないよなぁ」
「そうでしょうか。頼香さんだって着こなして十分女の子してるじゃないですか」

 果穂の指摘の通り、頼香も少女の装いをイヤとは思っていない。
 むしろ好んで、今の自分に似合う服装を選んでいる。
 特に祐樹が絡むときは念入りに「女の子」していたりするのだった。

「それに、こういう物も十分女の子してますしね」

 そう言って果穂が両手で広げたのは、頼香の可愛らしい柄のショーツ。
 果穂の洗濯物畳みの割り当ては下着だったりするのだ。
 頬を染めて、慌てて果穂の手から白い布地を取り返す頼香。

「ば、バカ」
「うふふっ。頼香さんてば、結構可愛いの揃えてますよね」
「そ、そう言う果穂だって、俺の事は言えないだろ」

 頼香と果穂の視線が、畳んで仕分けされた洗濯物の山の一つに集まる。
 果穂の分の下着の山。
 しかし、はっきり言えばこの二人、五十歩百歩だったりする。
 女児向けの下着は、それほど装飾性の強い物などは無いので、選択肢も狭い中で選ぶ事になる。
 無地の味気ない物を買うよりは、プリント柄の可愛らしい物を選んでしまうのである。
 自覚があるのかないのか、頼香も立派に女の子しているのだ。

「いいじゃないですか。下着も含めて可愛いのを身につけられるのは、女の子の特権なんですから」
「そういうもんかね、女ってのは……」
「そうですよ。頼香さんだって立派な女の子じゃないですか」

 そう言い終わるや否や、頼香に飛びつく果穂。
 後ろに避けようとすると、押し倒される様な格好になってしまう。
 自然と有利なポジションを取っていることに、内心にんまりする果穂。
 果穂から逃れようとする頼香だが、ちょっと姿勢に無理があるので、自由に動けない。

「か、果穂、なにすんだ。やめ……」
「ほら、頼香さんも女の子だって事を自覚してくださいね。こんな風に♪」
「……あ、バカ、どこ触ってる……あ……」

 さわさわと頼香の服の上から手を動かしていく果穂。
 膨らみかけの少女のムネが服の上からでも感じられる。
 あからさまに触らずに、さりげなく。
 頼香が本気で怒り出す、その瀬戸際はわきまえているつもりだ。
 だが予想よりも早く、というより、いきなり頼香が短い叫びを上げてしまう。

「ん……痛っ!」
「あ、ごめんなさい」

 慌てて手を引っ込める果穂。
 頼香はというと怒っていると言うより、本当に痛がっている様子。
 心なしか涙目だ。

「果穂……いい加減にしろよ……」
「ごめんなさい。でも頼香さん、昼間も体育の時間に痛がってたみたいですよね」
「え? ああ、そうなんだよ」
「もしかしたら……ちょっとよろしいですか?」
「え、ちょっとって、ちょっと……」

 果穂はそう言うと、頼香の上着を手繰り上げて、胸をさらけ出させる。
 もちろん頼香は抗議の声を上げようとするが、果穂の真面目な表情に思いとどまった。
 どうやら趣味の世界に入っているわけではなく、真剣に頼香の事を心配しているらしい。

「この辺は大丈夫ですか?」
「あ、ああ……ちょいくすぐったいけど……」
「なるほど……」

 先程とは違った調子で頼香の胸の周りを触っていく果穂。
 胸を両手で隠したいのだが、真面目モードな果穂の手前、それも出来ない。
 果穂になされるがまま、胸をさらけ出している頼香。
 遮る布地がないだけに、果穂の手のひらの暖かみが直接伝わる。
 真面目にやられると、かえって先程のじゃれ合いよりも恥ずかしいのだ。
 そんな頼香の気持ちを知ってか知らずか、果穂の「触診」は続く。

「な、なぁ、果穂……もういいだろ……恥ずかしいぞ……」
「こうすると、どうでしょうか?」
「痛っ!」

 果穂が少し手を動かす強さを変えたところ、鋭い痛みが頼香の胸に走る。
 思わず身をよじって、果穂の手から逃れようとする。
 果穂も心配そうに今まで頼香の胸を弄んでいた(?)手を引っ込めた。

「ごめんなさい。でも、やっぱりそうでしたか」
「やっぱりって、何の事だ?」
「頼香さんの胸が痛くなった原因です」
「今ので何か分かったのか?」
「はい。頼香さんの胸が成長している……それが痛みの原因なんです」

 きっぱりと原因を言い切る果穂。
 頼香達の年頃の膨らみかけの胸は、ちょっとした衝撃で痛みを感じる事が多い。
 かすかな膨らみは外から目立たないのだが、見た目以上にデリケートなのだ。
 頼香は果穂から体を離すと、タンクトップや上着の乱れを直して、気持ちも落ち着けようとする。

「つまり、俺の胸が大きくなってるから痛くなるってことか」
「ええ。私達の年頃の女の子なら、必ず通る道なんです」
「なんか方法無いかなぁ……」
「対処療法ですけれど、保護するのが一番ですね」

 発育途上な少女の体になった頼香にとっては、急に胸がどうこうと言われても戸惑ってしまう。
 確実に成長していることに、戸惑いと恥ずかしさと、そして幾ばくかの嬉しさがあるのも事実だった。
 それにしても、と頼香は思う。
 痛みの原因は頼香の年頃を考えると、容易に推測出来る物である。
 それなのになぜ、直接胸を触られなければならなかったのだろうか。
 そんな疑問を含んだ眼差しで果穂を見ると、果穂もその意味合いに気が付いたようだった。

「な、果穂。わざわざ俺の胸触る必要があったのか?」
「この位役得がありませんとね♪」
「……お前……わざとか……そういう果穂はどうなんだよ!」
「ら、頼香さん、目が怖いです。きゃぁ!」

 お返しとばかり、果穂に飛びかかる頼香。
 こんな悪ふざけは二人の間ではほとんどしないのだが、頼香だって果穂の弱点は承知している。
 おそらく敏感であろう箇所を的確にまさぐっていく。
 こうなると果穂は完全に受け身に回ってしまう。

「ご、ごめんなさい、もうしませんから……」
「そのセリフ、今まで何回も聞いたぞ」
「……あ……ですから……もう……ぁ……」
「俺にこういう事までしたよなぁ♪」

 その後、どれだけ続いたかは定かではないが、来栖の鳴らすチャイムが果穂を救ったとだけ言っておこう。


  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★


「駅前のデパート?」

 ビスケットをつまみながら聞き返す来栖。
 三人が揃ったところで、いつものお茶会だ。
 お喋りは今週末に何処に遊びに行くかという話題になっている。
 果穂の提案に来栖は賛成したが、頼香はちょっと首をかしげる。

「なんでいつものショッピングモールじゃないんだ?」
「品揃えの問題があるんですよ」
「ええっ、モールの方が可愛い服多いよ」
「今回はちょっと目的が違うんです」

 頼香達が洋服を買うときは、ショッピングモールのティーンズファッションの店に行くことが多い。
 そこだと可愛らしい物や流行の物といった、ティーン向け雑誌に載っているようなファッションを揃えることが出来る。
 来栖がお小遣いで気合いを入れて買い物をするのもそこなのだ。
 また、普段着などはバイパス沿いの衣料量販店で買ってきたりする。
 こちらは値段も安く、下着類も手頃な値段なので、実用性重視の時に利用するのだ。
 そんな棲み分けが出来ているので、デパートという選択肢は、あまり無いと言っていい。

「駅前のデパートだと、よそ行きが多くないか?」
「それにちょっと高いよね……」

 頼香と来栖のイマイチ乗り気でない態度を遮って、果穂が続ける。

「日東市にはここしか販売店がないんですよ」
「何を買いに行くつもりの?」
「これです」

 来栖の質問に、ティーンズ雑誌のとあるページを開いて答える果穂。
 来栖と頼香が覗き込むと、そこには
『バストが気になりだしたら……初めてのブラ……ファーストブラ特集』
という記事が載っていた。
 納得する来栖に、はぁ?という顔の頼香。

「じゃあ、3人でブラを買いに行くんだ」
「はい。頼香さん一人だと行きづらいでしょうから、みんなで、と思ったのです」
「ちょっと待て、俺が? っと、その……ブラを?」
「はい。今の時期の胸を保護するには、ファーストブラが最適なのです」

 雑誌を片手に力説する果穂の眼鏡がキラリと光る。
 名指しをされた頼香は、戸惑うばかり。
 少女の体になった事自体は今では納得しているのだが、まさか自分がブラを付けるようになるとは思ってもみなかった。
 冷静に考えてみれば女性になる=ブラを付けるようになる、という事なのだが、幸か不幸か発育途上の体では今まで不要だったのである。
 そんな頼香の気持ちを知るよしもない来栖は、単純に喜んでいたりもする。

「そっかぁ。私もオトナになるんだね〜」
「ええ。来栖さんも私もちょうど良い時期じゃないかと思うんです」
「楽しみだね。あ、その雑誌に載ってるんでしょ。見せて見せて」

 もちろん果穂は来栖もまだブラをしていないという事は先刻承知なのである。
 そして、もうそろそろ必要な頃である事も承知だったりもするので、一緒に誘ったのだ。
 期待に胸を膨らます来栖と、別な意味で期待している果穂。複雑な思いの頼香だった。

  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★


 土曜日。
 頼香達三人娘は待ち合わせの約束をして、ここ、駅前のデパートに揃っていた。
 例によってお喋りを楽しみながら、店内を歩いていく。
 今回は目的が決まっているとは言え、時間はたっぷりとある。
 ゆっくりと秋物の服のディスプレイを眺めていたりしていた。

「ねえ、こんな色も頼香ちゃんに似合うよね」
「そうですね、髪を下ろすとピッタリですよね」
「そうか? 俺はもうちょっと明るい色がいいと思うんだけどな」
「え〜、これもいいと思うよ。これならゆーき先生とお揃いに出来るよ」

 来栖の言葉に、自分の姿をディスプレイの中の洋服に重ねて想像する頼香。
 その想像の中ではもちろん祐樹と並んでいたりする。
 そして自分の腕をさりげなく祐樹の腕に絡ませ……

「頼香さん、楽しそうですね」
「え?」
「ゆーき先生と一緒の事考えていたんでしょ」
「な、そ、そんな事……」

 来栖の鋭い指摘を慌てて否定する頼香だが、顔を赤らめていては何を考えていたかバレバレである。
 それを知っていた上で頼香をからかうのは、来栖や果穂にしてみればいつもの事だった。
 頼香が恥ずかしがって期待通りの反応を返すのもいつもの事。
 それでいて祐樹と一緒の時の事は嬉しそうに話したりするのだ。
 元男性な乙女心は一層複雑なのだろう。

「そ、それより果穂、売り場は何階なんだ?」
「ええと、4階でしょうか。エスカレーターで行きましょう」

 話題を別な事に移そうと、本題を切り出す頼香。
 果穂は店内案内図をさっと見て、頼香と来栖に説明する。
 もちろんエスカレーターに乗っても、3人のお喋りは絶えないのだった。
 そして、4階。婦人下着売り場。
 頼香は目に飛び込むカラフルな色合いに当然戸惑ってしまう。
 そっと果穂にささやきかける。

「こ、ここか……ちょっと抵抗あるな……果穂は慣れてるのか?」
「いえ、私もこういう場所は初めてです」
「それにしては平気そうだけな。俺はどうも……」
「私達はもう女の子なんですから、慣れなくてはいけませんよ。さあ、入りましょう」

 パステルカラーに圧倒される頼香に、きっぱりと言い切る果穂。
 果穂も頼香も男性だったときには、遠巻きにしか見ていない場所。
 誰が見ている訳でもないのに、何となく罪悪感を覚えて目線をそらしてしまっていたのだった。
 頼香も少女の姿になって久しいとは言え、こういう場所ではつい男性の意識が出てしまうのだった。
 果穂は果穂できっぱり気持ちを切り替えているらしい。
 そういう態度はある意味羨ましいとも思える。

「ええと、ジュニア向けはどれでしょうか……」
「わぁ、これなんかカラフルで可愛らしいよね。5色あるんだ」

 さすがは生まれながらの女の子。来栖は平気らしい。
 近くのイエローのブラを見定めた後は、隣のラベンダーカラーのブラに手を伸ばしながら、ちょっと首をかしげる。

「でもこれもそうだけど、ここって大人の人のサイズばかりじゃない?」
「そうですね……ちょっと店員さんに聞いてみますね」

 果穂が店員を見つけて、二言三言、言葉を交わしている。
 その間、頼香も勇気を出して近くのブラを一つ、手にとってみた。
 男の頃には身に着けもしなかった色合いの下着。
 今のライカの姿でも、こんなカラフルでかつレースの装飾がふんだんに施された下着など、持ってさえもいない。
 子供向けの下着なぞ、可愛らしい装飾といってもちっちゃなリボンが付いていたり、申し訳程度のフリルが施されていたり。
 女の子なりたてな時期の頼香でさえ、着用に抵抗がなかった位なのだ。

「こ、こういうのを俺に着けろと……?」
「頼香ちゃんってそういうの好みなんだ」
「え? あ、これは、その、ただ見てるだけ……」

 来栖の言葉に、慌てて手にしていたブラをハンガーに戻す頼香。
 顔をちょっと染めて、何か悪いことを見つかったときの様な気分になる。
 女の子が女の子の下着を選んでいても何らおかしいことはないのだ。
 だが、頼香としてはやはりまだ抵抗があるようだった。

「頼香さん、来栖さん。売り場は5階だそうです」
「ここじゃないんだ。そうだよね、なさそうだもんね」
「ええ、子供服売り場の方だそうです。確認不足でした。すいません」

 果穂が店員に確認し、その結果を頼香と来栖に報告する。
 どうやらジュニア用は別の売り場にあるらしい。
 三人は早速エスカレーターで上の階に移動する。
 頼香もこの場から離れることが出来て、少しほっとする。
 上の階に上がるときに、ちらりと売り場をふり返ってみたりもするのだが。


  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★


 5階子供服売り場。
 いつも行っているショッピングモールとは品筋が全くと言っていいほど違うのに驚く。
 頼香や来栖が好みの活動的なものはほとんど無く、上品なイメージの物。
 ある意味果穂が好みそうな種類の服だ。
 今の果穂の頭の中では、頼香と来栖に着せ替えして、お嬢さんな二人を想像しているのかもしれない。

「で、どこなんだ? 見つからないぞ」
「変ですね……5階の奥って聞いたのですけど」
「あ、あれじゃない?」

 果穂が戸惑いながら辺りを見回すと、来栖が奥の売り場を指さす。
 おとなしめのファーストブラがディスプレイされていて、辛うじて分かる程度。
 先程の婦人向け下着売り場とは華やかさが全然違うのだ。
 主体が白。せいぜいパステルカラーの淡い色合いのモノがある程度だ。

「ここか……さっきと全然違うな」
「華やかさには欠けますけど、ある意味ティーン向けの正しい姿でもありますね」
「それに、奥の方なら客も少ないし、あんまり恥ずかしくないよな」

 周りを見回した頼香の感想がこれだ。
 悪く言えば地味、よく言えば清純な色合いのコーナー。
 そのお陰で、頼香にとっても入るのにためらいやある種の緊張を呼ぶことが無いのが幸いしている。
 胸が成長しつつある思春期の少女にとっては、ここに来るだけでも恥ずかしい物があるのだろう。
 こんな隅っこにコーナーがあるのも、その気持ちを少しでも和らげようという店側の配慮の表れである。

「いらっしゃいませ。お探しですか」

 女性店員が頼香達三人に声をかける。
 若いような店員で、少女達も気軽に相談できそうな雰囲気である。
 恥ずかしがることはないですよ、と安心させながら、採寸したり、見繕ったり……
 果穂は、こういう職業もいいな、などと思ったりしている。

「はい。私達三人、初めてなんですけど……」
「お友達どうしていらっしゃったのね。ええと6年生位かしら?」
「5年生だよ」

 早速店員と話をする果穂と来栖。
 店員はいきなりブラを出したりしないで、小冊子を三人に渡す。
 ローティーン向けの、初めてのブラの基礎知識が載ったカタログ小冊子だ。
 ある意味マニア垂涎のアイテムだったりもするのだ。

「ありがとうございます」
「ふーん、私達はこのステップ1あたりかな?」
「なるほど、そうなるのかな」

 ぺらぺらと冊子をめくっていく頼香たち。
 バストの成長について、段階的に書いてある。
 頼香や果穂ばかりでなく、生粋な女の子の来栖にとっても、ためになる話のようだ。
 ちなみに来栖の言うステップ1は「トップが目立ち始めたら……」と書いてある。

「そうですね。みなさん、バストが擦れたり、ぶつかったりした時に、痛みを感じたことないかしら?」
「私もたまにあるな」
「あ、俺もありますよ。この前の体育の時間とか……」

 店員の質問に答える来栖と頼香。
 果穂も軽く頷いているところを見ると、どうやら果穂も体験があるらしい。
 三人一緒に下着コーナーに来たのは、本当にタイミングがいいようだ。

「バストが成長し始めると、痛みを感じることがあるのよ」
「果穂にもそう言われたな」
「そうなるまで……そうね、バストの先が少しだけ持ち上がる程度の頃なら、ハーフトップ位で大丈夫なの」
「小冊子のこれだね」
「ええ。でも、痛みが出てきたら、バストを保護しなくちゃいけないのよ」

 店員はそう言いながら、ハーフトップを2種類、三人娘の前に広げて見せる。
 ワンポイントが付いている、可愛らしいデザインだ。

「こっちとこっちで、裏地の厚みが違っているの」
「あ、ほんとだ。厚い方が保護されるって訳だね」
「そうなんです。成長期のバストはこうして優しく保護するのよ」
「なるほどな。でもブラって、こう、後ろでホックをするとかじゃないんですか」
「そう言うのもあるけど、最初は頭からかぶるのが付けやすくていいのよ」

 頼香の疑問に、店員はさらにブラを2種類出してみせる。
 先程の物と違い、後ろホックで止め、肩ひもも細い物。いわゆる一般的なブラジャーだ。

「こういうのがみなさんがイメージしてるブラジャーかしらね」
「ああ、そう言う奴」
「そうだよね。さっきのはタンクトップと変わりないみたい」
「大人の物とは違いますよね」

 頼香達3人も、それを見て同じ意見を出す。
 やはりブラに対するイメージというのがあるようだ。

「大人のブラはバストの形を整える為でもあるの」
「あ、寄せて上げるとかいう奴だよね」
「ええ。でも成長期のバストをワイヤーで押さえたりすると、悪い影響があるから気を付けた方がいいわね」
「なるほどな……で、どれが一番お薦めな訳ですか?」
「そうですね。その前にまず、自分のサイズを知らないといけないですわね」

 そう言うと、店員はメジャーを取り出して、採寸の準備をする。
 一人ずつフィッティングルームに入って、上半身裸になるように言われる。
 頼香はもちろん恥ずかしがっていたのだが、そうしないと始まらないと果穂と来栖に言われ、渋々サイズを測ってもらうことにした。


  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★


「このバストの下。バージスラインって言うの。成長に従ってはっきりしてくるのよ」

 店員が解説しながら頼香のサイズを測っていく。
 学校の身体測定とはまた測り方が違うので、どうも勝手が違う。

「ここがアンダーバストで、ブラを選ぶときの基準になるのよ。そして、トップバストは分かりますね」
「一番膨らんでいるところ、ですか」
「そうなの。この数字の差がカップの目安になる訳なんですよ」
「ああ、AとかBとか言う奴。俺はどの位なんでしょう」

 アンダーとトップバストを測り終えると、その数字を教えてもらった。
 今の年齢でその数字が大きいのか小さいのか、いまいちピンと来ない頼香だった。
 服を着込む前に、鏡に映った自分の姿を見てみる。

「胸かぁ……女か……」

 膨らみかけの胸を両手ですくうようにして持ち上げてみる。
 まだ手のひらですっぽり隠れてしまうような大きさ。
 大人の女性、例えば身近なところで姉の美香に比べると、はるかに及ばない。

「ほんと、小さいな。でも、これからだな」

 少しばかり落ち込むが、11歳という年齢を考えると、こんなものだろう。
 自分も含めて、これから成長していくのだ。
 後で来栖と果穂の数字も聞いてみようかと思う。
 こうして胸の大きさが気になるような所、頼香もしっかりと女の子しているのであった。

「それでは、こちらを試着してみてください」
「え、試着って……するんだ……」
「ええ。数字だけでは付け心地とか分からないんですよ。試着は大人のバストになってからも必要ですよ」
「で、3種類か。これは普通につければいいのかな?」
「付けるときの姿勢があるの。ちょっと前屈みになってみてください」

 肩ひもを通したところで、付け方のレクチャーが始まる。
 さすがにいつも初ブラな少女を相手にしている店員だけあって、丁寧に教えてくれる。
 面倒くさい物だな、と思いつつも、真剣に聞いて、手を動かす頼香だった。
 後ろ手にホックをする、という行為は初めての事もあって、なかなか一回ではきちんとできなかった。
 さすがに他人のを外す経験はあっても、自分が着ける経験というのはないからだ。

「きつくありませんか?」
「ああ、ちょうどいいみたいです」
「バストの保護って意味で、だいぶ違うのよ。内側は肌触りの良い素材で、外は厚手になってるの」
「これなら体育の時も大丈夫かな」

 鏡に映った自分の姿を見る頼香。
 胸元を優しく包んでくれているブラ。
 特に胸を強調するわけでもなく、しかもシンプルなデザイン。
 それだけに、まだ少女な姿なのだが、心なしか、一歩大人になった感じがするのだった。


  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★


「俺終わったから、次は果穂か来栖な」
「じゃあ、私測ってもらうね。頼香ちゃんのサイズは後で教えてね」
「……来栖もだぞ」

 頼香がフィッティングルームから出てくると、交代で来栖が中に入る。
 来栖もやはり他の二人のサイズが気になるのだろう。
 微妙な年頃なのだ。

「頼香さん、サイズいくつでした?」
「後でだぞ。果穂だけ言わないとかだとずるいしな」
「そんな子供みたいな事しませんよ。おそらく60AA位のサイズだと思うのですが」
「後でだ。果穂のも気になるからな」
「そうですか。では、楽しみに取っておきましょう」

 こちらも他の二人のサイズが気になる一人。
 もっとも果穂の場合、乙女心から気になっているとは言えない部分もありそうなのだが。
 そういえば、もう一人こういうのが好きな少女がクラスにいたような気がするな、と思う頼香だった。


 3人のサイズの採寸が終わって、目当てのブラを選ぶ。
 といっても、デザインは数種類もない。
 試着をしてみたので、その中から2つ選ぶ事にした。
 ちなみにサイズは……三人の秘密ということにしよう。

「私は、こっちのホック式の奴とかぶり式の奴にする」
「俺もそうしようかな。こう言うのなら抵抗無いし、面倒くさくないだろうし」
「それではいっそのこと、3人でお揃いにしませんか?」
「あ、いいね。賛成」
「俺もいいけど」

 果穂の提案に賛成して、三人とも同じデザインのブラを2つ選ぶ。
 2枚だけというのは少ないかもしれないが、成長期にある頼香達の体。
 成長に応じて買い換えていくのが良いという店員のアドバイスによるものだった。
 ブラとお揃いのデザインのショーツもあるので、それも揃える。

「それでは4点でお一人7900円(税別)になります」

 高い。
 それが頼香の第一印象。
 大体新聞折り込みのチラシでは、500円とかのブラもあるのを知っている。
 確かに先程もらったパンフには3000円位の値段が付いていたが、それにしても。
 そう言えば、婦人下着コーナーで手に取ったブラは確か5000円位……
 有名メーカーの女性用下着は高いのだな、と自分の知らなかった世界にちょっと驚く頼香だった。

「ありがとうございました〜」

 店員の声とお辞儀に見送られ、売り場を後にする頼香達三人。
 手にはそれぞれ、包装された商品が入った紙袋を提げている。
 お財布が寂しくなった分、その紙袋には期待がつまっているのだ。
 早く着けてみたい。
 わずかでもそんな気持ちがあるのだろう。
 家路に向かう三人の足取りは、どことなく急いているようにも思える。


  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★


 頼香達のマンション。
 来栖も交えて買い物帰りの休息だ。
 まだ紙袋は包装されたまま。出番を今かと待っている。
 頼香達もはやる気持ちを抑えて、まずはお茶を飲んで一服だ。
 果穂がティーカップを三つ+小二つをテーブルに並べる。
 お菓子の準備は来栖だ。先程買ってきたケーキを皿に取り分ける。

「頼香ちゃん、準備できたよ」
「お、悪いな。果穂の方も準備できたようだな」
「ええ。それではいただきましょうか」

 紅茶の香りがリビングの中にほのかに漂う。
 ハムスター型宇宙人のもけとからめるも同席だ。
 頼香が彼らプレラットの分も小皿に取り分けてあげる。

「ありがとうでちゅ。今日は何を買ってきたんでちゅか?」
「ああ、俺たちの……その……何だ……」

 もけの質問に答えようとした頼香だが、いざ答えようとすると、恥ずかしさが先立ってしまう。
 もけやからめる相手とは言え、やはり気になる。
 少女初心者の頼香にとって、面と向かってブラを買ってきました、と言うことは結構ハードルが高いようだ。
 来栖も来栖で、そのような事を口に出すのは恥ずかしいようだ。
 そんな二人の気持ちに気が付いたのか、果穂が助け船を出す。

「もけさん、これは女の子同士の秘密ですよ♪」
「そうなんでちゅか。それなら聞けないでちゅね」
「ああ、僕としてはモンブランを買ってきたという事実だけあれば十分だな」

 まあ、もけとしても別に何を買ってきたのかを本当に気になるわけではないので、それ以上は突っ込まない。
 からめるも、そんな事はどうでもいいとばかり、ケーキを口いっぱいに頬張っていた。
 ある意味、果穂の予想通りの反応だったりもする。

「頼香さん、来栖さん、お茶の後でみんなで試しに着けてみませんか?」
「みんなで一緒に?」
「おいおい、何でわざわざ……」
「せっかくですからね。どうでしょう」

 お茶を飲みながら、さりげなく他の二人に提案する果穂。
 正確に言うと、来栖の同意を求めているのだ。
 3人娘の行動パターンとして、多数決による決定というものがある。
 果穂と来栖が賛成すれば、頼香も消極的賛成に回らざるを得ない。
 
「うん、いいかもね。じゃあ、早速みんなで着けようよ」
「……分かったよ。まあ、お茶が一段落ついてからな」
「それでは決まりですね」

 要は三人で一緒に着替えて、下着姿を見せ合おうと言うこと。
 果穂にとってはこれ以上もなく嬉しいシチュエーションだろう。
 三人一緒の着替えはもとより、一緒にお風呂に入っている仲なのに、何を今更、と頼香は思ったりもする。
 果穂は果穂なりに、その辺のこだわりがあるのだろう。
 もちろん来栖はそんな事情もつゆ知らず、無邪気に賛成するのであった。

 それを聞いていたもけとからめるが、小声で囁きあっていたことは知らなかったようだ。

「地球人もテラン人と同じで面倒くさい事してまちゅね」
「第一、乳房が性的興奮の対象だなんて信じられないな」
「授乳以外に何の機能があるんでちゅかね……」


  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★


 頼香の部屋。
 果穂と来栖も一緒に着替えを始めているところだ。
 下着姿になったところで、買ってきたブラとショーツを袋から取り出す。

「なんかドキドキするね」
「そうだな。こういうのは初めてだし」
「それは三人とも一緒ですよ」

 頼香も小さく折り畳まっているブラを手にしてみると、やはりドキドキしてしまう。
 お店で試着してみたとはいえ、今度は正真正銘自分のブラ。
 恥ずかしさと、大人に一歩近づいたくすぐったさと。
 複雑な思いを抱きながら、肩ひもに腕を通していく。

「ね、どう?」
「来栖さん似合いますよ。頼香さんの方はいかがですか?」
「うう……やっぱり恥ずかしいぞ」
「頼香ちゃんだっていつも一緒に着替えてるじゃない」
「そんなこと言ってもなぁ……」
「着ている物は水着姿と違いは無いんですけどね」
「え〜、やっぱり水着と違うよ〜」

 お互いに下着姿を見せ合う三人娘。
 もちろん一番恥ずかしがっているのは頼香である。
 ついつい両腕で胸を隠してしまう。
 女の子同士の着替えもだいぶ慣れてきた頼香だが、やはり下着姿を堂々と見せ合うまでは至っていない。
 ブラを着けているという羞恥心と、ローティーンのセミヌードを見るという罪悪感。
 男性の意識をまだわずかに引きずっているから、そうなるのか。
 その点、生粋の女の子な来栖は平気なようだ。
 果穂は……何にでも例外があるという事にしておこう。

「果穂ちゃん、まさかビデオ撮ってないよね」
「いくら私でも着替えの時は撮りませんから、安心してください」
「よかった。でもこのパンフみたく、私達3人も可愛く撮って欲しいかも」
「はぁ?」

 来栖が下着売り場でもらってきた小冊子を片手にそんな事を言い出す。
 その中ではモデルの少女達が健康的な可愛さを振りまいている。
 来栖も自分の可愛さを自覚し始めの年頃。
 テレビの中のアイドルや雑誌の中のモデルに自分を投影したくもなるのだ。
 当然そんな気持ちの欠片もない頼香は、呆れた声を返すだけなのだが。

「ご要望なら撮影しましょうか?」
「俺はやめとくぞ。恥ずかしいだろ」
「そうかなぁ。男の子に見せるとかなら恥ずかしいけど、女の子同士ならいいんじゃない?」
「万が一流出したらどうするんだよ」

 ちらりと果穂の方を見る頼香だが、果穂は一向に気にしていない。
 何せ果穂は頼香達の写真や画像を「男の子」に流出させた事は神に誓って一度もない。
 その辺は確固たるポリシーを持っているようだ。
 ただし、「女の子」相手の流出については定かではない。

「そうですね。こういう姿は女の子同士だけで見せ合うべきですよね」
「俺は女同士でも抵抗あるんだけどな……」
「頼香ちゃんって相変わらず恥ずかしがり屋なんだね」

 頼香の場合、女同士といっても、やはりどこか意識してしまうのだ。
 下着姿で恥ずかしがっている頼香の姿は、普段の快活な頼香とはまた違った表情を見せてくれる。
 それは果穂にとって、これ以上もなく萌える仕草だったりもするのだ。
 来栖でさえも内心「そんな頼香ちゃんかわいい」と思っていたりする始末。

「さ、服着ようぜ。いつまでもこうしていられないだろ」
「え〜、もう終わり?」
「誰か来たらどうするんだよ。ほら、来栖も服着ろよ。果穂もだ」
「名残惜しいですが、仕方ありませんね」

 下着のファッションショーはもう終わり、とばかりにポロシャツとスカートを手早く着込む頼香。
 そんな頼香を来栖がちょっと不思議そうに見つめている。
 頼香もその目線に気が付く。

「来栖、どうした?」
「あれ、頼香ちゃん、そのまま着ちゃうの?」
「?」
「ブラ着けたままだよ」
「あ、そっか……」
「来栖さん、着けるために買ってきたんですから」

 来栖の指摘に、一瞬手を止める頼香だが、果穂が苦笑しながら応える。
 来栖にしてみれば、ブラを着ける習慣がないので、外すつもりだったらしい。
 もっとも、考えてみれば果穂の言うとおりなのである。
 わざわざ買ってきたのに、何故に外すのか、と。

「あはは、果穂ちゃんの言うとおりだよね」
「そうなんだよな。俺もこれから毎日着けるんだよな……ブラ……」
「なんか不思議な気分だね」
「一歩大人になったという事ですよ」

 服の上からそっと自分の胸を押さえてみる来栖。
 いつもの肌の柔らかさではなく、布地の感触が伝わってくる。

「何か変な感じだね」
「そうだな。きついって訳じゃないけど、こう何か着てるって感じがな……」

 なんとなく、初めてのブラの着用感というのを意識してしまう。
 慣れてくればいいのだが、やはりそれは時間が経たないと解決しない問題だ。
 それに、周囲の視線も気になってしまう。

「ねえ、果穂ちゃん。後ろ透けて見えない?」
「俺もどうかな……」
「そうですね、ほんのわずかにブラのラインが見える程度ですね」
「男の子に見られちゃうと、やっぱり恥ずかしいよ」
「胸が直接透けて見えるよりマシ、と考えてください」
「確かにな」

 来栖がそう恥ずかしがるのももっともな事。
 異性を意識してくる年頃だと、どう見られているか、というのも気になるのだ。
 下着が透けても中身が透けても男性にとってはそそるものなのだが、さすがに来栖には分からないようだった。

「ね、頼香さん……」
「ん?」

 何気なく頼香の背後に回る果穂。
 頼香は何だろうと思いながらも、特に気にも止めなかった。
 その隙をついて、果穂は手早く頼香のブラのホックを服の上から外す。
 軽い締め付けが消えた後には、何かを中途半端に着ているような変な感じ。
 一瞬何をされたのか分からなかった頼香だが、気が付くと顔を真っ赤にして果穂を怒鳴りつける。

「わ、バカ、何すんだ!」
「これ一回やってみたかったんですよ」
「だからと言って、お前なぁ……」
「女の子同士のじゃれあいですよ♪」

 果穂を怒鳴りつけながら、後ろ手でホックを留めようとする頼香。
 両手でホックの部分をそれぞれ掴んで、引っかけようとするが、焦っていると、なかなか上手く付けられない物だ。
 見えない部分での作業だけに、段々と苛立ってきてしまう。

「手伝いましょうか?」
「……いらん!」

 深呼吸を一度して、落ち着いてからホックを留める。
 頼香は上着の裾をきちんと直すと、改めて果穂に詰め寄る。

「果穂、お前なぁ……」
「まぁまぁ、頼香ちゃん。果穂ちゃんも悪気があってやった訳じゃないし」
「それは分かるけどさぁ」

 果穂の場合、ある意味悪気以上にタチが悪いのだが、まあ、それは今日に始まった事ではない。
 来栖にとっては果穂と頼香のじゃれ合いにしか見えないので、軽い気持ちで仲裁に入る。
 これもいつもの事だったりする。

「全く果穂は……もうするなよ」
「こういう事は本当に仲の良い相手にしかできませんよ」
「まあ、それは言えるな」
「女の子同士の悪ふざけの一つのパターンですからね。来栖さんも注意してくださいね」
「うん」

 注意する相手は果穂と美優あたりかな、と来栖も頼香も考えていた。


  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★


「で、今来栖が切ってる野菜を入れてから10分位煮込めばいいんだ」
「うん。もう入れちゃってもいいの?」
「ああ、いいだろ」

 頼香と来栖がお揃いのエプロンをして、キッチンに向かっている。
 なにやら料理の指導中らしい。
 その間、食器を4つ+小2つ準備していく果穂。
 もちろん果穂達3人娘の分と、祐樹の分だ。

「ゆーきさん、ちょっと並べますね」
「うん、ありがとう。来栖さんも悪いね」
「今日は来栖がメインで作ってるからな。もうちょっと待ってくれ」

 鍋に向かいながら、祐樹から見れば後ろ向きのままで声をかける頼香。
 どちらかというと来栖が頼香の指示に従って作っているようだった。
 来栖がお玉で取り皿にすくって、頼香に味を見てもらう。
 真面目な顔で味見をして、おもむろに頷く頼香。
 それを見て、来栖は嬉しそうに鍋を運んで行く。

「ゆーき先生、みんな、出来たよ〜」
「美味しそうな匂いでちゅね」
「僕ももけもまちくたびれたよ」

 来栖が各自のスープ皿に取り分けていく。
 もちろん頼香と果穂もお手伝い。
 美味しそうな匂いがひろがると、リビングはまさに夕食の雰囲気となる。

「さ、それじゃみんな、食べようぜ」
「「「いただきま〜す」」」

 ひとしきり夕食が進み、食後のお茶も飲み終わって、みなのんびりとしている頃。
 キリのいいところで祐樹が礼を言って立ち上がる。
 当然見送る役は自分とばかり、頼香も一緒に立ち上がった。

「せっかくの休みなんだから、もっとゆっくりしていけばいいのに」
「ごめんね、頼香。ちょっと片づけなきゃならない仕事があるんだ」
「そっか……残念だな」
「女の子3人で話したい事もあるだろうから、失礼するよ」

 別れの挨拶代わりに頼香の頭に、ぽんと手のひらを載せようとする祐樹。
 いつもの事なのだが、ふと、その手が止まる。
 習慣になっていた頼香にとっては、あれ? と思って祐樹を見上げてしまう。
 そこには微笑んだ祐樹の顔。

「一歩大人になったんだね」

 そう言って改めて頼香の頭を手のひらでぽん、と叩く。
 何のことだろうか、と訝しがっている頼香を残して、祐樹がドアを閉めた。
 そして、その意味に思い至って、頬を軽く染める。

「……ゆーきめ。気づいてたのか」

 胸元に手を当て、ちょっとはにかんだ表情になる。
 手からは伝わるのは、今日初めて着けたブラの感触。
 祐樹に気づかれるのも恥ずかしいが、気づかれたいという気持ちもどことなくあったりする。
 やはり恋する乙女モードの頼香の気持ちは複雑なのだろう。

「……これから少しずつ大人になるからさ……」

 玄関で一人つぶやく頼香。
 祐樹がきちんと自分を見てくれていた事と、さりげなく見せた気遣いが嬉しい。
 そして、キッチンの方から声がかかる。

「頼香ちゃん、後片付け始めるよ〜」
「ああ、悪い。今行く」

 チェーンロックをすると、上着の裾を直して、来栖と果穂を手伝いに行く頼香だった。




あとがき

 らいか大作戦番外編。3人娘のちょっとした成長です。TSっ娘のお約束イベントも、成長途上の頼香や果穂には今まで無縁でした。来栖も初めてなので、3人でお買い物です。純女の子が試着指導&着せ替え、と行かないところがパターンからはずれているかな、と思います。今回はただそれだけのお話です。少女達の一時、いかがでしたか?



<おまけ>


お待ちください〜

<おまけ・2>

勝手に果穂ちゃん@ちいさなムネの大きな野望♪
byジャージレッドこと、果穂ちゃん倶楽部会長


「おかしい……」
 マンションでのお茶会。いつもの光景……、では無かった。なぜかその場には、果穂がいなかったのだ。
「確かにおかしいよね」
 来栖は頼香の漏らしたつぶやきに対して、すかさず同意した。しかしそう言いながらもお茶菓子を食べる手を休めることは無い。健康な娘である。
「果穂のやつ、ここ数週間、休みの日になると必ずひとりで外出してしまうけど、いったい何をやっているんだ。まったくこそこそと……」
 竹を割ったような性格の頼香にとり、何か隠し事をされるというのは、大変に気分を害することなのである。しかもその相手が、同じマンションの一室に住んでいる果穂となると、なおさらだ。
「果穂ちゃんが何をしているのか、頼香ちゃんも知らないんだ」
 何気に来栖はそう言ったのだが、このセリフが頼香の心に火をつけたっ!
「やっぱり、隠し事は良くないよな。こうなったら、絶対に果穂が何をしているのか、その秘密をあばいてやる」
 いきり立つ頼香。やはり体育会系のノリをした性格である。
「でもどうするの?」
 お茶を口にしながら、来栖は頼香に聞いた。どうすれば良いのか、自分で考えるつもりはないのか、気楽なものの言いようである。
「さんこうの観測システムをつかえば、果穂の現在地はすぐに分かる。取りあえず、その近所まで転送して移動、そしてそのあとは、果穂のあとをつけて、何をしているのかを確認するんだ」
 公私混同もはなはだしい頼香であったが、来栖はそれに気づかない。やはり本物の小学生……。
「探偵さんだね。じゃあ早速用意しなくちゃ」
 楽しそうな来栖。目がきらきらしてきている。
「用意って、いったい何を用意するんだ?」
 突然の話題に、頭がうまく切り替わらない頼香は、らしくもなくきょとんとした顔をしてしまった。
「もちろん探偵さんの格好をするんだよ。たしか、果穂ちゃんが持ってたはずだよ。女の子になった“名探偵コ○ン”ってことで、コスプレをいっしょにしたことあるもん」
 嬉々として話す来栖。最初はコスプレすることを嫌がっていたくせに、何度も果穂に連れ回されているうちにどうやらはまってしまったらしい。可哀想に……。
「来栖、おまえ……」
 こんなところにも果穂の影響が……。と、頼香はひどい脱力感に襲われたのだった。

◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇

 頼香と来栖が、さんこう経由で転送されたその目の前には、見なれたビルがあった。
「ここって駅前のデパートだよね?」
 ビルを見て、来栖は一言つぶやいた。ちなみに頼香の説得により、女の子バージョンの“名探偵コ○ン”ルックを着てくることは無かった来栖だったが、最後のこだわりとばかりに、その手には大きな“虫めがね”が握られている。但し、それをいったい何に使う予定なのかは、本人にも分かっていなかったりする。
「それ以外には無いよな。確かにここは駅前デパートだ。でも、なんで……。俺に黙って来るようなところでもないのに……」
 果穂の目的を類推することすら出来ず、ただ言葉を濁すしかない頼香だった。
「取りあえず入ってみようよ、頼香ちゃん。まずは果穂ちゃんを探さなくちゃ尾行も出来ないし。……ふふふ、いよいよ名探偵来栖ちゃんの出番だね♪」
 なぜか今日ばかりは、悩みまくる頼香をしりめに、来栖はノリノリで頼香に宣言した。結構ミーハーなのかもしれない。
「そうだな。取りあえず入ってみるか。さんこうからの計測では、果穂はおよそ5階のあたりにいるらしいから、まずは5階に行ってみよう」
 そこまで言った瞬間、頼香は、あれっ? という顔をして、来栖を見た。そして一呼吸おいてから、言葉をつないだ。
「なあ、駅前デパートの5階って……」
 途中で頼香の言葉は切れてしまったのだが、来栖には、頼香の疑念は完全に伝わった。
「そうよっ! すべての謎は解けたわっ! 果穂ちゃんは、毎週、ここにブラジャーを買いに来ていたのよっ!」
 なぜかビシッと、駅前デパートの5階を指差し、大声を張り上げる来栖。通行人が何人か来栖のほうを振り向くが、来栖は何も気にした様子を見せず、一人で盛り上がっていた。むしろ取り残されてしまった頼香のほうが恥ずかしくて顔から火が出る思いだった。
「来栖、目立ち過ぎてるぞ。これじゃあ、すぐ果穂にみつかっちゃうじゃないか」
 暴走する来栖を止めようとする頼香。しかし、そうするまでもなく、来栖の暴走はあっという間にとまることとなった。果穂がデパートの正面口から出てきたのである。
「しっ! 頼香ちゃん、黙ってっ! 果穂ちゃんが出てきたよ」
 すぐさま、“名探偵来栖ちゃんモード”になった来栖は、歩道の植えこみの影にささっと隠れると、つっ立っている頼香の手をつかむと、ぐいっと引っ張った。
「うわわわっ!」
 とっさのことに、うまく声が出せない頼香。それでも、デパートから出てくる果穂から、目を離さずにいると、果穂と連れ立って出てくる女の子がいることに気づいたのだった。
「おい、来栖。あれ、あの娘は確か……」
 来栖のほうに向き直り、その先を言おうとしたのだが、頼香の言葉は、来栖の顔を見た瞬間に飲み込まれてしまった。来栖は、無理やり渋い表情をつくると、何やら格好をつけて、『ふふふふふっ♪』と、笑っていたのだった。
「全部言う必要は無いわ。あの娘は、確かにうちのクラスメートの睦美ちゃんに間違いが無いっ! そうよ、今こそすべてのピースが、はまったわ。ふふふふ、分かる? 頼香ちゃんっ!」
 何がそんなに楽しいのかよく分からないが、とても楽しそうな来栖。それをただ黙って見つめる頼香。
「いや、クラスメートの睦美だってことは分かるけど、それがいったい何だって言うんだよ」
 いっこうに、来栖が何を言いたいのか分からない頼香は、素直に両手をあげて降参した。
「頼香ちゃん。気づいていた? 最近のうちのクラス……。ブラジャーを着けだした娘が急に増えてきたってこと」
 来栖は、最近、気づいたそのことを頼香に言ったのだが、頼香はぜんぜんそのことには気づいていなかった。
「いや、それは知らなかった……」
 ちょっと恥ずかしげにつぶやく頼香。
「頼香ちゃん、体育の着替えのときも、あまりまわりの娘たちを見ないで、さっさと着替えてるもんね。でも、たまには他の娘の着替えをじっくり見てみればいいのよ。あの娘はどんな下着をつけてるのかな? ってね」
 ごく普通のことを話す調子の来栖に対して、それを聞く頼香は、どこか恥ずかしげである。
「そんなこと言ったって……」
 まだまだ男の心も残っている頼香だった。まあ、祐樹といっしょのときには、完全に乙女モードになるのだが……。
「とにかく、ここのところ、うちのクラスのブラジャー装着率は大幅に上がってきているのよ。もう、ブラジャーをつけていない娘のほうが少数派になっちゃうのも時間の問題ね。そして、あの睦美ちゃんは、確かまだブラジャーをつけていなかったはずなの。なのに……」
 ようやく、頼香も事情が飲み込めて来たのか、来栖の言葉を手で制すると、その先を続けたのだった。
「つまり、クラスのまだブラジャーをつけていない娘を果穂が駅前デパートに連れ出して、ブラジャーを買うように仕向けていると。……こういうわけだな」
 頼香は、そこまで言うと、果穂がこの先、何をしようとするのかが、手に取るように分かってしまい、頭痛がしてくるのだった。
「よし、おそらく果穂はこのまま睦美の家にいくだろうから、そこで現場を押さえるっ!」
 果穂に気づかれないように、小さな声ながらも、しっかりと宣言した頼香だったが、来栖の反応はちょっと違っていた。
「現場って?」
 いまいち、果穂の嗜好の妙なる部分に理解が及んでいない来栖は、首を傾げるのみだ。
「行けば分かる……」
 こうして、頼香と来栖は、果穂と睦美のあとをつけて歩き出したのだったが、つけるまでもなく、二人の行き先は頼香の予想通り、睦美の家であった。 

◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇

「はいっ♪ 恥ずかしがらずに、もっと胸をはってください。睦美さん」
 睦美の家、彼女の部屋の中で、うれしそうにデジタルカメラを構えている果穂。もちろんファインダーの先には、さっき買ったばかりのブラジャーとおそろいのショーツを着た睦美がポーズを取っていた。
「果穂ちゃん。……きれいに撮れてるかな?」
 果穂の口車に乗せられたのか、はたまた怪しげな薬品でも使われたのか? というのは冗談として、睦美は真新しい下着に身を包んで、ちょっと上気したピンク色の肌を、果穂が構えるカメラの前にさらしていた。
「大丈夫です。きれいですよ。睦美さん。ほら、見てください」
 そう言いつつ、果穂はデジカメに付属している液晶モニターに、今写したばかりの写真を表示したのだった。
「なんだか恥ずかしい……」
 ぽっと、ほほを赤らめる睦美。その姿を見て、果穂は胸がキューンとなるのだった。
「自信を持ってください。睦美さんのそのムネなら、ブラジャーをするのが当たり前です。とっても似合ってますよ」
 女心をくすぐる果穂。
「そ、そうかな? 果穂ちゃん、私をからかってないよね」
 そうは言うものの、まんざらでもない表情の睦美。誉められて悪い気はしない乙女心である。
「からかってなんかいませんよ。ほら、ここに頼香さんの下着姿もありますけど、どうです? 睦美さんのほうが、ぐっと女らしくありませんか?」
 デジカメを操作して、頼香の写真を表示する果穂。睦美は、そこに写しだされた頼香の写真を見て、『確かに私のほうが女の子らしいかも……』と、思ってたりする。
「ねえ、果穂ちゃん、他の娘の写真もそこに入っているの?」
 ふと、睦美が果穂に質問をした。
「ええ、私がブラジャーをいっしょに買いにいった娘の写真ならありますよ。いつも記念にこうして撮影しているんです」
 ちょっと自慢げに言う果穂。つまり果穂は、自分がブラジャーをつけだしてから、クラスメートのまだブラジャーをつけていない娘達に、ブラジャーをつけると膨らみかけたムネの保護に、いかに良いかを熱心に説き、いっしょにブラジャーを買いに出ると、記念と称してこうして下着姿の女の子の写真をデジカメに収めていたのである。
「ふーん、みんなブラジャーをし始めてるんだね。でも私、ブラジャーって、もっとムネが大きくなったらするもんだと思ってた。私ぐらいの大きさなら、まだブラジャーはしなくていいじゃないってね」
 笑顔で自分の誤解を話す睦美。確かに彼女のムネはまだ膨らみかけたばかりではあるが……。それが果穂にとってはストライクなのである。
「睦美さん、ムネの膨らみかけっていうのは、ご存知のように、とても痛いんです。だからこうしてブラジャーで保護する必要があるって、デパートの店員のお姉さんも言ってらしたことですよね。ほら、こうして触っても痛くないでしょ♪」
 ドサクサにまぎれて、睦美のムネをブラジャー越しに触る果穂だった。もちろんわざとだ(笑)。
「あん♪ 果穂ちゃんったら……」
 まだ膨らみかけのムネなので、気持ち良いとはとても言えないのだが、半ばふざけた睦美の口からは、そのような艶のある声が、出てきた。
「それに、睦美さん。ムネが大きくなくても、激しい運動をする方なら、保護の為にも絶対にブラジャーをする必要がありますよ。……たとえば頼香さんみたいに」
 何の気なしに、そういった果穂だったが、その発言は、最悪のタイミングでなされたのだった。
「誰のムネが小さいって?」
 睦美の部屋のドアが開き、そして頼香と来栖が入ってきた。
「えっ!? 頼香さん、どうしてここに」
 果穂はもちろん、この家の住人である睦美は更に驚いた。もう声もセリフも出なくなるぐらいに(笑)。
「俺のムネが小さいって言ったのは、誰かな〜? よし、比較してみよう」
 そのまま、頼香はするりと部屋の中に入ると、さささっと果穂のバックをとり、背後から手をまわして果穂のムネを触りまくるのだった。ちなみに頼香は祐樹にブラジャーをしていることを知られて以来、早くムネがもっと大きくなって欲しいという願望が芽生えてきていたのだ。
「あははは、頼香さん、やめてください。ダメですよ。そんなに触られたら、私っ!」
 笑いながら、身をよじる果穂。果穂もまだ、ムネを触られて気持ち良いというほどでは無いらしい。
「まったく、休みの日にこそこそと何をしているかと思ってあとをつけてみればこんなだし……。まったく果穂はっ!」
 怒りつつも、果穂のムネを触り続ける頼香。意外と結構楽しんでいたりする。
「あはははは、でも、クラス全員の写真を撮るまでは、私、負けませんっ! あはははは……」
 更に身をよじる果穂。これはこれで見上げた根性である。なんとなく方向性が間違っているような気もするが。
「小さなムネにこそ、ロマンがあるんですよ。頼香さん♪ あははは……。あんっ♪」

 ちなみにその頃来栖はどうしていたかと言うと、頼香と果穂の痴態をじっと観察していたりする。
「そうか……。うまく触り続けていると気持ちよくなったりするんだ……。勉強になるなあ……。今度、私もやってみようかな? で、頼香ちゃんと果穂ちゃんのどっちにしようかな♪」

 まだまだ痴態は続きそうであったが、今日はここまで♪ あとは脳内補完よろしくです。

(おわり)

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