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「うん? なんだろ、これ?」

 変わった瀬戸物を見かけた戸増頼香は思わず声をあげてしまった。

 ここは商店街のとある店、自炊をしている頼香と同居人である庄司果穂は学校帰りによくこの商店街で買い物をする。晩御飯の材料を購入するためなのだが、今日は普段は寄らない瀬戸物屋に足を止めてある物を見つめているのだ。

「何に使う物なんだろ?」

 取っ手の付いた土鍋と言うか・・・注ぎ口とふたの無い大きな急須といった外見をしている。悩んでいると店主が声をかけて来た。

「うん? お嬢ちゃん・・・ほうじ器が珍しいのかい?」

「ほうじ器? 何に使うものなんだ?」

「これはね・・・・」 


らいか大作戦・海賊版

〜ある日のお茶会〜

作:OYAZI
画:HIKOさん


「おーい、今、帰ったぞ〜」

 大きな袋を二つもぶら下げながら頼香が帰宅の挨拶をする。袋の中には食材の他にあのほうじ器が入っている。

「重いんだから手伝ってくれ・・・、そういや用事って何だったんだ?」

 先に帰っていた果穂にぶつぶつと文句を言いながら部屋に入る頼香である。

「すいませんね、着替えていたもので」

 果穂の部屋には必要以上にひらひら少女趣味なコスチュームが散らばっていた。用と言うのは果穂ちゃん倶楽部の集まりだったのか? それとも何かのイベントの打ち合わせだったのか? とにかく巻き込まれてはかなわない・・・頼香は話題を変える事にした。

「良いよ別に・・・晩御飯のメニューこっちで勝手に決めたからな」

「それはかまいませんが・・・何にしたんです?」

 冷蔵庫に食材をしまいつつ頼香はメニューを説明する。

「・・・っとまあ、こんな感じだな」

「ふ〜ん・・・裕樹さんの好物ばかりですね?」

「なっ・・・」

 ニヤリとする果穂、目に見えて動揺する頼香。その顔は真っ赤である。まあ果穂が恋する乙女である頼香をからかうのは何時もの事なのだが・・・。

「手伝いますね・・・これは何ですか?」

 果穂が例の瀬戸物・・・ほうじ器に目を止め質問する。

「あっ・・・それか? ほうじ器って言うらしい」

「ほうじ器・・・ですか?」

 果穂が眉をしかめる。良く知らないようだ。

「それで、そのほうじ器って何をする為の道具なんです?」

「ん? その名の通りほうじ茶を作る為の道具だ。説明は聞いてきたから俺が作るよ、お饅頭も買ってあるから、来栖が来たらお茶にしようぜ」

「ほうじ茶・・・ですか?」

「果穂? どうした?」

「いえ・・・今日は知り合いにオレンジペコの良い葉をもらったのですけど・・・」

 珍しく言いよどむ果穂。

「別に痛む物でもないし、明日でもいいだろ? それに暑い時は熱い飲み物が体に良いらしいぜ」

 季節は初夏である。暑い日が続いてるし、頼香が言う事も昔から言われている事ではあるが・・・本音はなんとなく気に入ったので早く使ってみたいらしい。

「はあ・・・そうですか・・・・・・」

 果穂は不満顔である・・・なにか気に入らない事でもあるのだろうか?

「何か言いたそうだな?」

「ほうじ茶なんて・・・可愛く無いです! やっぱり女の子なんですから可愛くケーキと紅茶とかにしませんか?」

「良いじゃないか別に・・・それにもうお饅頭、買ってるんだぞ」

 ほうじ茶をすする女の子・・・作者は可愛いと思うのだが、果穂は不満らしい・・・ぎゃあぎゃあと言い合いが続いている。このくらいの口喧嘩は仲の良い証拠だろうから勝手にやっていなさい、どうせそろそろ仲裁役が・・・。

「頼香ちゃ〜ん! 果穂ちゃ〜ん! 来栖だよ〜、上がって良い?」

 来た来た、連合3人娘の最後の一人、雲雀来栖ちゃんがあそびに来ました。

「あれ〜? 二人共、何やってるの?」

 その、声をかけられた二人は・・・。

「いらっしゃい、お饅頭が買ってあるんだ! ちょっと待ってな」

「ようこそ来栖さん、今クッキーを出しますね!」

 お互いに譲る気は無いらしい。

「えっ? お饅頭とクッキーいっぺんに食べるの?」

 来栖が疑問を持つが答えは無い・・・それどころか頼香と果穂の視線が火花を散らしていたりする。

「「来栖(さん)はどっち(どちら)が良い(ですか)!?」」

 二人が声をそろえて質問してくるが・・・この状況で来栖に答えられるかどうか・・・。

「あっ・・・あははははは」

 笑ってごまかしたか・・・無難な選択だな。後頭部に大きな汗をかいているのがお約束である。

「えっと・・・あっ、あれは何かな?」

 とにかく誤魔化そうとした来栖は目に付いたほうじ器について質問した。

「ああ、それはほうじ器と言ってな、ほうじ茶を作る道具だ」

「えっ、ほうじ茶って自分で作れるの?」

「ん? 簡単らしいぞ。まずこれに番茶を入れてな・・・」

 頼香は説明と同時に実際に作って見せる事にしたらしい。来栖も興味深げに見守っている。この瞬間、果穂の敗北が決定した。

「こうやって弱火で火にかけて、煙が出てきたら中火にしてこうやってほうじ器をまわす様にして揺するんだ」

「へ〜、面白〜い。わたしもやって良い?」

「良いけど・・・気をつけろよ? 結構重いぜ」

「うん、わかった」

二人は楽しそうにほうじ茶作りに精を出している。それを見つめる果穂が寂しそうだが・・・。

「二人だけでずるいですよ! 私も混ぜてください!」

 がまんするつもりはまったく無いらしい・・・強引に割り込んでいく。

「お前なぁ〜」

 嘆息する頼香だが・・・。

「良いじゃないですか。気分が変わりやすいのが女の子ですし♪」

「おい!」

「きゃー! 頼香さんが怒った〜」

 二人は楽しそうにじゃれ始めた。本当に仲が良いね〜。

「二人共〜、遊んでないで手伝ってよ〜!」

「ごめんごめん、んで、どんな感じだ?」

「んとね〜、そろそろキツネ色になったよ〜」

「おっと・・・じゃあ火を止めてっと」

「もう完成なんですか?」

「いや、あとは余熱をつかって煙を出し切るつもりで揺するんだ」

 頼香の説明に来栖が泣き言を言い出した。

「果穂ちゃ〜ん、つかれたよ〜」

「はいはい、交代しますから来栖さんはお茶の用意をしていて下さいね」

「わかったよ!」

「んじゃ、俺もお饅頭を出しとくな」

「煙が出なくなれば良いんですよね?」

「そうだと思うぞ」

 仲良くお茶会の準備を始めるようだ。

「完成ですよ」

 果穂の声に頼香と来栖が集まってくる。

「うわぁ、良い香りだね〜」

「そだな、早速飲んでみようぜ」

「では、そうしましょうか。 急須はどこでしょう?」

 反対していた筈の果穂もすっかり乗り気になってます。

 ・・・・・・。

 ・・・・・・。

 ・・・・・・。

「ほうじ茶もおいしいね〜♪」

 来栖はご満悦である。

「自分で作ると好みに合わせられるからな」

 頼香も満足そうだ。ほうじ茶作りに反対していた果穂はどうかな?

「意外と楽しいものですね、今度はビデオに撮っておきましょう」

 また作るつもりらしい。

「お饅頭もおいしいよ〜」

 みんなで仲良くお茶を楽しんでいるようだね。連合3人娘はこうじゃなくっちゃ! なごんでいる3人を見るとこちらも嬉しくなる。

「「「じ〜〜〜」」」

 ふと気が付くと3人娘が私を睨んでいた。もしかして気付かれた? 馬鹿な最新のステルスコートの筈だ!

「何処で手に入れたのか知りませんが、連合の技術を誤魔化せる程の物では無いようですね」

 果穂が怖い声で私に告げる。おかしい・・・猫耳な宇宙人は最新型だといっていたのに・・・マタタビと交換して、向こうも喜んでいたし。

「キャロラット人かな? キャロラットではマタタビは麻薬じゃなかったか?」

「そうですね・・・キャロラットの技術力はプレラットに比べて低いですから・・・。それにしても麻薬密輸に協力ですか・・・犯罪ですね」

 頼香と果穂が話し合っている・・・しまった・・・プレラットの技術を供与してもらえば良かったのか。

「それに、少女の生活をのぞき見るなんて関心しませんね・・・」

「OYAZIさんひどいよ〜」

「ストーカー行為は犯罪だな!」

 それぞれの顔には隠しようの無い怒りが浮かんでいる・・・どうやら私もこれまでの様だな。

「覚悟はいいか?」

 このごろ標準装備と化した気もするオーラハリセンを持って頼香が訪ねてくる。その迫力に私は肯くしかなかった。

「「「じゃあ・・・逝ってこい!!」」」

 3人の振るうオーラハリセンは恐るべき威力だった、こんなもので殴られているかわねぎ司令をあらためて尊敬しつつ、私は☆になった。


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