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2004年年賀作品
お正月はこれですか


作:かわねぎ
画:HIGE/J様
キャラクター原案:OYAZI様、かわねぎ




 宇宙基地 Trans Space Nine。惑星連合標準歴で年末がやってきた。どの世界でも年末は区切りとなるようで、何かと慌ただしくなるのだ。堅い仕事だけではなく福利厚生のためのレクリエーションの準備もしなくてはいけない所が、宇宙基地を運営する側の大変さであった。

「意見はこの位かしら?」

 会議室をざっと見回して発言がないか確認する れも副司令。居並ぶ出席者は士官だけではなく、一般職員や近隣惑星の現地協力員の姿もある。通常の会議よりも広く意見を集めようという意図らしい。なにせ、新年祝賀のイベント。楽しめる内容にしたいというのが運営側の思いであるし、もちろん基地職員達も楽しめるように期待しているのだ。

「テランの標準的なイベントだとこんなところかしらね……」

 モニターに今までに上がった提案が表示されている。テラン星で標準的に行われる新年行事が主のようだ。会議にはプレラット人やキャロラット人もいるが、万人受けするような行事となると、どうしても無難なテラン星の行事になってしまうらしい。

「う〜ん……せっかくの正月なんだからなぁ……」
「ライカ少尉、何か他に意見がある? 自由に言っていいわよ」
「え、俺ですか? そうですね……地球のイベントなら色々あるんですが……」

 頼香のつぶやきを聞き逃さない れも。頼香としては精神が地球人というだけあって、どうしても地球――それも日本の行事を真っ先に思い浮かべてしまうのだ。しかし、雑多な人種が集まるTS9。どんな行事がウケがいいかとなると、ちょっと考えてしまう。

「副司令、発言よろしいでしょうか?」
「どうぞ、果穂さん」

 頼香が考えていると、果穂がその隣で挙手をして発言の許可を求める。地球のイベントに水を向けられたところなので、何かアイデアがあるのだろう。

「地球ではお正月には芸能人の特番と決まっているのです」
「そうなの? でも中央の芸能人なんて、とても呼べないわよ」
「芸能人だと見るだけですが、参加体験型のイベントにすれば、みんなで楽しめると思います」

 果穂の説明に今ひとつピンと来ない れも。地球の正月特番なんて分からないのだから仕方がない。しかし正月特番と言っても色々な種類がある。頼香と来栖も果穂の思いついたアイデアが何であるかは疑問に思っているようだ。

「紅白にでも分かれて歌合戦か?」
「もしかして、隠し芸でもやるの? でも練習しなきゃダメだよね」
「練習は必要ない物ですよ。それに集客力もあるものです」

 果穂がトレードマークの伊達眼鏡を中指でちょいとあげながら、頼香と来栖の疑問に答える。もっとも、何をやるか言っていない時点で答えになってはいないのだが。

「副司令、よろしければ、私の方でプロデュースさせて頂きたいのですが……」
「でも、イベント会場はどうするのかしら?」
「広い所が……そうですね、独立環境ドームを希望したいのです」
「手配しておきます。では計画書を早いうちに提出するように。いいわね」
「分かりました」

 はっきりと答える果穂の脇で、まだ疑問顔の頼香と来栖だった。当然一緒に準備を手伝うことになるので、何をやるかが気になってしまう。

「ねぇ、果穂ちゃん、いったい何なの?」
「大体、ドームだったらほとんど屋外みたいな物だぞ」
「それはですね…… 果穂が頼香と来栖に耳打ちすると、楽しそうな表情になる来栖と、ますます怪訝そうな顔になる頼香だった。


  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★


 1月1日。宇宙空間を快調に飛ばす『U.S.S.あいくる』。TS9への入港のため、あいくるを操縦している かわねこ少尉が管制と交信をし始めると、いきなりれも副司令が音声のみで通信に割り込んでくる。

「かわねこ少尉!」
「あ、れも君。今帰ったにゃ」
「どこほっつき歩いていたんですか。イベント開始時刻ギリギリですよ」
「す、すまないにゃ。タイシアン星、ジンジア星、シングーン星……これだけ表敬訪問してきたのにゃ。だからワープ8でもこれが精一杯にゃ」
「努力は認めますが、主催者が遅刻では示しが付きません。すぐ控え室に転送します」
「ちょ、ちょっと『あいくる』はどうなるにゃ」
「こちらから人を出して接舷させておきますから、急いでください」
「わかったにゃ。通信終了」

 そう言って通信を切るやいなや、転送の淡い光に包まれるかわねこ。性急すぎるなと思いながらも、転送に身を任せる。一瞬の後に『U.S.S.あいくる』からTS9内の小部屋へと転送されていったのであった。

 そこではメイド服の緒耶美が、かわねこの準備を手伝おうと着替えを片手に到着を待っていた。どうやら、本当にイベントが始まるまでの余裕は無いらしい。

「ご主人様、急いでください。着替えを用意しています」
「うにゃ? 士官服ではダメなのかにゃ?」
「これを着るようにと……果穂さんが準備していたのです」
「果穂ちゃんがかにゃ?」
「詳しいことは後です。もう、時間がないですよ!」

 緒耶美が半ば押しつけられるように「着替え」をかわねこに渡す。その勢いに押されたのか、受け取ってすぐに慌てて士官服から着替える かわねこ。何のために着替えが必要なのか、考えている暇もなかったようだ。

「あにゃ? こ、これはなんにゃーーーー」

 自分が着替えた衣装が何かにやっと気が付いた かわねこは思わず叫び声を上げる。狭い小部屋だけにその声は部屋中に響き渡る。服を脱いでその「着替え」を着込むところだった緒耶美は、きょとんとした顔でかわねこをじっと見る。
なんでスクール水着なのにゃ! それに緒耶美ちゃん、着替えは向こうでするにゃ!!
「水中戦闘用特殊戦闘服って聞いています」
「戦闘服って……どう見てもスクール水着にゃ!」
「そういうんですか?」

 緒耶美に抗議しようとしてそちらを向くが、後は水着を着込むだけの姿。さすがに直視するのはまずいという意識が働き、思わず目をそむけてしまう。

「大体、5−1って何にゃ」
「チーム番号らしいですけど……」
「わざわざ名前まで入れなくても……」

 かわねこの姿は、いわゆるスクール水着。もちろん「5−1 かわねこ」のゼッケンが付いているし、セッティングを仕切った人物を考えると、旧タイプの物であることは言うまでもないだろう。

 確かに果穂のやりそうなことだなと思いながらも、そもそも今日のイベントは何であるのか分からない。報告では『新春記念イベント』としか聞いていないのだ。近隣の連合領域内の惑星に新年挨拶回りをしていたので、一切をれも副司令に任せていたことが裏目に出たということか。

「なんでわざわざこんな恰好になる必要があるのかにゃ?」

 根本的な疑問に対する答えは、小部屋に入ってきた れもの口から語られることになった。ちなみにこちらも「2−3 れも」な水着の上にパーカーを羽織って、準備万全だ。

「司令……代理、準備はいいですか。開会の挨拶をして頂きます」
「あの……一つ聞いていいかにゃ?」
「手早くお願いします」
「今日のイベントって……一体何にゃ?」
「あら? 聞いていませんでしたか?」

 小部屋の外を指さす れも。独立環境ドームのビーチにちょっとした舞台が作られており、その向こうには既に水着を着込んでいる職員や士官が開催が今かと待ちわびていた。どうやらここは舞台の袖の小部屋らしい。

「なになに……『新春チーム対抗水泳大会』……って、これは何なのにゃ!」
「ご覧の通りですが、何か?」
「聞いてないにゃ……」
「開会のあいさつを司令代理にやって頂きますので、準備が出来次第、来てくださいね」
「大体、何でボクがそんなこと……」
「企画会議を勝手に休む人に拒否権があると思いますか?」
「う゛……」

 そう言って舞台へと向かう れも。残された かわねこは返す言葉もなく、とぼとぼと れもの後を付いていく。どうやら、自分の知らないところで企画が既に出来上がっていたらしい。舞台上のマイクの前におずおずと進み出る。

「おーし、水中騎馬戦は負けないぞー!」
「冬にプールってのも面白いよね〜」
「2Dも3Dもカメラのセットがバッチリです。楽しみですね」
「お姉さまと同じチームです〜」」
「あの生モノにご主人様は渡せませんです。チーム割り変更して欲しいです!」

 そんな参加者達の声が漏れるのを聞きつつも、視線が舞台上に立つ自分の方に向けられるのを否が応でも意識してしまう。司令官として部下達に訓辞をする事には慣れているが、なにせ今は「かわねこ」の姿。それもスクール水着とあっては、視線が恥ずかしい。

(ボクがこうなるなら、承認しなかったのににゃぁ……)

 心の中でそんなつぶやきをしながらも、ぐるりと会場を見回して、自分の開催の言葉を待っている面々を一通り眺める。とりあえずはこの場を切り抜けるのが先決であり、イベントを進めるのが司令代理としての責務だろう。その辺の切り替えは、さすが司令官といったところか。

「これより、第1回TS9新春チーム対抗水泳大会を開催するにゃ。みんな、頑張って欲しいにゃ」
「「「「おーーー!!!」」」」

 さすがTS9の面々。ノリがいいのはいつもの事だ。それにしても、この後はこの姿で競技に参加しなくてはならないのかと思うと、ちょっと複雑だ。後で、その辺を果穂に問いただす必要があるだろう。おそらく、はぐらかされてしまうだろうけれど……


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 一部の告知のチラシには「女だらけの水泳大会」とか「ハプニングがあるかも」とかの文句が並んでいたあげくに、闇では写真集の予約を受け付けていたらしいが……そんなことは知らなくてもいい事だろう。



<あとがき>

 新年明けましておめでとうございます。2004年の年賀作品です。元々HIGE/J様に書いて頂いたかわねこ&緒耶美ちゃんのスク水イラストにピンと来まして、そのSSを書いてみた物です。なにせ正月の特番だけに、年賀にちょうど良いかな、なんて。この水泳大会、「おっぱいぽろり」な率は低いと思いますよ……ぽろりとする物が少ない参加者層だけに♪



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