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 宇宙というものは、きちんとした律によってつつがなく流れてゆくものである。
 だが時として、その律が僅かにではあるが崩れてしまい、それによりとんでもない事態が発生してしまうことがごく稀にある。
 そんな律の乱れが、今、とある宇宙基地の中で発生していた。

………まあ、この基地に関しては『律』そのものが乱れまくっているという気がしないでもないのだが………

 そしてその僅かな律の乱れの結果は、ここ、TS9という基地内での単なる噂話から始まった。


小さな小さな、海の………

キャラクター原案:かわねぎ様 OYAZI様
作:keyswitch



 宇宙基地には、当たり前の話ではあるが季節というものは存在しない。
 とはいえ、星で生まれ星で育ってきた者にとって『季節を感じる』ということは、心の安らぎを保つ重要な効果をもたらしていた。
 宇宙開拓時にはそんな所にまで手が回らなかったのだが、宇宙基地を造るほどに技術が発達した者達は、その地に『季節』というものを欲しがるようになっていった。
 そのために、各基地内には大小の違いこそあれ、それぞれの季節を感じることが出来る娯楽施設のようなものが必ず作られている。
 もちろん、ここTS9基地にも、立派な娯楽施設が完備されている。
 …その規模の割りに、施設が大きい気がしないでもないが…

 春を感じるために、桜の花びらが舞い散る中でお花見が出来る部屋。
 夏を感じるために、波の起こる人工とは思えないほどの砂浜と海(みたいなプール)。
 秋を感じるために、紅葉した落ち葉が舞う中で落葉狩りが楽しめる部屋。
 冬を感じるために、人工のスキー場まである。
(ちなみに設計者は『近くの星を参考にしました』といっていたらしい)
 もっとも、春と秋は同じ部屋を流用しており、申請によってそれぞれ入れ替えて使われているのだが…夏と冬の施設に関しては『スポーツ施設』としての役割もあるので、おのおの別々に常設されている。
 ただその規模は…プールなどという言葉では推し量れないほどの大きさがあったりする。まあ、研究班が『海洋生物の研究も出来るように』と申請したために、とてつもない広さを持った訳なのだが。
 また、スキー場も同様に『冬山を想定した訓練が出来るようなサイズを』という事で、毎年最低一人は遭難者が出るほどの広さなのだ。(ちなみに『雪山マップ』『初心者・上級者別登山ルート』なるものも存在する)
 とはいえ、そこは完全に管理された施設内部・万が一溺れたり遭難したとしても、すぐに救助されるようになっているので、開設以来死者は一人たりとして出ていない。
(流石に怪我人ゼロとはなっていないらしいが)


 そんなだだっ広いという単語が似合いそうな場所で、奇妙な事が起こったとの情報が司令の耳に入ってきた。
 曰く、『プールに未確認生物がいるかもしれない』とのこと。
 こんな訳のわからない情報が司令官の元にあがってきたのは、近くの星のお盆や秋分という時期をとっくに過ぎた時だった。
『全身ずぶぬれの人間のようなものが、プール内部で目撃された』
 もしこれがその時期だったら、充分怪談として通用するだろうが、今はその時期ではない。さらにいえば、人工的に管理された施設内で、そんなことが起こることは絶対といって良いほどありえないのだ。
「たぶん、夜の設定にして砂浜でデートでもしていた誰かが、泳いでいた人物を見間違えたんだろうな」
 司令はそう考えた。
 たしかに、とてつもなく広いとはいえ完璧に管理された空間である。そんな中に幽霊が出たなどということは常識的には考えられない。
 となると、可能性から考えてこう考えるのが一番妥当というものだ。

「とはいえ、情報としてあがってきている以上調べないわけにはいかないからな。
 誰に頼めばよいものか」
 と、別の意味で頭を抱え始めた司令だった。

 ちなみに…
 れも副司令は水に入るのを極端に嫌う。まあこれは元が………であるためなのだが。それ以前に、そんなことを言おうものなら『私は忙しいんです! 司令ご自身で調べてください!』などと、やぶへびになることは間違いないだろう。
 というわけで、れも副司令の下で働いているその他大勢(TS9基地での登場人物のほとんど)には、依頼することは出来ないだろう。下手にれも副司令の耳に入ったら…
 ………副指令より立場の低い司令官というのもどうかと思うが………
「…適任者がいない…」
 関係ないことで頭を抱える司令官であった。

『なら本人が行けば良いではないか?』といわれるかもしれないが…やっぱり人間誰しも、訳のわからないものは怖いものである。それ以前に、そんな時間があるのであれば、近くの辺境惑星に残してきた(?)大切な家族と僅かでも同じ時間を共有したいのである。
 もしくは『旅に出ます』の書置きをおいて、一人鈍行列車で自由気ままな旅行に出るとか…
 むろん、司令という立場である以上そんなことは許されないのだが。

 と、
「そういえば、ライカ・フレイクス少尉が現在TS9に滞在しているじゃないか。
 彼女ならしっかりした腕と実績もあるし、正体不明といえどもそこらの生命体に負けることはありえない。
 よし、彼女に依頼するとしよう」
 と、早速依頼書を書き始める司令だった。流石に『指令書』を書くわけにはいかなかったらしい。

−−−−−−−−−−


「俺にこんなことをやらせるのか?」
 依頼書を受け取ったライカは、頭を抱えてしまった。
 そこには、
『娯楽施設のプールで正体不明の生命体が目撃されたとの情報があった。そこで貴殿にその正体不明の生命体の確認を依頼したい。
 もし人手が足りないのであれば、現地調査員の強力も許可しよう。その場合の報酬は別途支払われる。
 なお、基本報酬のほかに追加報酬として『1週間プール貸切の権利』をお約束しよう TS9司令・かわねぎ』
「確かに、今年はゆーきと一緒に海へいけなかったから、渡りに船なのかもしれないが………そういえば、ここのプールって海とほとんど同じで、夜のデートにも最適………」
 ちょっと頬が紅くなって顔がほころぶライカだったりした…

「とりあえず受諾の報告をしておいてっと。
 で、正体不明の生命体って…」
 そういいながら、添付されていた資料に目を通す。
 そして…今まで紅かった頬が、一瞬のうちに真っ青になっていった。

 添付の資料にはこんなことが書かれていたのだ。
『夜の水面に、ずぶぬれの髪の女が顔だけを出してこちらを見ていた』
『予約して誰もいないはずなのに、泳いでいる最中に誰かに足首をつかまれて水中に引きずり込まれた』
『海をバックに写真を撮ったら、いないはずの人影が写っていた』
 ………完全に恐怖体験のオンパレード状態の報告書だった。

「こ・こんなの絶対に確認出来るかーーーーーっ!!!!」
 ちゃぶ台返し…は、流石に机が固定されているので不可能だったらしい。
「だ・だめだ! さっきの受諾をキャンセルしなければ!」
 そういいながら手元の情報パッドを操作しようとした。しかし、その場面に…
『受諾を確認しました』
 と表示されているのを見て…がっくりと肩を落とすライカの姿があった。


「………果穂も来栖も、先に帰っちゃったしな〜
 でも、俺一人でなんて怖くて行けるわけないし…」
 ライカは大の怖がり・お化けなんてものは一生お目にかかりたくないとさえ思っている。しかし、そのとてつもなくいやな事であっても、一度引き受けた以上、何とかして完遂しようと考えるのは軍人の鏡だろう。
 が、一人では怖いのはどう転んでも変わることもなく…かといって、自分よりも年上の人物に協力を依頼するのは、何か恥ずかしい感じがして、少なくとも同年代の協力者を見つけ出そうと、自分の記憶の中で探している最中だった。
 と、
「あ! いい人が1人いた♪」
 ある人物を思い出したライカは、協力を取り付けるために基地内へと飛び出していった。




 その日の夜(といっても宇宙に昼夜の区別は無いために、施設が夜間モードになったところで来たのだが)、施設プールには二人の影があった。
「…………何でこんなことになったのにゃ?」
 一人は依頼を受けたライカ・フレイクス少尉本人だが、もう一人は………かわねこ少尉だった。
「そもそもあの依頼は、ボクがやりたくない為に………」
「? 何か言ったか?」
「な・なんでもないにゃ!」
「そうか。
 とにかく、速く正体不明の生き物を確認して、さっさと帰ろうぜ」
「………了解にゃ」
 半ば諦めの表情で、ライカの後をとぼとぼと付いてゆくかわねこだった。



 実はこの数時間前…
 ライカは、ラウンジにいたかわねこ少尉といつも一緒にいるクマ耳少女を見つけだした。
「あ、ちょうど良いところに。実は頼みたいことがあるんだが」
「頼みたいこと? なにかにゃ?」
「ここの司令からあることを頼まれたんだが…手伝ってくれる人がいなかったんだ。
 そこでぜひ、かわねこ少尉にも手伝って欲しいと思って声をかけたんだ」
「にゃ? あれのことかにゃ?」
「? 知ってるのか?」
「し・知らないにゃ…
 で、その頼まれ事って何かにゃ?」
 詳細はしっかりと知っているのだが、知らない振りをして聞くかわねこだった。
 まさか、自分のところへ回ってくるとは夢にも思ってなかったらしいが。

 で、説明もひと段落付いたところで…
「で、ボクに手伝って欲しいと…」
「そういう事」
「それだったら、緒耶美ちゃんのほうが力もあるし…」
「おいおい、この娘は軍属じゃないぞ。TS9にいるが、あくまで民間人なんだ。
 そんな娘に手伝わせるわけにもいかないだろう?」
「それはそうだけどにゃ…」
「だから、同じ軍属として・TS9司令代理として、是非とも手伝って欲しいんだ」
「いや………それは………」
 渋るかわねこ。しかし、一緒にいた少女の口から、とどめの一言が発せられた。
「ついに、ご主人様が大活躍なされる刻が来たのですねっ♪」
 目をきらきらさせながら、いつもお世話になっているクマ耳の少女にそういわれてしまっては『実は自分やりたくなくてフレイクス少尉に…』などといえる訳も無い。
 そんなことを言ったら、ライカ少尉にもクマ耳少女にも『かわねこちゃんはそんな人だったの!』といわれるのは目に見えている。
(しかし、何を思って大活躍なんて言葉が………)
 そう思いながら、これはどうがんばっても拒否できないな・と半ば諦めの思考に入り込んでいるかわねこだった。


 そして捜索中…さすがに無言での捜索は気分的に落ち込みそうだったので、かわねこはライカに声をかけた。
「フレイクス少尉、ひとつ聞いていいかにゃ?」
「ん? なんだ?」
「何で夜間に来たのにゃ? 別に調査するのなら昼間でもよかったと思うんだがにゃ」
「………………」
 もし明るかったら、ライカの額に冷や汗が流れたのがわかっただろう。
「そ・そりゃもちろん、昼間よりも夜間の方が目撃例が多いからに決まってるだろう? 目撃例が多いということは、見つかる確率が高いってことだろ?(幽霊は夜出るものと決まってるから夜にした・なんて言えないよな〜)」
「ふ〜ん、そんなものかにゃ。
 まあ、ボクの場合はネコ目だから、夜目が利くから支障は無いにゃ」
 建前と本音がかなり食い違っていることは、どうやらばれなかったらしい。

 浜辺をてくてくと歩きながら、不審者がいないかどうかをチェックしてゆく。
 ライカは気配を読みながら、かわねこはしっかりと自分の目で確かめながら。
 そして時間は過ぎてゆく………



 ぱちゃん



 その音は、かわねこ少尉の耳にしか聞き取れないほど小さな水しぶきの音だった。しかし、かわねこにはハッキリと聞こえた。
「フレイクス少尉! 何かが海にいるにゃ!」
 その声を聞いて、ライカは戦闘体制に入る。もっとも、ちょっぴり逃げ腰なのは、ある意味ご愛嬌なのかも知れないが…
「かわねこ少尉、何か見えるか?」
「何か…何かがいるにゃ。
 水の上に………人間の頭のようなものが出てるにゃ…」
 それを聞いたとたん、ライカの腰がさらに引けてしまった。しかし逃げ出さなかったのは流石といえるだろう。どうやら気力でカバーしたようだ。
(かわねこ少尉がいるのに、悲鳴を上げて逃げ出すのが恥ずかしかったともいえなくも無いが…)

「そ…それが何か、ハッキリわかるか?」
「ハッキリとは判らないにゃ。でも、人間の頭なのは確かにゃ。
 何か泳いでるように見えるけど…職員かもしれないにゃ?」
「それは無いはずだ。今この施設の中には俺たち2人しかいない。
 それ以外にいるとしたら、密航者か…」
「幽霊かもにゃ?」
「ひっ!」
「ど、どうしたのにゃ!?」
「な…なんでもない」
 幽霊という単語に過敏に反応したらしい。


 そして、

 ぱちゃん…ぱちゃん…

 ライカにもハッキリ聞こえるくらい、水しぶきの音がしてきた。しかも確実に近づいてきている。
「ゆ・幽霊かにゃ……」
「そ・そんなことがあるものか。
 幽霊だったら、音も立てずにスーッと近づいてくるはずだ」
「いまどきの幽霊は、ラップ音が標準で付いてくるらしいにゃ」
 何が標準なんだろう…どうやら2人とも、頭の中はちょっとしたパニックになっているようだ。

「そ、そうだにゃ!
 リモコンの照明スイッチで明かりをつけるにゃ!」
「ナイスアイデア! かわねこ少尉、すぐにライトをつけるんだ!」
「へ? フレイクス少尉が持ってるんじゃないのかにゃ?」
「俺はそんなもの持ってないぞ。かわねこ少尉が持ってるんじゃあ…」
「ボクは明かりなんて必要ないから、持ってこなかったにゃ」
「………」
「………」
 どっちもどっちらしい…

 そんなこんなをしているうちに、
「う、うにゃ〜〜〜〜
 すぐそこまで来てるにゃ〜〜〜!」
「ど、どこだっ!?」
「そこっ、そこにゃっ!」
「だからどこだっ!?」
 完全にパニックになる2人。



 そして、ライカの目にもわかる所まで人影が近づいたところで…
「ああ・・・やっと逃げない人に出会えたよ〜〜〜」
『へ?』
 そこにいたのは…上半身は少女だが、下半身は魚・いわるゆ『人魚』であった。上半身の見た目の年齢からすると、ライカ達とほぼ同じくらいだろか。
「みんな、私の姿を見たとたん逃げちゃうんですよ〜
 でも、あなたたち2人は逃げませんでした。これでやっと私がここにいる理由が聞けますっ」
 逃げなかったというか…単に逃げるのを忘れてパニックになっていたというか…
 そんな言葉を投げかけてくる人魚を、呆然と見つめる二人だった。
 ………というよりも、人魚の姿が完全な想像通り・まるで伝説に伝わるような美しさと可愛らしさで、一時的な虜になっていたのかもしれない。
 それに、『マーメイド』のお約束通り、上半身裸なのについつい目が行ってしまっているというのもあるだろう。
 何せ2人はもともと………いや、これは省略。

「とっ、とりあえずこれを着てくれ」
 最初の幽霊パニックが収まり、別のパニックがおきかける前に、ライカは念のために2枚羽織っていた(内側の制服は防弾仕様になっている)連合の制服のうち、上に着ていた1枚を人魚の少女に手渡す。
「えっと…これはなんですか?」
「とにかく、俺たちみたいに身につけてくれればいいんだ」
「よくわかりませんが…これでいいんですね?」
 見よう見まねで制服を身に着けた人魚に、2人はとりあえず胸をなでおろした。
(よかった…幽霊じゃなくて)
(少女のあられもない姿にゃんて、あんなものは目の得…じゃない、目の毒にゃ)
 考えてることは違ったようだが…


 とりあえず落ち着いたところで、話が再開される。
「で、あんたは一体何者なんだ?」
「私はメローといいます。
 つい1週間ほど前まで、仲間と一緒に海を泳いでいたのですが、何かに引っ張られるよう感じがあった直後に、ここに一人ぼっちでいたんです。
 周りには誰もいなくて…まったく知らない場所で…すごく不安になったんです。
 それで、ここに来る人たちに聞けば何かわかるんじゃないかと、尋ねようとしたんですが…なぜかみんな私の姿を見たとたん逃げてしまって」
「………まあ、自分しかいないところにひょっこり別人が現れたら、とりあえず逃げるだろうな。
 でも、何でこんな閉鎖されたところに人魚・というか別の種族がいるんだ?」

 メローの話を聞きながら考え込んでいたかわねこは、とある事象を思い出してそれを口にした。
「…どうやら、時空振に巻き込まれた可能性が高いのにゃ」
『時空振?』
「まだ、連合でもハッキリとは解明されてにゃいのだけど、
 ごく稀に、いきなり離れた空間同士が繋がってしまって、近くにいた人や物が一瞬のうちに別の空間に放り出されることがあるのにゃ。
 それのことを、仮に『時空振』と呼んでいるのにゃ」
「それって、連合のワープ理論とどう違うんだ?」
「そもそもの理論自体が全くわかっていないのにゃ。
 いつ・どこにその時空振が現れるのか、そして、それはどことどこがつながるのか。全くの未知の現象なのにゃ。それに、時空振自体が発生した回数が、連合発足時から数えても片手で足りるほどしか確認されてないのにゃ。

 近くの惑星では『神隠し』なんて呼ばれる事柄があるらしいけど、その中にも時空振が関係していると言う情報も未確認ながらあるにゃ。
 とはいえ、連合の最新技術でも、その発生予測どころか発生したことさえ観測できない事象でしかないのにゃ。今までの報告でさえ『例えワープ9で飛んだとしても不可能なほどの宇宙船の超高速移動が起こった』という事から推測されているだけなのにゃ。
 多分だけど、メローちゃんもその時空振に巻き込まれて、自分たちの住んでいた星からこのTS9のプールに飛ばされた可能性が高いのにゃ」
「じゃあ、私は元いた場所には…」
「そもそもの理論が解明されていないから、どこから飛ばされてきたかは、連合の技術でもわからないにゃ」
 かわねこのその言葉に、悲しげな表情になるメロー。

「でも、メローちゃんは奇跡的に助かったのにゃ。そんなに悲観することは無いにゃ」
「奇跡?」
「そうにゃ。
 時空振でつながる先は何処かなんて全くわからないにゃ。最悪の場合は、ブラックホールの真ん中につながることだってあるのにゃ。そうでなくても、真空の宇宙空間につながったら息が出来なくて死んじゃうにゃ。
 実際報告された事も、100%で宇宙船の乗組員は亡くなっているのにゃ。メローちゃんは、記録上初めて時空振から生還した事になるにゃ。
 それに、時空振で飛ばされるのも限りなく奇跡に近いけど、水中から水中への移動で済んだということは、それこそ奇跡中の奇跡にゃ。

 ほかにも、メローちゃんは異性人だけど、どうやらテラン人やキャロラット人と同じ空間で生きていけるみたいなのにゃ。もしこれが、テラン人たちと違う大気を呼吸の主成分にした異性人だったら、すぐに死んじゃったにゃ。
 それ以前に、『水』自体の成分だって同じである確立は限りなく低いにゃ。液体空気の『水』の中で生きている生物だっているくらいだから…ここの『水』で生きていけるということは、少なくともここで生活できるということにゃ。
 一度時空振に巻き込まれたということは、ここで何の問題も無く暮らしていけるのであれば、もしかすると元に戻れる可能性だってゼロじゃないってことにゃ。もちろん、連合もメローちゃんの故郷の探索に全面的に協力するにゃ」
「………慰めてくれているんですか………」
「慰めじゃないにゃ!
 人生諦めたらそこでお終いにゃ。今・生きてるんだから、下を向かずに上を向いて進んでゆくのにゃ!」
「そうだぞ。
 生きていれば、奇跡だって起こる。諦めてしまったら、その奇跡だって起きなくなっちゃうんだからな」
 そんな2人の言葉に…
「あ…ありがとうございます。お姉さま…
『お姉さま!?』
「そうです。私に生きる勇気と気力をくれた御二人は、私にとっては大切な人ですっ!
 かけがえの無い人・それは家族。なら、御二人は私のお姉さまですっ!」
『………………』
 その発言に、どう返事をしていいのか判らなくなる2人であった。




 その後、
 メローは、しばらく前にTS9に来たクマ型ヒューマノイド【ポリノーク】の少女と同じ扱い・つまり、難民として認定されることになった。
 彼女の発言から、マーメイド型ヒューマノイド【シェルフィーナ】と名づけられたが、ポリノーク人と同じく彼女の故郷である星を探し出すのは不可能に近いと判断された。
 なにせ、シェルフィーナ人は水面上・及び水中を生活の中心としている種族である。逆に言えば、まだまだ宇宙へ進出してはいないということなのだ。それはメローの発言からもはっきりとしている。
 宇宙に進出していない以上、その種族の住んでいる星を探し出すのは、砂漠の中に落とした1つの小石を探し出すのと等しいほどの難しさなのだから。
 もちろん、そのことはメローに伝えられることはなかったが…

 そして…

 メローは、TS9のプール(といってもとてつもなく広く、メロー曰く『1人分のテリトリーとしては広すぎるぐらいです』とのこと)で、監視員兼研究員として働くこととなった。
 もっとも、その風貌から結構な人気を集めることとなり、一度お遊びで開いた『水泳教室』は、かなりの盛況ぶりだったという。
 研究員としても彼女は一流だった。元が水中を生活の基盤にしているので、当たり前といえば当たり前の話なのだが。

 彼女の目下の目標は、1人で食堂へ行って食事をすることだという。
 現在は出前を頼むか、誰か手の空いた職員に水槽を持ってきてもらい、そこに入って連れて行ってもらうしかないかららしい。
(まあ、一生無理である可能性が高いのだが…)

 ちなみに彼女…年齢を確認するときに、「私? 99歳で〜す・数日後に100歳だよ♪」といって回りを驚かせたという。最もその後の検査と本人の発言より、
『彼女の暮らしていた星では公転周期が約36.5日と短く、その為に年齢の数え方も早いだけ。連合基準に照合させると実年齢は1/10の10歳である』
 との判断が出された。
 もっとも、彼女の意思を尊重して、連合の書類上だけには連合が調べた実年齢が記載されているが、基地内では本人の年齢で通っている。流石にお誕生祝いを1年に10回も行うわけにも行かないので、10回に1度にして(連合の基準に合わせて)いるらしいが…




 とある日・ラウンジにて…
「ご主人様は私のご主人様です! あなたのお姉さまなどではありませんっ!」
「お姉さまは私のお姉さまです! あなたのご主人様などではありませんっ!」
 ………メローは目下、かわねこ司令代理の争奪戦に参戦しているとかしていないとか………
「100歳の年増・ううん老人のくせに何言ってるんですか!」
「若僧は黙ってて! それに連合とやらの基準だと、あなたの方が年上じゃないの!」
「とっ・年上のことは素直に聞くものなのですっ! それが礼儀というものですわっ!」
「私の星にそんな礼儀なんて無いわ! それにお姉さまは若い人が好みなんだよっ!」
「そんなことあるわけないですっ! 絶対に同い年が好みなんですっ!」

 ちなみに、ラウンジで2人が出会うといつも口論になるのは、近いうちにTS9の名物のひとつになるのかもしれない。
 もっとも、片方は常時水槽に入った状態なのでお互いに手は出せない為、口喧嘩だけ・もしくはかわねこ少尉に対するサービス合戦に集中しており、ある意味平和な争いなのかもしれないが… 

 かわねこだけは、新たな火種を抱えてしまった事に頭を抱えているようだった。
 彼女たちの言い争いの中で、『かわねこの趣味』というのが勝手追加されてゆく事に関して………


もしかすると、スキー場に『雪ん娘』が現れる日も、そう遠くはないかもしれない。
なにせここは………………


ゴメンナサイ、電波が舞い降りました。
何故かいきなり『人魚』のイメージが思い浮かんで………TS9にいたら? というのでこんなのになっちゃいました。
ちなみに、クマ耳少女との司令代理の取り合いは、永遠に無いでしょう。なにせ、メローという娘自体、この一発ネタ用のキャラですから。
(え? 雪ん娘? そんなもの考えてるわけないじゃないですかぁ♪ だれかが書いてくれるのを首を長くして待ちますよ〜♪ 雪女でも少女なら可)



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