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らいかわーるど」は、かわねぎ様よって提唱されたシェアワールドです。なお、その基礎となる世界観は、かわねぎ様の作品『らいか大作戦』と呼ばれる世界観に基づいています。設定詳細は 『Trans Space Nine 』に記載されていますので、そちらでご確認ください。

M・O・E-DOLL」は、かわねぎ もぐたん 両氏を中心に『妖精さんの本棚』『TS9』担当者様各位によって纏められたシェアワールドです。設定詳細は 『MOE-DOLL設定集』をご覧ください。
この作品の設定は「らいかわーるど」および「M・O・E-DOLL」に準拠しておりますが、メインとなるストーリーとは一切関係ありませんのでご了承ください。

現実世界で聞いたような名前』の人物が話の随所に出てきますが…あくまでも『他人のそら似』です! 現実世界に存在する人物と間違えないようご注意下さいね♪

(一部の方に『非公開』との連絡をいたしましたが、キャラクター原作者様の『公開』の了承がいただけましたので、ここに発表させていただきます。発表に際し、ご快諾いただきました原作者様方にはお礼申し上げます)

★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★



「♪♪〜♪〜♪♪………おや?」
 珍しく、TS9の基地に戻ってきた司令は、通路に落ちていた1センチ四方程度の『ある物』に気が付いた。
「これは…前にピナフォア君に同じモノを見せてもらったことがあるなぁ。ええっと、確か…
 そうだ、これはDOLLが使う記録用の媒体だ」
 そう、それはDOLLが記録用に使っている記録用のチップだった。
 もっとも、形状は1センチ四方程度の紙の切れ端にしか見えない。が、実際は連合が使っている記録媒体よりも遙かに高性能なもので、これひとつでエクサバイトの記憶容量がある(らしい)。
「こんな物を落とすのは、ピナフォア君しかいないな。まぁ、彼女らしいと言えば彼女らしいが。
 ………っと、まてよ。もしかしたらこの中にTS9の重要な機密事項が隠されているかもしれないなぁ。そうなると、これをそのまま返すわけにも行かなくなるな。
 かといって…返さないとしても、彼女がいつまでも無くしたことに気づかないはずはない。もしもそうなると、彼女がどんな行動をとるか予測が出来ないからなぁ。下手をすると暴れ出して…
 だが、この中に入っているデーターを見る方法が我々の技術では不可能なのも事実だ…さて、これは困ったぞ」
 と、1人で自問自答をしているのだった。
「返すべきか返さざるべきか、それが問題だ…まぁ、お茶でも飲みながらゆっくり考えるとするか」
 そう言って司令は、一路ラウンジへと向かうのだった。




危険な記録

キャラクター原案:かわねぎ様、ひめくり様、もぐたん様

作:keyswitch




「あれ?、司令官殿じゃありませんか。お久しぶりですね♪」
 司令官がラウンジに入ったところで…当の本人とばったりであってしまうということは、いわばお約束と言ったところだろう。
「や・やぁ、ピ・ピナフォア君…久しぶりだねぇ」
「はい。
 あ、そろそろTS9の内部構造のデーターが出来上がりますから、そのときには絶対にいてくださいね」
「ああ、もちろんだよ」
 と、無難な返答をする司令官。もっとも、内心は『ばれはしないだろうか』と焦ってはいたのだが、流石にそこは中佐・心の動揺を顔に出すようなヘマはしなかった。
「ところで、こんな時間ここにいると言うことは…ピナフォア君はここで一時休憩かい?」
 確かに、現在の時刻は休憩時間ではない。ということで、現在ラウンジにはピナフォアと司令官の2人だけが休憩している。昔ならばこんな状態になったとたん『同化しましょう♪』などとピナフォアが詰め寄ってきたのだが、流石に司令が『対DOLL兵器呼出ボタン』を持っていることを知ってしまった以上、迂闊には手を出せなくなってしまっていた。
「そうで〜す♪ ちょっと通気口内で迷っちゃって休憩時間を逃しちゃったので、代わりに今休憩してるんです♪」
 DOLLが迷うような通気口って一体…

 と、ここで、司令官はふと良いアイデアを思いつく。
「そうだ、ピナフォア君。ちょっと聞きたいことがあるのだが」
「はい? 何ですか?」
「昔、君に見せてもらったことのある『DOLL用の記録チップ』の事なのだが、
 その記録チップの中に記録されている情報を見るにはどうすればいいんだね?」
「え? あれですか?
 基本的にはあたし達の身体の一部であるバイザーにセットすればバイザー内のモニターに映し出されるようになってますけど」
「じゃあ、それ以外に見る方法は…例えば、私が見ることは不可能なのかね?」
「ええっと………って、どうしてそんなことを聞くんですか?」
「もちろん、DOLLの技術を解明するためだよ」
「じゃあ、教えてあげませ…」
「最高級お子様ランチを注文しようか?」
「できますよ〜♪ バイザーが使用不能になる可能性もありますから、ポータブルタイプの再生装置がありますぅ♪」
 司令官が食堂のおばちゃんに電話をかけると同時に、ピナフォアの目の前に最高級お子様ランチが並んでいた。もちろん、その誘惑にあらがうことの出来ないピナフォアは、ぺらぺらと話しだしたのだった。
 あ、食堂のおばちゃんは今回は出番はありません。もちろん、今・ここにお子様ランチを持ってきたのはおばちゃんですが、その手際の良さはさらに磨きがかかったようで、作者が書く前に全ての事柄を終えて帰っていったのでした。
(べつに、手を抜いているわけではありませんからね♪ 信じて・お願い♪)


「で、その再生装置という物は、ピナフォア君は持っているのかな?」
「はぐはぐ・もぐもぐ…ごちそうさまでしたぁ♪
 ええ、もちろんです。普通のDOLLであれば緊急用として必ず持ってますよ。今はあたしの部屋に置いてありますが…」
「ものは相談なのだが、それを貸してもらえないだろうか?」
「でも、あんな物を借りて一体何をするんですか? 第一、再生装置だけあっても再生するチップが無いと何の役にも立ちませんよ」
「そ・そんなことはない。構造を解析するだけでもかなりのことが判るものだ。
 ということで、是非とも貸して欲しいのだが。もちろん、分解などしなくても内部構造を把握することぐらいは出来るから絶対に壊したりはしないよ」
「そうはいわれても…流石にこれを貸すわけには………」
 司令に再生装置を貸すことを渋るピナフォア。それはそうだろう、彼女はTS9職員の姿をしているとはいえ純粋なDOLLなのだから、みずから自分たちの持っている技術を他の知的生命体に漏らすことは絶対にありえない。
「うーん…残念だなぁ。
 貸してもらえるのであれば、TS9司令官最高権限で『お子様ランチ・セレーヌバージョン』を君におごってあげようと思ったのだが…」
「すぐに持ってきまーーーーーーーす♪」
 ドップラー効果を響かせながら、ラウンジを後にするピナフォアの姿があった。
 ………前言撤回…DOLLと言えども、こういう賄賂には弱いらしい。



 ちなみに『お子様ランチ・セレーヌバージョン』とは、
 昔、このTS9にお忍びでやってきたカーディナル『海のセレーヌ』が、TS9の調理人に『本当の料理人魂』を教えていったという経歴がある。その時に、若いながらも格段に腕のいいコックが1人いて、セレーヌの『料理人とは何たるか』を完璧にマスターするという快挙を成し遂げたのだった。
 それに感動したセレーヌは、その料理人に『DOLLになって自分の片腕にならないか』と持ちかけたのだが、そのコックは『私は、セレーヌ様に教えてもらった事を、この世界に広めるために残りたい』と、断腸の思いで断ったのだった。
 セレーヌは後ろ髪を引かれたのだが、若いコックのその熱意に満ちたまなざしに折れて、DOLLにして一緒に連れていくことを断念した。そして、そのコックの将来を願うのと、自分の技術の全てを受け取って欲しいという想いから、自分が今・知り得る限りの知識で作ることの出来る『究極の料理』をそのコックに教えて、このTS9を去っていったという。
 その時にコックが教えてもらったのが『お子様ランチ・セレーヌバージョン』なのだ。

 もちろん、TS9の誰もがこの名前は耳にしたことがある。だがそれは、究極の食材と究極の調理の難易度の為に、めったに…どころか、完全に幻の料理となっていたのだった。そして、それを注文できるのは特別に許可された者だけ・つまり、TS9の司令官が最高権限として許可をしない限りは絶対に食せないのだった。
 何故こんな事をするかというと…究極であるが為に、コストが馬鹿にならないほどかかるからなのだ。それは1食分でこのTS9全職員で消費される1日分の食料費と同じと言うほどのシロモノ・そんな物をおいそれと食堂のメニューに載せるわけにはゆかない。
 それ以前に、これを作れるコックは宇宙広しといえども片手で数えられるほど・しかも連合内ではここ、TS9にたった1人しかいないのだ。
 ゆえに、このメニューは貴賓客が来たときなどに特別に作られるだけの特別な物となっているのだった。
(噂では、連合の最高司令官がこの料理を食べに、お忍びでこのTS9に来るという。真偽のほどは定かではないが…)
 以上、説明終わり♪



 1分も経たない内に、ピナフォアは手に一枚の名刺サイズのカードを持って帰ってきた。どうやら自室まで戻って取ってきたらしい。
 …しかし、このラウンジからピナフォアの私室まで全力で走ったとしても数分はかかるはず。それを1分もかからずに往復するとは、流石というか何というか…
「持ってきましたぁ♪
 さぁ司令官殿! あたしにその『お子様ランチ・セレーヌバージョン』をお願いします!」
 その目は…すでに飢えた野獣のごとく司令官を見つめていた。
「わ・わかったわかった。じゃあ、注文するよ。
 あ、私だ。司令官最高権限で『お子様ランチ・セレーヌバージョン』を、ピナフォア君のために作ってやってくれ。
 うむ、そうだ………そうか、判った。そう伝えておく」
 今回は電話と同時に食堂のおばちゃんは現れなかった…
「司令官殿ぉ! お子様ランチはぁ!!!」
「ちゃんと注文したよ。ただし『究極』だから、いつものように注文してすぐに出来上がるというわけではない。それなりの手間暇がかかるものなんだ。
 心配しなくても、2時間ほどで完成すると言う話だ」
「に・2時間ですかぁ?」
「…君は手の抜いた美味しくないお子様ランチを食べたいというのかな? そうであればそう連絡するが…」
「いえ、待ちます。じっと待ちます。完成するまでここで待ちますぅ!」
「…休憩時間は過ぎている気もするが…まぁいいだろう。
 じゃあ、ついでと言っちゃあ何だが、出来上がるまでこの機械の説明をして貰えると嬉しいのだが」
「はい♪ 何でも聞いて下さい♪♪♪」
 そうして、お子様ランチが出来上がるまでの間、司令に事細かに機械の説明をするピナフォアの姿があった。それは『おまけ』として記録チップを司令に1枚渡してまでの詳細な説明会となった。

 まぁ…エサに釣られるのが悪いのかもしれないけど…そのエサがすごすぎたんでしょうねぇ。



 そして、場所は変わって司令官の専用ルーム。
「…しかし…恐ろしいしろものだなこれは…
 このTS9のありとあらゆる構造データーが納められているというのに、まだ記録チップ全体の数パーセントしか使用されていないとは…」
 そういって、ピナフォアから借りたカード型の再生装置を操作しながら、先ほど『おまけ』でもらった記録チップを見ていた。
 そのチップには、司令がピナフォアに作成を指示した『TS9の詳細なマップ』が入っていたのだが、すでに95%近く完成しているそれには、通路や通風口・ダクトの全てが網羅されているだけではなく、その強度データーから対ショック性・おまけに、動力系統や、網の目のように張り巡らされたデーターリンクケーブルの1本1本までが記載されていた
 そのうえ、どこをどのように攻撃すれば破壊できるか・どのケーブルをカットすれば指揮系統が麻痺するか・どの様にすれば最小限の行動でTS9を占拠出来るかまでが事細かに記されていた。
「すでにこれだけでも、充分にトップシークレットモノだぞ。このデーターさえあれば、下手をすれば普通のテラン人1人…いや、プレラット人1人でこのTS9を占拠・もしくは破壊できるほどだ。
 そう考えると、これだけで充分ピナフォア君におごったお子様ランチ代の元は取れるな。いや、お釣りが来るほどだ」
 ちなみに、前回中間報告としてピナフォアから渡されたデーターにはここまで詳しくは書かれていなかった。逆に言えば、ピナフォアはこれを故意に隠していたようだった。つまりは…彼女はこのTS9を乗っ取るために隠していたらしい。
「これはこれで、ある意味たなぼたな情報だったな。
 さて、となると、問題はこっちの方だな………」
 そう言って、隠していたもう1枚の記録チップを取り出す。
「これにはどんな情報が入っているか…だ。 
 同じ情報の可能性もあるが…もしそうだとしてもそれはそれで何の問題もないわけだし。とにかく見てみるか」
 そういって、記録チップを再生装置にセットする。



 最初に出てきたのは…DOLLが使用している文字だった。
 もっともこれは、すでにピナフォアの情報から連合側でも解読できるようになっていた。そこには…
れも副司令襲撃用・観察日記 PART13』と書かれていた。
「…そんなことをしようとしていたのか、ピナフォア君は…
 確かに、ベン・ブルックス前副司令の時も何度か襲撃されたと聞いているし、やりそうではあるな。
 もっとも、あのれも君の事だ。前の副司令よりもさらに手こずるのは目に見えているがな」
 流石は司令、何も見なくとも真実を言い当てていた。


 と、文字が消えて現れたのは…3Dの立体映像で映し出されたれも副司令の姿だった。しかも、今まで見ていたような静止画ではなく動画になっており、まるでその場で見ているような映像だ。多分、どこかでピナフォアが隠し撮りした映像なのだろう。
「これほどの映像をこのチップに納め・なおかつこんなコンパクトな再生装置で再生できるとは…流石にすさまじい技術だな。先程の話では、この装置でも簡単な記録程度なら可能らしいし…うーむ、個人的に欲しくなってきたな。
 私の大切な『公』達の観察日記用・鉄の記録用としては最適ではないか」
 ………そっちですか、司令の目的は………

 と、映像にめるてぃの姿が入ってくる。
『あら、めるてぃ。どうしたの?』
 流石に映像だけではなく音声も録音されていた。しかもすさまじくクリアな音で。
『あの…れも副司令………』
『なにかあったの? それともここでは言えないような話なのかしら?』
『ええっと………今日の夜、お時間はありますでしょうか』
『今日の夜ねぇ。ええ、別に何も入っていないから時間はあるわよ』
『それでしたら………今日の夜の時間を、ボクと一緒に過ごしてくれませんか!?』
「ちょっと待て。それってもしかして…」
 司令は一瞬のうちに慌てふためく。その会話はどう聞いても………
『ふふふ。またなの、めるてぃ。今月に入ってからもうこれで3度目よ』
『でも…ボクがこんな事をお願いできるのって、れも副司令しかいませんから。
 それに、れも副司令もこれが好きなんでしょう?』
『まぁね。嫌いじゃなかったらこんな事はしないわよね。しかも2人だけの秘密で…ね♪』
「待てーっ!。今月に入って3度目だとぉ!? し、しかも2人だけの秘密!!??」
 すでにそこには、いつもは沈着冷静がモットーの司令官としての姿はなかった。
『じゃあ、夜…こっそりとれも副司令のお部屋にいきますね♪』
『ええ、待ってるわよ。めるてぃ♪』
 そして、妖艶な笑みを浮かべるれも副司令と、頬を赤らめるめるてぃの姿が映し出されて…
 恥ずかしそうに顔を押さえながらめるてぃがフレームアウトする。そして、れも副司令もフレームの外へと姿を消す。
『れも副司令とめるてぃちゃんの密会!? これはすごいスクープ…じゃなかった、れも副司令の弱点がにぎれそうね。よし、今夜はれも副司令の部屋のダクトから一部始終を録画しちゃおう♪』
 ピナフォアの言葉が入って…いったんデーターの再生が止まる。
「こっ、こら。これからがいいところなのに…まさか、ここで終わりと言うことはないだろうな!」
 焦りまくる司令官。これで終わりだとすると、蛇の生殺し…もとい、司令官の目の前に『公』を置いて『絶対にさわらないで下さい』と立て札をたてるようなものだ。
「ほっ、本当にこれで終わりと言うことはないだろうな!」
 本気で焦りまくる司令。ここで終わらせて、読者のみなさんのご想像にお任せする♪ という手もなきにしもあらずだが、やはりここからがメインなので、期待を裏切らないようにしましょう。


 司令にとっては1秒が1分にも感じたような長い時が流れた。そして、きっかりと5秒後、画像が再生される。そこは…紛れもなくれも副司令の私室だった。
「よし、よくやったピナフォア君。
 ふぅ、よかった。一時はどうなる事かと思ったが…」
 もし無かったらどうなったのでしょう、司令官殿は。
「………い・いや、これはTS9の風紀を守るためであって、断じてのぞきなどではない!
 そうだ、部下に健全な生活を送ってもらうことが出来るように、規律を守るのが私の使命なのだ。確かにプライベートの空間を見ることは悪いことなのかもしれない。しかし、これは必要悪なのであって、断じて好奇心から来るモノではないのだ!」
 誰かに向かってそう自問自答をする司令。そう言いながらも、その目は映像を一瞬たりとも逃すまいと皿のようになっていた。

『ふぅ。今日も一日疲れちゃったわね。
 でも今日はこれから、めるてぃと………うふふ』
 そう言いながら、フレームの中にれも副司令が入ってくる。
 私室に帰ってきたところで、いつもかぶっている帽子を取る。むろんそこからはあの可愛らしいハム耳がぴょこんと現れる。
「やはり、れも君は帽子をかぶっていない方が可愛いと思うのだが…さすがにまだ躊躇い(ためらい)があるようだな。
 これだけはいかんともしがたいところだが、まぁそんなに早く変わることもないから、温かく見守るとするか」
 この辺りは流石に司令・部下への気遣いを忘れていない。もっとも…プライベートシーンを覗くと言う時点ですでに失格な気もするのですけどね。

 と、
『れも副司令…めるてぃです』
『あら、こんなに早く来るなんて。ちょっと待っててね、今開けるから』
 そう言ってれも副司令はリモート操作でドアを開ける。しばらくすると、フレーム内にいつもの制服ではなくパジャマを着ためるてぃが入ってきた。その姿は完全にリラックスした状態であり…何かを期待した姿だった。
『まるで私が帰ってくるのを見計らったかのように来てくれるなんて…どこかで見ていたの?』
『れも副司令はいつも時間厳守で行動していますから、見ていなくてもわかります。帰ってくる時間が変わることは、特別なことがない限り1分といえどありえませんから』
『そうね。時間通りに行動するのは、軍人としては絶対条件ですからね。でも、めるてぃもここに来る時は1分と変わらないのよね』
『それはもちろんです。だって…れも副司令と一緒に………』
 そう言うとめるてぃは、頬を赤らめなからうつむいてしまった。
『ふふふ、そんなに焦らなくても大丈夫よ。夜はまだ始まったばかりでしょう? 時間ならいくらでもあるわ。今日もゆっくりと………』
『………はい………』
 その恥ずかしがっているめるてぃの姿を見て…萌えはじめている人物が約1名…

『あの…れも副司令………じゃあ、今すぐにでも…』
 そういって、れも副司令のベッドの上にぴょんと飛び乗るめるてぃ。
『あら、まだだめよ♪ めるてぃはシャワーを浴びたみたいだけど、私はまだですからね。
 私も汗をかいちゃってるし…ソニックシャワーを浴びてさっぱりしたところで…ね♪』
『ボクは…別に気にしませんけど………れも副司令がそう言うのでしたら、待ちます』
『いい子ね。じゃあ、ちょっと待っててね』
『はい♪』
 そして、れも副司令は自室のシャワー室へと向かう。それを追うかのごとく映像も移動して…
『っとと、別にシャワーシーンを撮影しても弱点なんて見つからないし、あたしがれも副司令の裸を見ても嬉しくないし…それよりもめるてぃちゃんとれも副司令との、めくるめくシーン・もとい、弱点のシーンを撮影する方が大事よね。
 うん、めるてぃちゃんの方で待っていましょう♪』
 そうピナフォアの声が入り、映像がもとの場所へと戻る。
 それを見て…ほっとしたような・それでいてかなり残念なような複雑な心境に陥る司令だった。


 しばらくは、心ここにあらずといった感じでそわそわとしているめるてぃの姿が映し出されていた。その姿を見ながら…
「………これからがいいところだな…だが、女性同士というのもこれはこれで………」
 すでにその後の姿を想像(妄想?)している司令だった。しかもどちらも元プレラット人・これ以上に萌えるシチュエーションはないのかも知れない。
「だが…よくよく考えると、れも君もめるてぃ君も元は男性だったはずだ。と言うことは…」
 『や○い』と言う単語を思い浮かべて、一瞬引きそうになる。が、
「いやいや、すでにれも君もめるてぃ君も女性として立派に活躍している。過去は過去・現在は現在だ」
 どうやらそれで悩みは解決したらしい。

 10分ほど経っただろうか、やっとれも副司令がフレーム内に入ってきた。その姿は…
「こ…これは刺激的すぎる♪」
 お風呂上がりで、素肌にバスタオル1枚をまいただけの姿だった。細かい描写はコードに触れるために出来ないものの、その美しさは、まるで女神を想わせるような気高さをかもしだしていた。
『待たせちゃったわね、めるてぃ』
『いいえ、これからの楽しみがありますから…これくらいは平気です♪』
『強がりいっちゃって。でも、そこがあなたの可愛い所なんだけどね』
『そ・そんな…れも副司令もすごく綺麗です』
『ありがとう。お世辞でも嬉しいわ』
『お世辞じゃありません。れも副司令はボクの憧れですから』
『でも、今日は…2人だけでね♪』
『………はい♪』
 そう言うと2人は、並んでベッドに座る。そして、じっと見つめ合う…

『い・いよいよね』「い・いよいよだな」
 ピナフォアと司令の声がハモる。
『じゃあ…お待ちかねの』
『お待ちかねの………ですね』
『ええ』







 ドキドキドキ…
 ドキドキドキ…
 ドキドキドキ…
『カリカリカリ』
 ドキドキ…
『カリカリカリ』
 ドキ………
『カリカリカリ』
 ……………
『カリカリカリ』

「ええっと…このいつも聞いている様な気がする音は一体…」
『やった♪ ついに見つけたわ♪
 れも副司令とめるてぃちゃんの秘密のお食事会の現場を押さえたわ♪』
「はい?…お食事会?」

『でも…めるてぃ。いつも思うんだけど…
 まだ検疫が終了していなくて、輸入制限をかけられているヒマワリの種・しかも、仏蘭西とか言う国の最高級品を、どうやってこのTS9へ持ってきているの?』
『それはですねぇ、ある人に頼んでいるんですぅ』
『ある人?』
『はい♪ 名前は教えられませんが、その人に頼んで直接ボクの部屋に転送してもらっているんですよぉ』
『それって、正規輸入じゃないってことなの?』
『大丈夫です。転送してもらうときに品質や異物のチェックをしていますから。ちゃんとそれに見合うお金も送ってますし。
 それに…れも副司令も心待ちにしているんですよね。ボクが持ってきているヒマワリの種を♪』
『………否定できないところがつらいわね。でも、ほんとうに美味しい♪』


「………なんで、ヒマワリの種を食べる前にシャワーを浴びてさっぱりする必要があるんだ?」
 確かに、司令官の発言もごもっとも。なんだったられも副司令に直接聞いてみるとか?
「いや、直接聞いたら私がこのシーンを見たことがばれてしまう…って、どこに向かって話しているんだ、私は!?」
 ご説明ありがとうございます♪


『よし、これでれも副司令の弱点を見つけたわ♪ 密輸品を食べている事をネタに脅せば、例え副司令であってもあたしに屈するしかないのよ♪』
『誰!? そこにいるのは!!??』
 鋭い声に、一瞬自分の事を言われたかと思う司令。だがもちろん、ここで見つかったのはピナフォアの方。
『ぎくっ…ここまで気配を隠しているのに気づかれたの?』
 動揺がハッキリと判るほどに、映し出されている映像がぶれ始める。
 …どうやら、彼女は前にも見つかってひどい目に遭わされたらしい・その時、どのような目にあったのかは知らないが、どうやらすでにトラウマになっているようだ。
『通気口から気配が…ふ〜ん、そこにいるのはピナフォアちゃんね。あきらめておとなしく出ていらっしゃい♪』
『うぅ〜…出ていったらひどい目に遭わされるのは目に見えてるよぉ。でも出ていかないと今度あったときにさらに恐ろしい目に………』
 やっぱり遭ってたのね。しかし、DOLLをこれほどまでに恐れさせるような事とは一体?

『出てこないの? だったら明日の朝、会ったときに…ゆっくりと・ね♪』
『出ます・出ます、すぐに出ますぅ』
 そう言って通風口から出てゆくピナフォア。映像もそれに連れて部屋の中へと移動してゆく。
 そして…れも副司令の正面にくる。つまり映像は、れも副司令の顔を映しだしている。その顔は…いつもの仕事中のまじめな顔とは違い微笑んでいるようにも見えるが、その目は全く笑っていない。その目を見た瞬間、司令も全身に冷水を浴びせられたような恐怖を感じた。
『やっぱりピナフォアちゃんだったのね。
 さて、のぞきなんてしていた理由を説明してもらいましょうか?』
「いや…私な別にのぞきなどはしていないぞ………って、何で私が釈明をしなければならないのだ?」
 それほどまでに高性能な映像だったらしい。
『ええっと…ですねぇ………
 そ、そうだ。あたしはハッキリとこの目で見ましたよ。れも副司令が密輸したヒマワリの種を食べているところを。
 もしこのことが司令の耳に入ったら、一体どうなるんでしょうねぇ♪』
「いや…すでにしっかりと入っているんだが…」
『それで?』
『それで…って…
 密輸は犯罪ですよぉ! 副司令官ともあろう人物が、密輸したモノをこっそりと食べるなんて事をやっていいんですか?』
『別に、密輸なんてしてないわよ』
『へ?』
『TS9は、あくまで前線基地ですからね。別にこの基地内であれば、近隣の星の食料などを持ち込む事に関しては、危険がない限りは基本的に禁止されいませんから。
 もちろん、この基地から他の星や別の基地に持ち出すことは、あなたの言うとおり密輸になりますけどね。
 ということで私達が食べているのは、あくまで『並行輸入品』なのよ』
『それって反則ぅ〜!!!』
 確かに、反則すれすれであることは否めない。だが、れも副司令の言うように近隣の星からの食料の持ち込みは、基地内に限ってのみ基本的にテラン人・プレラット人及びキャロラット人に実害がないと認められているモノであれば可能となっている。
 もちろん、本来ならば安全基準と照らし合わせて、詳細な品質チェックを行わなければいけないのも事実なのだが、そのようにしようとするとTS9で消費される食料を全て他の基地・もしくはそれぞれの種族の母星から運ばなくてはならなくなってしまう。となると、基地の維持費のかなりの量を占める食費が馬鹿にならない値段に跳ね上がってしまう。
 そのため、例外的にではあるが前線基地内で消費される分に関しては、上記のように害がないと認められれば持ち込みが可能なのだった。
 ちなみに『またたび』は、キャロラット人にとって麻薬のような副作用がある品物と規定されていて、例えTS9でも持ち込みは禁止とされているらしい。

『ということで、私たちには何の問題もないと言うことですね。
 ですが、あなたは他人の私室をのぞき見るという規則違反をしました』
『あうあうぅ』
『でも、不振に思われるようなそぶりを私がみせてしまったのも事実といえば事実ですね』
『じゃあじゃあ、許してくれるんですかぁ?』
 そのピナフォアの言葉に、にこっと微笑んだれも副司令。そして、どこからともなくオーラハリセン『改』を取り出す。

『嫌な予感が………』
「するなぁ」

『Attention! Turn right !!』
『Yes sure!』
 気合いの入ったれも副司令の言葉に、素直に従い回れ右をするピナフォア。
『めるてぃ、入り口のドアを開けて』
『はい』
 そして、ピナフォアの目の前にあった私室の入り口のドアが開く。その先には…TS9内で一番長い直線の通路があった。
『なんとな〜く、これかられも副司令のやることが判ったような気がするんですが…』
「私も判ったような気がする」
『多分、今ひらめいたことに間違いないと思うわよ』
『あうぅぅぅ』
 情けない声を出すピナフォア。どうやら自分のこの後に起こる事象に恐怖を感じているらしい。

 そして、
『逝ってらっしゃ〜い♪』
『逝ってきま〜す♪』

 その直後、スパーンという心地よい(?)音と共に、映し出されている背景がまるでジェットコースターのようなスピードで流れていったのだった。
 

 そして………一直線で飛んでいったピナフォアの目線の映像が、冒頭で司令官が記録チップを拾った当たりの背景を映し出した瞬間終了したのだった。
「なるほど。ピナフォア君はここでチップを落としたのか。
 確かこの通路の先には、緊急脱出用のエア・ロックがあったと思うのだが…まさか、それを突き破って外に出たわけではないだろうな」
 ええっと…実はその通りだったりする。

 もっとも、突き破ったわけではない。エアロックに取り付けられたセンサーは、高速で近づいて来る物体(ピナフォアの事ね)に対して『このままの速度でぶつかるとエア・ロックを破壊する危険有り』と判断して、外部放出することを決定・ぶつかる直前に緊急開放、そして物体が外部に放出されたことを確認後直ちに遮蔽したのだった。
 その後のピナフォアは………まぁ、何とかTS9へ戻ってこれたらしい。もしDOLLじゃなかったらどうなっていたのでしょう。






 そして、次の日。
「司令、本日の報告書を持って参りました」
「あ、ああ、れも君か」
「どうかしたのですか? 何かお顔が青ざめているような気がするのですが、お体の調子が悪いとか?」
「い・いや、いたって健康だよ。ちょっと…な」
 そういって、れも副司令の姿を見て、昨日見た内容を思い出して…気まずい空気になってしまう司令官室だった。
 そんな空気を不思議に思ったらしいれも副司令は………ふと、司令官の机の上に乗っている1枚のカードに目を留める。


 そして…
「あ、そうですわ。調子が悪いときは、美味しい食べ物を食べて気分を明るくするのが一番です。
 1週間ほど前にめるてぃから、輸入品のヒマワリの種を頂いたのですが、司令もご一緒に食べませんか?」
「いや…私はヒマワリの種はちょっと…」
「そうですか? いつものと違って最高級品ですのに」
「確かにフランス産ならば地球でも最高級だが、テラン人は基本的にヒマワリの種は食べないからなぁ」
「………………」
「………どうかしたんだい、れも君」
 しばしの沈黙が続く。司令は何かれも副司令の気分を害することでも言ったのかと思い、彼女の顔を見る。そこには…


 昨日、映像で見たれも副司令の顔があった。微笑んだような顔・しかし決して笑ってはいない冷ややかな瞳が司令官を見ていた。
「司令? 何故このヒマワリの種が『仏蘭西産』だという事を知っているのですか?」
「え、だって、さっき最高級品って………しまっ!」
「確かに、最高級品だとは言いました。ですが、産地を言った覚えはありませんわよ。
 このカードはピナフォアちゃんの私物として一度見たことがありますわ。まさかとは思いますが、1週間前のピナフォアちゃんの襲撃事件の一部始終をご存じと言うわけは…ありませんよね? 司令?」
「そ・それは………」
「司令!?」
「あ、すまない、れも君。またこれから基地を離れなければいけなくなってしまったようだ。
 後のことはよろしく頼む!」
 そういうと、司令は素早くカード型の再生装置を懐にしまうと、巧みなフットワークでれも副司令の横をすり抜けて司令官室から脱出してしまった。
「司令!、逃がしませんよ!」
 そして後を追うように、れも副司令も司令官室から飛び出していた。その手にはどこからともなく取り出したオーラハリセンが握られていた………






 それから約1ヶ月の間、司令官の姿を見たTS9職員はいなかったという。
 うまく逃げおおせたのか・それとも「‥‥……━★」になったかは、れも副司令と司令官の当事者2人しか知らない。




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